第13話『叫べ!さすれば届かん5』
【天野澪(水色)】
「ねえ、イーグルは今回のリリイベ来られる?」
「今度はどこどこでやるの?」
「えーと、東京以外だと仙台と浜松と名古屋」
「うん、じゃあ全部行くね」
「やったぁ!待ってるね」
良かった。オタクさんの「行けたら行く」は信用出来ないけど、イーグルの「全部行く」はホントに全通してくれるから。まあ、イーグル、カカシ、ココD、ラジオ、トラウトは基本的にどこ行っても来てくれるから大丈夫なんだけど、ミオタンメン……あっ、澪担当メンバーの略ね、はやっぱりイーグルがいないとね。
オタクさんといえば、最近アオイ様親衛隊の女の子が増えてきたから、女性専用ゾーンを作ろうかって話が持ち上がったんだけど、そこは流石ドリーマー、みんな紳士だからソウルスクリームが始まると親衛隊に前を譲ってる。女オタオタ、これは女のオタクさん目当てで来るオタクさんのことなんだけど、そういう人もいないし、みんな仲良くやってるみたい。
リリイベの移動は高梨社長が運転する9人乗りの大きなワゴン車。車内でのメンバーの共通の話題は基本ドリーマーの話か美容の話か食べ物の話。誰々推しの誰それがこんなことしてたとか、こんな話してた、ツイッターにこんな美味しそうな写真あげていたとか。
「イーグルって仙台から無事東京に帰って来られたんだね」
常連のドリーマーはメンバー全員が認知してるけど、その話題の答えは私しか知らないから、私が答える。
「えっと……鈍行で5時間かけて帰ってきたんだって」
「でもぉあれってヨコハマパークイベントの応援の課金のせいなんでしょぅ?」
「うん、えっとね、なんかね、家にキャッシュカード忘れちゃったんだって」
「それのおかげで100万人が見るパレードの先頭に立てるし、野外ステージも出られるからありがたいね、イーグルとかカカシに私たち支えられてるよね」
「イーグルってデビューの時からミオタンメンだもんね」
「違うよ、前世からだから……えっと5年前からかな」
「ミオタンもアイドル歴長いよねぇ、何歳までやるの?」
「30歳までやるつもり」
「ミオタン若く見えるからもっといけそう」
「美容鍼とかダーマペンとかベルベットスキンとかでがんばってるからね」
「ラビットちゃんも若く見えるよね、ってか何歳なんだろ?アオイ様知ってる?」
一人で窓の外を見てたアオイ様が、そのまま答える。
「知らなーい」
「ラビットちゃんって彼氏いるのかな?」
「知らなーい」
アイドルはオタクさんのお財布事情とプライベートは気にしちゃだめなの。これ鉄則。
浜松のリリイベは窓っていうライブハウス。ライブ後に鰻を食べるか、さわやかのハンバーグを食べるかでもめたんだけど、ユキちゃんの
「鰻は東京でも食べられるけど、さわやかのハンバーグは静岡じゃないと食べられない」
って言う一言で決定。1時間半並んだだけの甲斐はあって、すっごく美味しかった。
名古屋は1日目がZION、2日目がXHALL。名古屋は東京に次いでアイドル文化が盛んなので、たくさんのオタクさんが来てくれた。1日目の夜は矢場とんの味噌カツを食べた。2日目は食べるヒマなく移動。高速のサービスエリアでうどんを食べた。
仙台はいつものクラブ88。下のタピオカ屋さんでニジドリコラボドリンクも出してもらっている。もちろんお昼に牛タンを食べて、ずんだシェイクを飲んだ。
そんなこんなでリリイベ終了。発売日を迎えた。結果は……ドルルルル、ジャン!
「デイリー1位!」
「やったぁ!」
国民的アイドルと人気バンドにうまくかぶらなかったみたい。ウィークリーは初週3位、次の週は圏外だった。
ゴールデンウィークは待ちに待ったパレードと野外ステージ。ヨコハマパークと書かれた横断幕をみんなで持って出発進行。
さすが100万人、すごい人の数。そういえば前に「アイドルはすごい数の子がいる」って言ったら、アオイ様に「なんで数の子?」って言われたの今思い出した。
「これじゃ知ってる顔を見られないかなぁ」
って杏花ちゃんと言っていたら、馬車道駅近くの信号待ちで声をかけられた。
「ミオターンこっちこっち」
あの人が一生懸命写真を撮っていた。足元にいっぱいビールの空き缶があったの、私見逃していないよ。
ゴールにも大勢ドリーマーがいたけど、すぐにバスに乗ったのであんまりレスを送れなかった。
次の日の野外ライブも最前はカメラがいっぱいで、緊張したけどうまくいった。
「以上、私たち虹色ドリーミングでした。ありがとうございました」
「6月3日は渋谷デュアルで私、安達杏花の生誕祭があって、ピクチャーチケット販売中です。ぜひ来てください」
1つだけ疑問が残った。
「今日なんでみんなキンブレ持ってなかったんだろう?」
リナチーが笑いをこらえきれなそうな顔で答えてくれた。
「ミオタン何言ってるの?昼間の野外ライブだから光ってるの見えないじゃん」
あっ、そうか。
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