虹色ドリーミング

第21話『毒薬とハイパーダイナマイトありがとう5』

　【トラウト＠ゆりぽん酢】

　俺、よく食べる子が好きなんだよね。でも食べ方が汚いのはダメ。きれいに、かつ美味しそうに食べる子。ギャル曽根とかもえあずとか。そしてユリポン。

　訓練が仕事の俺より食べるんじゃないかな。でもやせてる。やせの大食い。どういう仕組みになってるんだろう。本人は胃下垂気味だって言ってたけど。

　もえあずもアイドルと兼業してるから、ユリポンも大食いとかに出たらいいんだけど、すぐ「私じゃ無理だよ」って。だったら食レポとかやればいいのに。

　そんなことを話していたら、腹が減ってきた。今日もライブ後はオタ飯。俺とカカシとイーグルとココDとラジオとラビットちゃんが定番のメンバー。俺は酒が飲めないけど、他のみんなはまあホントよく飲む。ライブ前に「テンション上げる」って飲んで、ライブハウスで飲んで、ライブ後の飯で飲む。

　乾杯の前は、その日撮ったチェキを料理といっしょに並べて写真を撮る。でツイッターにチェキツイをあげる。他のグループのオタクは、料理にチェキを刺したりしてるけど、ドリーマーはそれはやらない。カカシが

「衛生上良くないし、推しに対しても失礼だ」

って言うからね。確かに。

　ダイバーシティは楽しみだけど、正直これ以上ドリーマーが増えたら、カフェもオフ会も撮影会もZOOMの2ショットトークもなくなっちゃうんじゃないかな。寂しいな。いや嬉しいのか？どっちなんだろう。

　せめて物販でのチェキは残してほしいと思ってる。

　【香月ゆり(紫色担当)】

「ゆかです」

「えりです」

『姉がいつもお世話になってます』

　あいかわらずピッタリ揃ってる。さすがにメンバーも全員石像になってる。一番最初に人間に戻ったアオイ様が口を開いた。

「何なの？分身の術？」

「うち3つ子なの」

　そう。うちはゆり、ゆか、えりの3つ子。

　みんな区別がつかないから、小さい頃から担当カラーがあった。髪型は誰か一人が変えて帰ると、シンクロしたみたいに残りの二人も変えてるから、面倒なのでいっしょの美容師さんに頼んで同じ髪型にしてもらってる。

　だから、たまに服を交換してイタズラしてたんだけど、なぜかお父さんだけは騙せなかった。お父さんが言うには「性格の違いが雰囲気に出てる」らしい。後ろ姿でも分かるからたぶんホントなんだと思う。

「へぇ、これならユリポンが休んで代わりに入っても、誰も気づかないねぇ」

「実は今までユリポンだと思ってた人が妹かもよ」

　休みたくて考えたことはあったけど、実行したことは一度もない。それぞれプロの世界で働いてるからね。

「社長、いいですか？」

「まあ、今日の一曲くらいならいいだろう」

　よし、許可をもらった。

　今日は私の生誕祭。新宿ラリーはトラウトをはじめユリポン酢、カカシ、イーグルが私の写真をいっぱい飾ってくれてる。紫色のフラスタもある。聞いた話では、私なんかにうん十万かけてくれてるみたいで、なんか申し訳ない。フラスタの下には米俵が置いてある。

　いよいよソロ、じゃなくて三人でやる。一人はなんか不安だ、ゆかとえりにそう言ったら二人ともこの機会にステージに立ってみたいと言い出してこうなった。

　三人同じ顔が出てきて、メンバーと同じように固まるドリーマーにウケる。

「ゆりです」

「ゆかです」

「えりです」

『私たち、うしでぃーぶたずです』

「えっ、ちょっと。三人組といえばキャンディーズでしょ？」

「お姉ちゃん古いよ、うしろ髪ひかれ隊だよ」

「お姉ちゃんたち、三匹の子豚だよ」

『子豚だけはイヤ！』

「私たち3つ子なんです。今日はソロだけ、ってソロじゃないや、カバーだけ特別に出演を許可してもらいました」

今のは私、ゆり。ドリーマーも笑顔になって石化がとけたので

「それでは聴いてください」

『夜明けBrand New Days』

♪♪♪♪～

　ドリーマーが全力の『イエッタイガー』をきめてくれた。良かった。

「以上、私たち虹色ドリーミングでした、ありがとうございました」

　さあ、アンコールにそなえる。新衣装に着替えて髪とお化粧を直す。

新衣装は全員同じデザインで色違いのパフスリーブのドレスと髪飾り。

準備オーケー。タオルも忘れずに。

『アンコール！アンコール！アンコール！……』

　パチパチパチパチ……。

「アンコールありがとうございます。先日発表したダイバーシティのチケットとニジドリタオル、まだだよって方はぜひ買ってください」

「では……」

『ちょっと待ったー！』

　洋楽のハッピーバースデートゥユーが流れる中、ケーキと花束とメッセージカードのアルバムをもらった。トラウトが米俵をかついで持ってきた。力持ちだね。記念撮影をして。

「では、聴いてください。新曲『ダイバーシティ オブ セブン』」

「タオル持ってる人は、タオル出してー」

≪さあ来たぞ夢のステージ そうこれが見たかった景色 今からが私たちの素敵な舞台≫

≪虹が夢が愛が恋が あざやかに光り出す 拳高く上げて みんなで振り回せ≫

≪サーンクス サーンクス みんな大感謝 イエーイ ダイバーシティ ヤルゾー ダイバーシティ≫

「スーバー！」

「ハイパー！」

「ウルトラ！」

「ミラクル！」

「スペシャル！」

「ダイナマイト！」

「デラックス！」

≪サーンークース！！イエーイ ダイバーシティ スゴーイ ダイバーシティ≫

≪まだまだ(まだまだ？)まだまだ(まだまだ！)私たちは止ーまーらーなーい≫

「ニジドリ物販終わります、ありがとうございました」

　パチパチパチパチ……パン！パンパンパン！

　ミオタン「チョッコレイト、チョッコレイト、チョコレートは……ガーナ！」

　アオイ「いや、コートジボアールだよ！」

　リナチー＆ミオタン＆アオイ様『ヤー！パワー！！』

　シーン……

　リナチーがドリーマーに手で、高速のおいでおいでをする。

　ドリーマー『ナイスゥゥー！』

　いっつもどこでネタ合わせしてるんだろう。