第358話

「お前がなにをすべきかはわかってるな?」

「はい」

「何があっても必ずあの女を連れてこい」

「わかりました」

「絶対殺すな」

「はい」



事務所で真也さんと話をして、部屋を出る。


真也さんが用意した組員を連れて、チカが住んでるとされてる住所へ向かった。





車で向かったのは1つのアパート。

そこは、とても綺麗とは言えないボロいアパートで、周りには人気もあまりないようなところだった。



チカの知識と能力があれば、もっといいところに住めそうなのにな。

なんでこんなボロいところに住んでるんだ。


…まぁそんなことはいいや。



車から降りて、組員に指示を出す。

逃げられないように、アパートの周りを取り囲む。


街灯もあまりないから、あたりは真っ暗。

雲の間からの月明かりだけで人を配置。


絶対逃さない。




そして、組員2人と一緒にチカの住んでる部屋のインターホンを押す。



「…はい」



玄関を開けて出てきたのは、チカ本人。

俺が知ってるチカとは、少し雰囲気が違ってた。



「よぉ」

「…久しぶりね」

「そーだな」

「よくここがわかったね?」

「調べたのは俺じゃねぇ。おまえも知ってるだろ?裏切りものが、どうなるのか」

「…わかってる。ねぇ、1つだけお願いがあるんだけど」

「聞くと思ってんの?」

「最後に律と話がしたい。…お願い」



真也さんならそんなことさせない。

組織を裏切った奴の話なんて聞かない。


でも、もうチカと会うのはこれが最後になる。

最後くらい、話をしてもいいか…って思った。

たぶん、ちょっと前の俺だったら、こんなことしなかっただろうな…。

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