第359話

組員を外で待たせて、案内されるがまま部屋に入る。


もちろん、油断はしない。

仮にも準幹部だった女だ。

逃げられる可能性だってある。



チカは俺にアイスティーを用意してくれた。

テーブルを挟んで、向かい合うようにして座る。



「大きくなったね?」

「…」

「それに、雰囲気も変わった?」

「別に」

「いい人と会えたの?」

「お前に関係ない」

「ふふっ、そうだね」



自分がこれからどうなるのかわかってるはずなのに、普通に話しながら笑うチカ。

きっと、俺らが来ることはわかってたんだろう。



「昔はもっと可愛げがあったのになぁ…、すっかり大人っぽくなっちゃったね?」

「…おかげさまで」

「……あのさ、律、お願いがあるの」

「…聞く義理はねぇよ」

「私はもう終わり。だからあなたに私の宝物を託す。それをどうするかは、律に任せるよ」

「聞かねぇって言ってんだろ、勝手に決めんな」



そもそも、この状況がすでにお願いを聞いてやってるのに。

なんでさらにお願いを聞いてやらなきゃなんねぇんだ。



チカは、切なそうな顔をしながら昔の話をし始めた。



「3年前…、私が組織から逃げた時…」




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