第4話 痩せること、太ること
「あと、何か無いっすか?」
お
「あとは、そうですね、運動不足やと太りにくいそうですよ」
「え? 運動って、やったら痩せるんや無いんですか?」
お茄子さんが目を丸くする。みのりはこれまで聞いたこと、学んだことを総動員し、頭をぐるぐると動かした。
「運動量が足らへんと、お食事の量が減るんですね。それで筋肉量が減ってしもうて、それで痩せてしまうんです。健康的に太るってことは、脂肪だけや無くて筋肉も程よく付いてくるってことですから」
筋肉は大事である。適度な筋肉が身体の代謝を上げるのだ。そして好循環が生まれる。食べて、動いて。それが人間の身体を作る。
「あの、運動やったら、おれ、出勤のときは
本町駅から心斎橋駅までは大阪メトロ
「筋肉を付けるには、散歩とかウォーキングとかの有酸素運動よりは無酸素運動、スクワットとかジムでの瞬発的なトレーニングが効果的やと思います。スクワットやったらお家でもできますし、お手軽に始めてみはるんやったら、ええと思いますよ。無理せん範囲で数回から始めて、少しずつ回数を増やして行く。その前にストレッチやってみはってもええと思います。急に激しい運動とかはよう無いと思うんで、準備運動として」
「ストレッチ、すか?」
お茄子さんがきょとんとした表情をする。
「ストレッチは筋肉をほぐして柔らかくしますから。ネットとかで調べてみたら、やり方いろいろ出てくると思いますよ。個人的にはラジオ体操がええかなって思うんですけど」
小学校や中学校のとき、体育の授業で準備体操として、みのりや同じ学校だった
みのりのお父さんお母さんの年代では、幼少のころから当たり前の様にラジオ体操をやっていて、今でも何も見なくてもできるそうだ。動きが身体に染み込んでいるのだろうと言っていた。
夏休みの早朝、子ども会主催で小学生が学校や公園などに集まって、ラジオ体操をする文化が当時はあったのだそうだ。最終日には参加した回数によって景品をもらえたりして、子どもたちはそれを楽しみにしていたらしい。
「スタンプカードがあって、そこに判子押してもらえんねん。懐かしいわぁ」
お母さんはそんなことを言って、懐かしげに笑っていた。
「ラジオ体操すか」
「やってはれへんのやったら、体育の授業のときにやってはった準備体操。ああいうのってかなり良く考えられてて、きちんと身体を動かしてあげたらちゃんと身体にええんですよ」
「……授業では面倒で、だらだらやってたっすけど」
そういう児童、生徒も多かったことだろう。みのりも同じだ。きっと教師はその意味を説明してくれていたのだが、いったいどれぐらいの児童や生徒が真面目に聞いていたか。みのりだってラジオ体操の優秀さを知ったのは、大人になってからである。
「そんなもんですよね。でも1度、ちゃんとやってみてください。ラジオ体操やったら動画でお手本があるんで、それを見てきっちりやってみはったら、身体の筋とかええ感じに伸びますよ」
「へぇ……」
お茄子さんは意外そうに目を瞬かせた。まさか適当にやり過ごしていた体操にそんな効果があるなんて、思ってもみなかったのだろう。
「とりあえず、間食と無酸素運動を心がけてみてください。普段のお食事はバランス良く摂ってもらえたらええと思いますよ。無理にたくさん食べようとせんでええとも思いますし。適量、これが大事やと思います。ボディビルとかやらはる方なんかは、たんぱく質を主に摂るために鶏のささみとゆで卵とブロッコリのみ、なんて聞いたりすることもありますけど、極端なことは必要無いと思います。あ、プロテインは取り入れてもええかも」
「ジムトレーニングとかしてはる人が飲んでたりするっすよね。あれ
「今はそうでも無いらしいですよ。美味しく改良されてるみたいです。液体だけや無くて、プロテインバーもありますしね。あ、それ間食にええかもです」
プロテインはお手軽にたんぱく質を摂取することができる。たんぱく質は身体作りに直結するので、良質なたんぱく質を適量摂ることは大事である。太りたいのであればなおさら。
「ええっと、お仕事が夜だけやったら、午前中とかは余裕ありますか?」
「まぁ、そうっすね。家事とかもひとり分やから、そんな掛からんす」
「それやったら時間を見つけて、午前中とかにプロテイン摂って、ストレッチとか体操して、スクワットとかするとええかもです。プロテインは運動前に摂るんがええみたいですよ。習慣付けたら苦にならんくなりますし。でも無理はせん程度で。体調しんどかったりするときには休んでくださいね」
「はい。少しずつかも知れんすが、やってみます。ありがとうございます」
こうしてあらためて口に出してみると、痩せることと太ることは紙一重なのだなぁ、なんて思ってしまう。バランスの良い食事、適度な運動。共通するそれらは、結局は健康な身体を作ることに繋がるのだ。
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