空も見えない僕たちは
極彩色
間違えた選択肢
小学生の頃、僕のクラスにはいじめがあった
いじめられていたクラスメイトの名は
彼女のいじめが始まったのは突然だった
いつも教室の端で本を読んでいた彼女に対して本を奪ったり変なあだ名をつけたり
そんな生徒たちに担任は気が弱く注意できずにいた、
そのせいでどんどんいじめはエスカレートしていき、ついには暴力を振るわれ、身の回りのものも壊されるようになっていた
そんないじめを僕は見て見ぬふりをしていた
僕は助ける勇気も正義感もなかったが一応真面目な人間を目指していたから、いじめをする奴らとは関わらず、いじめられている彼女にも関わることは無かった
しかしある日
「
体育の授業中、ペアを作っていた僕に対し、担任はそう言ってきた
断ろうかとも思ったが担任からの評価が欲しかったので僕はペアを組んだ
「ご、ごめんね?ペア組ませちゃって....」
下を俯きながら、少し茶色が入った前髪でおでこを抑えながら彼女は申し訳なさそうにそう言った
それに対し僕は別に良いよ、誰でも構わないからと言って僕は彼女と授業を受ける
彼女は体操服も着られなくされたのか汚れた制服のまま授業を受けていた
そのせいで準備運動の時すこし彼女に触れるのが嫌だったが僕は
我慢した
いじめているグループに何か言われないかは心配だったが体育の授業が楽しいのか彼女にかまわず遊んでいた
そして、何事もなく授業が終わった
それが、始まりだった
僕はことあるごとに彼女とペアを組まされることになっていた
席替えをしても彼女は壁際の一番後ろでで僕はその隣
そして担任が周りの教師にも根回ししたのか進級しても同じクラス
果てには男女別の修学旅行ですら僕たちは二人きりの部屋だった
そのせいか彼女は僕にどんどんと距離を詰めてきた
彼女はシングルファザーだとかお父さんはいつも出張で家にいないとか黄色が好きでおでんの練り物が好きだとか将来はお菓子屋さんになりたいとか、小説が好きだとか、線香の匂いが好きだとか
笑顔で話す彼女に対し僕は軽く相槌をつくだけだった
そしてやがて彼女に対するいじめも落ち着き、僕たちの卒業が近づいていたある日の放課後
事件は起きた
トイレに行って帰ってくると教室に彼女はいなかった
彼女と一緒に帰るのがすっかり日常になっていた僕は彼女を探した
隣の教室、保健室、図書室.....
色々な場所を回ったが彼女はいなかった
先に帰ったのだろうと思い僕は帰ろうと校庭に出ると何か声が聞こえてきた
それは誰かの大声だった
僕はすぐにその声の下へと向かうとそこは体育館だった
今の時間帯は締まっているはずなのになぜか少し空いていた
僕はその隙間から中をのぞくと目に映ったのは
彼女に対する暴行だった
男子生徒数人が床にうずくまっている彼女に対して大声で罵倒しながら蹴っていた
助けよう、そう思い彼女の下へ向かおうとした
はずだった。
僕の足は一歩たりとも前へ進まなかった
そうしている間に彼女は今でも蹴られ続けている
動け。動け。
何度も、何度も心の中でそう言って足を動かそうとするが動かない
そして.......
ふと、彼女と目があった
彼女は僕を見つけると僕の方に手を伸ばす
その伸ばした手は踏まれ、彼女は僕に向けて口を開いた
「たすけて」
「ッ!!!!!!!」
僕には、勇気がなかった
目の前の彼女に向かわずに職員室に向かった
そして、先生が着いた頃には
彼女の意識は無かった
そのあとのことはよく覚えていない
彼女はそのあと目覚めることなく気づくと卒業式の日で、いじめていた奴らは全員見当たらず、その日も終わった
そして、家に帰ってようやく実感がわいた
僕は、選択肢を間違えたのだと
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