リリイベに行こう③
目を覚ますと、もう少しで京都駅に着くところだった。せっかく花林に富士山が見える席に座ってもらったのにお互い寝ている間に通り過ぎてしまっていたようだ。
ご飯を腹一杯食べてすぐ寝てしまったからか、少し気持ち悪い。
隣に座っている花林は窓側にもたれかかり、よだれを垂らして寝ている。隣にいるのが俺で丁度良かっただろうな。
疲れているだろうから、ギリギリまで寝ておいてもらうことにした。
「もうなんで早く起こさないの!移動中に整理番号がどこまでいっているか調べておきたかったのに」
「ならそう言ってくれよ。言わなきゃ分かんねえよ」
「言わなくても分かれ!お前が分かってくれないとこっちは困るんだよ!」
そろそろ新大阪駅に到着するというアナウンスを聞いた後、花林を起こし、現在地を確認した後、いきなり怒られた。
どうやら本人はこんなに長く寝る予定はなかったようだ。新幹線を降りたら、電車の乗り換えを確認し地下鉄に乗る。
大阪に来るとエスカレーターに乗る場所が関東とは逆なので少し戸惑う。クセで左側に乗りそうになるが、今が右側に乗るのが正解だ。
なんばの店舗でも参加券は確保できた。整理番号は一部が八十番代、二部が七十番代だ。人によってはどちらかしか参加しない人がいるのだ。時間の都合なのか、二回参加すれば満足なのか、人によって理由はあるだろう。俺達には二回参加する理由があるのだからそれでいい。
すぐに新大阪駅へとんぼ返りし、名古屋へ向かう。せっかく大阪に来たというのに名物も食べず、お土産も買うことはしなかった。どうせ二ヶ月後に来るんだから別にいいか。
新幹線で一時間もかからずに名古屋駅に着き、すぐに店舗へ向かい参加券を確保する。ここでは整理番号八十番代だった。
「ここも枯れるのは時間の問題かな」
と花林は言っていた。その声にはちょっとした余裕もあったように思えた。
ということで今回の参加券を全て確保する保とはできた。予約したCDは八枚、移動としては東京と大阪を往復、一日でかなりの金額を使ったな。
実家暮らしということもあってか、日頃からそんなに金を使わないので蓄えはあるし、ボーナスも出たし、このくらいの出費は平気だ。朝も早かったし、汗もたくさんかいた。疲れもある。時刻は十七時前、何をするにも丁度良い時間だ。
「一杯飲んでいかないか?なんなら奢る」
飲みに誘ってみる。名古屋は初めて来たし、手羽先、きしめんも食べてみたい。
「いいよー。私もあんまり名古屋来ないから手羽先食べたいな。さっき新幹線で駅近くのお店を見てたら良さそうなところあったからそこ行ってみよっか」
すんなりOKしてもらえた。店に入り、ビールを飲みながら手羽先を食べる。お互い二ヶ月後のイベントにどうやって行くか等打ち合わせをしたり、今期のアニメや最近の声優について語った。一時間経ってそろそろ店から出ようかという時に
「あっ、名古屋、なんばの参加券枯れた。いやー、やっぱり一日で枯れちゃったか」
SNSを見ていた花林が驚きつつも嬉しそうに話した。デビュー曲、そして楽曲についてもほとんど情報がないのにこんなことになっているのは凄いんだと熱く語る。
勢いのある新人声優がいること、レーベルもかなり力を入れていること、あとは注目のユニットというところも大きいらしい。
このまま人気になるのであれば、こういうイベントに全て参加するのは難しいだろう。できる内にできることをやって、その瞬間を楽しもう。こうやって応援できる時間は短いのだ。
店の支払いは俺が奢り、最後に新幹線に乗る前にきしめんを食べて帰った。花林とは改札に入る前に別れた。
あっ、そう言えば家に晩御飯いらないと連絡するのを忘れたな。まあいいか。帰ったら小腹が空いているだろうから少しでも今日消費したカロリーを取り戻そう。
だからオタクはやめられない ののはらかえる @kaerunohara
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