空色エクスプレス

@YamiYami24

第1話 推し

君たちに推しはいるのだろうか?

 俺の名前は五十嵐裕介いがらし ゆうすけだ。俺は一人暮らしをしている高校生だ。

 恋愛感情?そんなのなんて分からなかった。

 俺の好きなアニメは神のエクルシア。まあ世間には、あまり知られてない現代ファンタジーのマイナーアニメだ。その中でもよぞらを推している。

 俺がよぞらを推し始めたのは、第一話からだった。ちなみに今だと俺はよぞらと同い年だ。


「大丈夫ですか?ケガない?」


 よぞらの笑顔はとても可愛くて、優しさがあって品がある。長い黒い髪が風になびく。よぞらは生きがいで失礼ながら死んだ親よりも大事な存在だ。


 第一クール最終回 アニメ 神のエクルシア。

ここは、概念から神が生まれる世界。神ならざぬ物は弱き世界。


ザシュ! 


どこかのビルの路地裏で……


誰かの血が広がってく……


テレビの画面には血を流した俺の推しである夜空が映っている。身体に剣がささって倒れている……しかも心臓の位置に……

 特徴的であるきれいな瞳から、生気が失いかけていることが分かる。俺は何が起こっているか一瞬分からなかった。


「なんで、裏切った……んですか……」

よぞらの瞳は光を失った……

「お前じゃ分からないことだ!」

よぞらの敵である男キャラはよぞらの死体をメッタ刺しにし始めた……


──は?


 俺だけじゃなく、よぞら推しにとっては耐えられないシーン。

まず普通の人間ならば耐えられないシーン。

じゃなければおかしい……


──なぜ……


失礼なのは分かっているが、俺はこんなシーンを考える作者の人間性を疑ってしまった。


──なぜ


   ──人はこういうシーンを考える──


     こ ん な 仕 打 ち を 


 俺は一人雨の中、深夜のアパートの屋上に一目散に走った。

そして屋上についた俺は柵にもたれかかった。


 ──俺はこれから何を生きがいにしようか──


「はは な に も な い や……」


 その柵はとても脆かった。思ったよりも脆かった。

路地裏のコンクリの地面が近づいてくる。

いや俺が落下している。地面に真っ逆さまと。


──死にたくない


 不思議なことに風景がスローモーションに視えた。信じてなかったが本当のことだった。


──死にたくない……


ドシャッ!


俺は頭を地面に強くうち息を引き取った。

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