元凶だ!元凶だろう?なあ元凶だろうお前首置いてけ!!

第24話 ケツ意…じゃなかった、決意を新たに

 シリル砦に着いた俺達を出迎えてくれたのは、金髪を肩口で切りそろえた人より耳の長い長身の青年だった。顔立ちは整っており、年のころは20代半ばといったところ、騎士らしい鎧姿だが鎧の隙間からのぞく身体にはしっかりとした筋肉がついているのがわかる。


「道中大変だったなケルツ。伝書鳥から報を聞いたときは驚いたが、皆無事でよかった」


 青年はケルツや兵士達を労い、キールを医務室に運んで休ませるように指示をしてから穏やかな笑みとともに話しかけてきた。


「シリル砦へようこそ。私はこの砦の司令アルナルフォン、君たちが私の部下を助けてくれた事や都市を護る為に魔獣に堕ちた者の討伐に奮戦した事は伝書鳥から聞いているぞ」


(アルナルフォン様っ……!!)


 俺の隣でツバキがブワッと泣き出しそうになっていたので横腹を小突いて阻止する。堪えろバキィッ!俺だって泣きそうだけど堪えてるんだよ。いやぁ兜被っていてよかった、表情が解んないから助かる。けど、NTRシリーズのプレイヤーなら生アルナルフォンみたら泣いちゃうよ、仕方ないね。


「いえ、こうしてあの街から逃がしていただいたことにお礼を申し上げます」


「そう硬くならなくて良いさ。君たちがいなければ私は友と大切な部下達を失っていたかもしれないのだ、これぐらいはさせてくれ」


 そう言って笑みと共に力強く頷くアルナルフォンだが、一応伝書鳥から聞いているとは思うけれど簡単に事情を説明しておかなければとそれぞれの自己紹介をしてから事情を説明するが、それを聞いたアルナルフォンにはハッハッハ、と笑い飛ばされた。


「そんな事か!

 勿論、君たちが追われている事情はすでに聴いているとも。だがこうして君たちを見て、そして今の話を聞いて私は確信したよ、君たちは冤罪だとね。

 包み隠さず正直に事情を話せるのは君たちが無実だからだろう?

 そして……ラック、君のその鍛え抜かれた身体は、実に良い!長く旅をし強敵と闘い続けた歴戦の戦士ともいうべきその鍛え方、その身のこなし……とても美しい!まるで人の成長上限にまで達したのかと感じさせるそんな素晴らしい身体を持つ者が嘘などつくはずがあるまい、私はこれでも人と身体を見る目には自信があるんだ」


「アッ、ハイ」


 そんなアルナルフォンの言葉は器の大きさを感じさせ、その瞳からは俺達に対する確かな信頼を感じた。ケルツの飛ばした伝書鳥から何故俺達が追われているかの理由を知っていて、それが嵌められた冤罪だと理解してくれているのだ。

 ……そんでもって鍛えられた身体をこよなく愛するちょっと残念な変態紳士という一面もゲームそのままかぁ。でもそこも含めてアルナルフォンだもんね、わかるよー。

そして隣ではこらえきれなくなったツバキがついにめそめそと泣き出した。お前精神状態おかしいよ……あぁ落ちたねぇ、落ちましたね……。


(マ゜ッ!アルナルフォン様が生きてる……ゲームと変わらぬおしゅがたで笑ってりゅ……鍛えられた身体フェチなのもそのまま……ふぇぇっ)


「むっ、そちらの彼女は怪我でもしていたのか?これは失礼した、彼女も医務室へ―――」


 ツバキが泣きはじめた事を負傷かなにかと思い慌てて部下に指示を飛ばすアルナルフォンだが、それを泣きながら制止するツバキ。


「違うんでしゅうう、大丈夫でしゅぅぅぅぅっ」


「そ、そうか。何かあれば遠慮なく言ってくれ」


 ツバキの様子に困惑しつつもその意思と言葉を尊重する紳士っぷり、人間の鑑。


「……ともかく、此処にいる限り私があの街の領主やその手の者には手出しはさせない。ここでこれからの身の振り方を考えると良いだろう。何か困った事や、私に力になれることがあれば遠慮なく頼ってくれ。魔物との最前線ゆえ不便をかけることもあるだろうが、ゆっくりしていってくれ」


「ありがとうございます、アルナルフォン司令」


「アルナルフォンで良い。それでは私は医務室に顔を出してくるとしよう。君たちの部屋はそれぞれに用意させてあるから、足りないものがあれば言ってくれ。それでは」


 そう言って手を挙げてから去っていくその背を見送りながら、いやぁマジでゲームそのままだなぁと感銘に震えていた。


 ―――シリル要塞司令アルナルフォン。


 成り行きでキール一行と関わった後、ディカマランの地をめぐる数多の陰謀の中で翻弄され様々に立場や敵味方が変わるキール達に対して常に友として協力し、後方から様々な援助をしてくれるだけでなく時には共に轡を並べて戦ってくれるNPC。打算や様々な人間の欲望や思惑の渦巻くストーリーの中で騎士として、盟友として友情のためだけにキール一行を支えてくれる好漢であり……それ故にこの人は命を落とす事になる。

 ディカマラン王都を強襲する決戦に兵を率いる指揮官としてアルナルフォンは同行し、一緒に闘うが、皇帝との決戦を制し疲弊した瞬間を狙って襲い掛かってきた黒幕の一撃からキール一行を庇い……その身を盾にして奇襲を阻止するも自身は致命傷を受け、パーティ一向に看取られながら命を落とすことになる。

 しかもその一連の展開は戦闘ではなくイベント扱いで、しかもストーリー展開をどう進めていても必ず発生する強制イベント。


―――――この人はどうやっても逃れられない死の運命を背負わされているのだ。


 ストーリー中の活躍とそのキャラクター性でプレイヤーの心を鷲掴みにしておいてからの無慈悲な展開に、初回プレイでは俺はコントローラを握ったまましばらく動けないでいた。シナリオの容赦なさに、『人の心とかないんか』と震える声を絞り出すまでに1時間ぐらい放心していたんじゃないかな。

 NTRⅡの中での活躍から、1作品だけの活躍ながらキャラクター人気投票では常に上位に位置し、幼少時のアルナルフォンを主人公にしたスピンオフ「アルナルフォンのモンスターランド」といった携帯機用のゲームが発売される程に人気がある。勿論俺もアルナルフォンが好きだよ。

 多分シリーズを通してその死を悼まれて長期シリーズになっても語り草のように語られるキャラはアルナルフォンぐらいだろう。


 だけど今此処にアルナルフォンはまだ生きている。今の俺なら、いや俺達なら、彼の死の運命を変えれるかもしれない……!!

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