第12話『叫べ!さすれば届かん4』

【アオイ】

 さあ、次はいよいよあたしたちの出番だ。円陣を組んでミオタンがいつものかけ声。

「ニジドリ行くよー!」

『おー!』

 SEが流れると、手拍子の大きさでドリーマーの数が分かる。今日は小さめの箱だけど、まずまずかな。前のグループがあたためてくれたから、出ると他のグループのオタクも手拍子してくれていた。よし。

 1曲目がシークレットラブ、2曲目が虹の彼方へ。

 虹の彼方へは、オリコンデイリー最高3位、ウィークリーも1週だけ7位に入った。

≪さあ走り出そう 君となら行けるさ 虹の彼方へ≫

ここでMC。自己紹介。

「はい。イタリアン大好き。グラビアと赤色担当、中川華蓮です」

『カレンーー!』

「はい。ガンプラとアクセ作りが得意。太陽スマイル。オレンジ担当、安達杏花です」

『キョーカー!』

「はい。アイドルは見るのもやるのも好き。黄色担当、折原有希です」

『ユキちゃーム!』

「はい。むちむちポンコツマイペース。リーダー兼水色担当、天野澪です」

『ミオターーン!』

「はい。アニメ、ゲーム、コスプレと緑色担当飯田莉奈です」

『リナチーー!』

あたしの番。

「はい。クールなドS。差し入れはビールしか。青色担当寺嶋あおいです」

『きゃーーー〜アオイさまーーー!』

最近こういう黄色い?コールが増えてきた。 彼女たちは下僕たちじゃなく、自ら親衛隊と名乗っている。ちなみにカカシとイーグルは全員にコールしてくれてたのに、あたしにだけしてくれなくなった。なんでだ。

「はい。ごはんはおかず。お米ラブ。大食いと紫色担当香月ゆりです」

『ユリポーーン!』

『私たち、虹色ドリーミングです。よろしくお願いします』

「今日は4マンロックフェスに呼んでいただいて本当にありがとうございます。ここに相応しい曲もちゃんと用意してきました」

「では聴いてください。新曲『ソウルスクリーム』」

 ロックらしいギターのイントロ。

「お前ら!全員かかって来ーい!」

『うおおおおお』

 他のグループのオタクがツーステップを踏み始めた。

 基本はJ-POPと同じ作りだから、ベテランオタクが初見でもコールやMIXを入れてくれる。

 よし大サビ。

≪燃やせこの命 叫べその魂 駆け抜けろ 駆け抜けろ 昨日を振り払え≫

≪煌めくこの希望 目指せその明日 駆け抜けろ 駆け抜けろ 未来へ突き進め≫

≪はばたけあの空へ 走れ我が心 駆け抜けろ 駆け抜けろ≫

いくぞ!

≪響け ソウルスクリーーーーーーーム≫

ラスト!

≪ソウルスクリーーーーーーーーーーーーーーーム≫

「はあはあはあ……」

『以上、私たち虹色ドリーミングでした。ありがとうございました』

 これがあたしの、あたしだけの叫びだ。綾香には届いただろうか。

 この日、ニジドリの、さらにあたしの物販列は新規のオタクでいっぱいになった。

『ニジドリ物販終わります。ありがとうございました』

パチパチパチパチ……パン!パンパンパン!

ミオタン「ねえトランプしよう」

リナチー「やだ」

ミオタン「じゃあカルタ」

ミオタン&リナチー『ジャカルタ』

あたし「なんでやねん!」

リナチー&カレン「レボリューション!」


【ラビットちゃん@アオイ様親衛隊長】

 ついに見つけました。私の理想の推し。

 対バンで名前は見かけてました。でも「あ、良い!」って思ったのはテレビで見てからです。

 私、クールでカッコよくて歌が上手くて、それでいてかわいい子が好きなんです。だからロック館に通ってました。ここはそういうグループがたくさん出るので。

 今日はニジドリも入れての4マンだっていうので、有給使っちゃいました。えっ?仕事?秘密です。

 王道系のアイドル曲も嫌いじゃないですけど、やっぱりロックですよね。私はできないですけど、会場全員がツーステ踏むような曲。新曲がまさにそれ。しかも最後のスクリームしびれました。魂の叫びって感じで背筋がゾクゾクしました。

 私、あれ聴いて決めました。アオイ様の親衛隊長になるって。まだ誰も名乗ってないので、早い者勝ちかなって。

 物販でアオイ様に

「私が親衛隊長になります」

って言ったら恥ずかしそうに「ありがとう」って。カッコいいとかわいいはやっぱり両立するんです。かわカッコいい?カッコかわいい?まあどっちでもいいです。

これからはニジドリ、そしてアオイ様一筋です。二推しとか作りません。お仕事の関係でライブが観られずに物販芸になっちゃうかもしれませんけど、がんばって通います。

 今年の生誕祭は出席できませんでしたけど、来年は私が生誕委員長なので盛り上げます。

 あ、これさっき作った名刺です。裏がアオイ様の写真です。勝手に使って怒られますかね?

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