【カクヨム10短編参加作品】東狐司(とうこつかさ)の不思議事件簿

石のやっさん

第1話 東狐司(とうこつかさ)

僕事、東狐司は文京区本郷で生活をしている。


この場所は、色々と面白い街で、不思議な事が良く起こる。


鐙坂という坂があるのだが、此処は昔、戦に行く武将が鐙を嵌めて戦いに行く事から着いた名前だが、良く人魂が飛ぶ事で有名だ。

実際に沢山の人が人魂を見たという事が噂になり、東都大学の教授が調べに来た事がある。 実際に調査した教授も人魂を目撃、調査の結果メタンガスに引火して空中を火の玉が飛ぶような現象が起きた。そう結論づけたのだが……地元に住んでいる人間は納得いかなかった。 メタンガスが発生するような池も沼もこの辺りには無い。


どう考えても可笑しな話だった。


池や沼は無いが、鐙坂を上った先には小さな路地があり、幽霊が出る事で有名だから幽霊横丁と呼ばれていた。


だから、心霊的な話の方が余程辻褄はあっていて、幽霊横丁の幽霊の人魂が飛んでいるんだ。


そう考える人が多い。


少なくとも近所の町内会の人間はそう思っている。


この鐙坂から、歩いて5分の場所にある昔からある長屋。


そこが住処兼僕の仕事場だ。


築年数は……古すぎて解らない。


関東大震災の前から建っている事だけは解っている。


風呂無しのボロボロの木造建築。


家賃が安いのだけが取り柄だ。


目の力の事で両親に気持ち悪がられ、親に家を追い出された僕が住むのに選んだのがこの場所だ。


選んだ理由は……家賃が月に1万円と安い事。


そして、友人に騙されたからだ。


『鐙坂にはあの有名な探偵、金田一耕助が住んでいたんだぜ』


そう言うから、推理小説好きの僕は此処に住んだのに、なんてことは無い。


『辞書で有名な金田一京介さんが昔住んでいただけだった』


尤も、その陰で家賃が物凄く安い長屋を借りられたのだから、結果的には良かったのかも知れない。


この場所で僕は探偵事務所を開いている。


僕が探偵事務所を開いている原因。


それは稲荷様から授かった特殊能力『こっくり』によるものだ。


文京区の小石川には有名な稲荷神社がある。


そこに神社を崇拝していたのが僕のお婆ちゃんだった。


毎日、油揚げを上げてお参りしていた。


僕もお婆ちゃんと一緒に良くお参りしていた。


そんなある日、僕は事故に遭い、視力を失った。


その時に、目をくれたのが小石川の神社に祀られていたお狐様だった。


目が見えるようになった僕やお婆ちゃんは喜んだが......両親は金色に見える目を嫌っていた。


その結果、お婆ちゃんが亡くなると、僕は家から追い出される羽目になった。


貰った目には不思議な力が宿っていた。


その能力が、一瞬で答えが解かると言う物。


凄く便利である反面、過程が解らず『答え』のみしか解らない。


この能力のおかげなのか、この場所のせいか……うちに依頼をしてくるお客は、まぁ訳ありばかりだな。



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