シャドウ+ワールド! -What a beautiful COLOR World!-

‪†‬らみえる‪†‬

Que.Prologue?

??→ ??_step!_FIRST_DEATH∞「BAD_END.01_希望への道、セイバーロード!」

 少年の存在は、研究所ラボで愛されて生き延びた、幸せなモルモットと同等の存在だった。


「嘘、でしょ?……僕が、████……? 本当に、ベルが……? どうして……!? 嫌だ、そんな訳……──ッ、ッアアアアアッ!!!!ルシファ────」




 転移。




 ──の、そして少年は、三度目の『絶望』を叫んだ。そして同時に現世セカイを恨み、一度だけ感じた事のある感情が、一瞬。心を蝕み尽くした。


 だが、願い届かず、『叫び』は途切れる。

 少年を闇へと突き落とした『ルシファー』と名乗る男から告げられた真実モノは、少年の心を、無慈悲に折った。


 そして少年の脳内には『混沌カオス』が支配し、何が起こっているのか全く分からないまま、少年の心に追い討ちをかける様に転移スポーンしたのだ。


 視界は『現世ひかり』から『幽世やみ』へ──そしてまた『現世ひかり』へ。



「──あっ、は?……ぁぁ……あっ、?」



 。二つのセカイを経由して転移スポーンした先は灼熱。

 見渡す限り燃え盛る、どこか見覚えのある密室の木造小屋ログハウスの中。少年は炎に囲まれてただ呆然と立ち尽くすのみ。


 静謐せいひつ。あたかもそれが『日常ノ平和セカイ』であるかの様に、偽る『異常』。



「ぁ………………は。ぁ、?」



 ──熱い。身体に熱風と燃え盛る炎が、少年を嘲笑うかの様に気まぐれに触れ、そしてついに燃え移る。

 それは少しずつ、足元から少年の身を焼き焦がして行くが、少年は既に思考が停止していた。今起きている状況を脳が『危険』と判断する事を拒む。



「ぁ?」



 少し後退りして。少年は、ようやく気付いた。


 何故か動く度にぴちゃっ、と音がする。

 足に染み込む、赤い。ナニカ。不思議に思った末に何とか認識出来た脳が、不安感を抹消すべく『安心感』を得たいが為に、勝手に目が逸れる。


 それは生温かった。の正体。


「……………………………………………………ち?」


 そう。それは木造小屋ログハウスの床一面に広がる赤い『血』だった。そしてその血が流れ出る源泉────は。


 少年は足元の血の川を、ようやくあった焦点で、目で辿たどる。



「ァ、ガ」



 源泉は、メイド服を着た少女だった。

 その少女の『手の甲』がほんの一瞬、黄金に発光した。



 そのメイドは────ボロボロで本来、白黒モノクロだったであろう、一部赤く染まった『メイド服』を着て、少年の正面に倒れていた。

 何故かは分からないが、その少女を正体不明の神なにかが守護しているが如く、炎は少女に触れる寸前で奇跡的に消える。


 その光景は、何とも形容し難い禍々しさと神秘さを放っていた。



「ま、すたあ、にげて……!」



 喉が焼き焦がれて掠れた弱々しい声に、ここでようやく少年の思考が追いつき、振り向こうとする──、



「──ほーら! はいグサッとー!」



 振り向く直前、筋肉が硬直した。そして狂気に満ちた愉快そうな声と共に、何者かに背中からぐしゃっと、心臓を貫かれる。



「ぁぁあ、熱っ!……は、え? 痛い、」



 少年は自身を貫いた銀色の凶器レイピアの様なモノが胸辺りから突き出ているのを視認──そして理解。

 理解した瞬間、身体を焼く炎の熱さが、胸の痛みが本格的に少年を襲った。



「ぁあ、ぁ!──あああ熱ッ!?……ッぁ、い、痛い……!! ッいだい……!!!!  痛い痛い痛い痛い痛い……!!!!」


 理解したのに理解がまるで出来ない。

 けれど痛みは加速し、耐えられず倒れ、少年は地面に顔面を強打する。

 それは平和ボケした都会暮らしだった中学生にはとても耐え難く、想像を絶する痛み。


 口からは見たことも無い量の鮮血が、水風船が割れたかの如く吹き出し、その鮮血に焔光えんこうが反射して、より鮮やかに少年の死に際を彩っていた。



「──お、いーねいーねェ!その調子ィ! ほらそら次!次ィ!どー鳴いてくれンだよォ!?」



 身体を渡り、バチバチという頭に燃え移った音は、愉快すぎてコメディの様。しかしそれは炎が少年を笑う音。

 その音と共に、背後から微かに聞こえる狂人の歓声。狂人は倒れた少年の背中を何度もリズムカルに突き刺して少年の悶絶を楽しんでいた。


 ────抵抗は出来なかった。いや、出来るはずが無い。





 何故なら、少年は『最弱』だから。




 PSYのうりょくは有る──が、打開策、無し。少年にはのである。


 ──そんな『最弱』の少年の身体に力はもちろん、感覚すら入らず、から熱さと痛みに悶え苦しみただ発狂するだけのに成り下がる。



「…………あっが、熱っ、あっ、ああっ!!いだい!!あづい、あづい!!いだいっ いだいっ いだいっ いだいっ いだいっ いだいっ!!!! 誰かぁっ!!助け──ゴホッゴホッ、──ぁ?……!!」



 瞼が焼け、眼球が焼け、蒸発する。発狂しようとして咳をする度に、炎と煮沸された血が喉を焼き、何度も何度も大量に吐き出てくる。

 いとも容易く、それが当たり前であるかのようにの少年は現在進行形で処刑されている。


 ──何故?


 ──どうして僕が?


 その理不尽にも程がある異様な光景、肉が焼ける熱さ、明るすぎる視界、出血多量の寒さ、眠気、段々と弱くなる痛み、狂人の快楽に狂う笑い声、その全てが少年の恐怖心を煽る。



「あづいっ……あがっ……」



 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ……!!



「……あ」



 今、視界が焼け切れた──だが、それでも記憶はまだ、ある。存在している。

 今にも脳髄液で茹で上がりそうな脳は、『絶望と憎悪』という強大な『負の感情エネルギー』を糧にして、少年かれを生き永らえさせた。


 そして、暗黒の視界の中で血と泥きぼうを握りしめる。


 失明する前の唯一の記憶を頼りに、少年は全て焼け死んだと思っていた筋肉で、目の前に居る少女に向かって死にきれなかった芋虫の様に、僅かずつ這い出す。



「ケヒッ!いーねェ!……おォい!『ゆーしゃ勇者』様ァ!?早くたァーてェーよォ!!『たすける』それが使命なんだろォ!?なァ!?」

「ま、すたぁ……! つぎは、かならず、しあわ──」


 刹那──鳴り響く銃声。共に少女のライフラインが途切れた。それを聴いた少年はパニックを発作する。


「チッ、もォ終わりかよ、『ヒーロー』らしく立ち上がって哀れな子羊コイツ救う展開ハッピーエンドは、もーねーのかよ……」


 常軌を逸した倫理観。

 狂人ならば、当然であるが。


「……んか妙にあっけねーな、『ゆーしゃ勇者』っつー割にはよォ……あーつまんね。──んじゃ、バットエンドの時間だぜェ!!?」



 その狂人の声は、視界が無くても明らかにこちらに向けていた。これから起こる末路バッドエンドはもう目に見えていて最悪だ。



(はぁッ、はぁッ……!!  女の子が……死んだ……?! 僕も……?!いつ、死ぬ!?……いやだ、怖い……! でもなんで僕が……?なんで僕だけ……? 助けて……!!)



 意味不明に襲ってきた理不尽と恐怖に苦悶する少年に、安息を与える暇も無く──第二フェーズ。熱さや痛みは去り、今度は本格的な寒気と眠気が襲ってくる。


 つまり身体中の神経が焼け死に、調理されたというワケだ。寒気は天から下りる天使を呼び覚まし、眠気はラストオーダーだ。



「なーガキ……遠くに見え…か!?天…が!苦……か?辛いか?楽にな…たい…?」



 快楽。



 意識が段々と遠のいてくる。その感覚は少年を天国に誘うかの様に心地よかった。


 しかし同時に少年は、それとは全く逆の、様な不快な感覚も存在していた。



「気持ちい…い…ろ?大丈夫。ほら…国ま…後…う少し!頑…れ頑張…!グサッ!グサ…!ケヒヒッ、ヒャハハハハハハ!!!!」

「さむい、っ……いや、だ……しにたく、ない、っ……あがっ……こわい……たすっ、けて……あがっ……らとねぇ、っ……べる、っ……」



 ──死にたい。だが本能から放たれた言葉は、穴だらけの身体は、嘘を付く。


 今もなお、背中を刺され続けるこの地獄から、いち早く抜け出したいと思っているのに、身体は生存本能剥き出しで生きようとする。


 笑えてくる。この期に及んで、まだ、生きようとしているのだから。



「ヒヒっ──ぁ、ぁぁっ!……ころ、す」



 ──殺意と記憶。

 少年の思考セカイが巡り、フラシュバック。



「ケヒッ!あー!いーィジャン!!いーィジャン!!って……は?殺す?何言ってんだテメェ?」



 そうだ──思い出した。



 途切れ途切れになっている意識が覚醒する度に少年の中で溢れ出る、怒りを超えた虚無ヴォイド。そして『殺意』。


 巡り滾る『虚影ヴォイド』。その時、少年に『』は囁いた。



『ケケッ……叫べ、殺せ。シャルドオレとテメーの内なる虚影ぜつぼうは、シャルドオレとテメーの『剣』となって『最強』……さあ!!蹂躙しろ!!魔王様マスター!!』

「……ッッ、!!!!」



 ──その瞬間、少年の理性は弾けた。



「全部……全部ッ、殺してやるッ!!僕を造ったヤツも!!僕をバカにしてきたヤツもッ!!全員ッ、この手でッ!!……ッ、虚影操作シャドウエディタァァァァッッ!!!!──……アガ……ッ────」



 その『殺意』は自身への度重なる理不尽によるものなのか?不幸?不運?不遇?燃えながら少年は自身の力不足を強く恨んだ。



 そして自分自身はを──



「ぁ、あ。しゃるど──」

「ッ!?コイツッ!?──」



 先に死んだ少女の名前も思い出し、口にする。

 そして虚無の炎影ほかげを燃やしながら少年は────、





「……せいばーろーどセーブ&ロード



 死んだ。



 ---


 〖‪新規セーブデータ作成中…‪〗


 Now Loading…‪ ‪


 Now Loading……


 〖セーブデータ作成完了。〗


 ---



 微かに。──『運命の少女』の声がした。


 自分から託された『意志』を握りしめ、、この無限かつ有限の世界ループで初めて死亡した『運命の少女』。


彼女は『勇者』。


 そんな彼女は──転移し、あまりにも簡単に、呆気なく、かつ絶望的に死亡した『偽りの少年』を優しく歓迎する様に出迎える─────





 それは────






 彼は『魔王』。いつわりの少年には、故にそのは、あまりにも眩し過ぎた。





「否、おかえりです!マスター!」

「はぁ、やれやれです、是」





 白と黒の。死んだ筈の少女が何かを呟き、同時に少年こと────シドは初めて──……そして初めて、



 


 ---

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る