第5話 会社と組
◇難航◇
俺が警察署に連れてこられて、1週間が経過した。
あの事情聴取を1週間も粘っているのだから、そろそろ進展が見えてほしいものだ。
そう思いながら牢に戻ると、警官から
『面会だ、ついて来い』
と引き締まった口調で言われた。
遂に新しい情報が入ったのかと思い、高ぶる感情を抑えながら、俺は面会室に入った。
だが、面会室にいた人間は"土田"ではなかった。
ラフな格好で、胸元には入れ墨が見える。
Theヤクザみたいな人間がそこにはいた。
俺は男と対面する椅子に座り、男の方に顔を向けた。
すると男が、低い口調で話しかけてきた。
「俺は海城組(かいじょうぐみ)の田嶋魁哉(たじまかいや)ってモンだ。単刀直入に言う。お前には来田の罪を被ってもらいたい」
やっぱりか。
意地でも俺を有罪にしたいのだろう。
だが、ただの会社の社長がヤクザをここまで動かせるもんか?そこが引っかかるな。
少し怖いけど、カマをかけてみるか。
「田嶋さん、あなたはどうして、来田正成を擁護しようとするんですか?」
すると、男は『チッ』と舌打ちをした後、俺の問いに答えてくれた。
「俺たち極道はなあ、周りの連中に舐められねえようにするためにかなり必死なんだよ。それは時に、テメエのプライド捨ててまでだ。だから俺たちは、ここら一帯の地域で頭角を現すために、行動を起こすために、来田の野郎に資金を借りたんだ。その見返りに俺たちは、アイツの望むことをなんでもやった。ライバル企業に乗り込まされたり、暴力団を仲間に引き込んだり、嫌な顔せず何でもやってきた。今回もそれと同じ、来田が助けてほしいと望んだから助ける、それだけだ」
俺の会社の社長は、そこまでクズだったのか。
だが、そんな奴の好きにさせるわけにはいかない。
こっちも妻の無念を晴らさないとなんでな。
「俺は自白したりリませんよ。こっちも背負うもん背負ってるんでね」
「…そうかよ。だが俺たちは来田が諦めるまでは引き下がるわけにはいかねえ。俺たちは来田が望めば何だってするということを忘れるなよ」
そう言いい田嶋は立ち上がり、荒々しく扉を開けて、帰って行った。
俺も立ち上がり、警官と共に牢へと帰った
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます