第34話 彼岸と奉血【2024年9月16日 祝日】
「山の
白衣の胸部が
夫の
通話を終えるのを見て
「あの……
「あぁ、これ? 平気よ。止血は出来ているわ。それに……」
「私はこの木の末裔なの。ひとたび樹体に触れれば体力を回復できるのよ。何度でもね」
「そ、それって
「
「そ、そうなんですね。そんな特権が……」
「さあ、下山しましょう。貴方たちの
「はい。ありがとうございます。体力は戻っています。で、でも、また森の怪異が……」
「安心して。私がその一切を封じるわ。無事に
「は、はい……」
「
「そ、そうよね」
意思を固めた二人。
「あ、あの……
「はい。何か?」
「その……明りなしで下山するつもりですか?」
「明り? あぁ、そうそう言い忘れていたわ。
「えっ!? ライト消したら真っ暗で見えなくなりますよ」
「そ、そうですよ」
「試しに消してみて。もし見えるようになったら教えて」
「は、はい……」
釈然としないまま、ヘッドライトのスイッチを切る。
瞬間――漆黒の闇に包まれた。
「うわっ……やっぱり見えないですよ、
「もう少し待ってみて。あと十秒」
「えぇ、はい……」
絶対見えないに決まっている――そう思った、その時だった……
「ん?」
目が慣れて見えるようになってきたのか、否――そんなはずはない。
いくら
ライト程ではないが、十メートルくらい先まではっきり見えるようになってきた。
「信じられない……」
「どうやら見えてきたようね」
「一体、どうなっているんですか?」
「説明は後でするわ」
――茶色い虹彩。能力だけでまだ完全には宿っていないか……
「じゃあ、ついてきて」
その後についていく二人。
二人はお互い手を
鈴の共鳴地帯へと戻ってきた。風は吹いていない。
鈴の鳴りを覚悟したが、まったく鳴る気配がない。
「鈴が鳴っていないけど、
「多分、そうなんじゃない?」
その間、気丈に振る舞っていた
しかし、御神木から離れるにつれ彼女の表情がどこか
横を歩く
彼女の鼻を
英一さんのことを気にしているのだろう。
しかし、大切な人を
言葉をかけることができないでいた
時折、肩が悲しみに上下する。
「
「えっ!?」
炎で
その強烈なイメージを
「私が彼を介抱したの。今は御神木様の内部に安置して治療にあてているわ」
「そ、それって木の内部っていうことですか? 本当にそれで治るんですか?」
疑心暗鬼に陥る
無理もない。
自身が受けた
「即効型の治療の英気をダクトを介して流し込んでいるから一命を取り留めているわ。完治まで少し時間を要するわ」
「どれくらいで彼は治るんですか?」
普通ならあんなに燃えている炎の中で生きている人間なんていたら、奇跡だ。
でも、あの御神木ならその奇跡を起こせるのかもしれない。
「まぁ……ざっと五日以内ってところね。」
「五日、ですか……五日後って大体、彼岸の時期ですね……」
「ふふっ……確かに彼岸の時期と一致するわね。今回の件、
「い、いつかは出してもらえるんですよね?」
「えぇ、御神木様から解放できる日が決まっているのよ」
「そ、そうなんですか! 初めて聞きました」
ここまで十五分ほど歩いた。
その間、鈴の鳴りも、怪異の類も、一切起きていない。
かえって不気味だ。
道中、湿地帯へと入る。
「解放できる日っていつなんですか?」
当然の疑問を
「彼岸よ。三月と九月」
彼岸……
彼女が言う彼岸とは、いったい……
御神木の周囲に咲き乱れた彼岸の花が、どこか脳裏に奇妙な結びつきで咲いている……
辺りは……
「貴方たちは、
不意に
「奉血の儀……?」
それは、ひとえに、
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