第21話臨月

 もう一部上場して久しい。


社長の八束が営業畑でコツコツと契約を上げていた頃を良く知っている。


常に上を狙い諦める事を非として時に常軌を逸した戦術を繰り出し対価を求めなかった。楢崎の経理マン人生に良く似ていた。


 先代の雪山泰三(ゆきやまたいぞう)経理部長は欲深く紳士の面構えをしていたが、紳士では無かった。


 雪山 登美子は、営業事務歴14年の営業本部中古車販売課主任の既婚者OLだが、腹に6ヶ月に為る子が宿っていた。


「胸が痛い・・・。」


はち切れんばかりの乳房は下着の擦れさえも痛みを感じる。


自宅では胸を露出して過ごしていた。


 乳腺が痛むのと初産を間近に迎えてハートがはち切れそうだった。


 夫が臨月に為っても帰って来なかったのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る