赤いゼラニウム編第4話
「……久しぶり。」
「あれ?反応良くなったじゃん!それに見た目も気にしてるし!まあ、そんな感じにしてもどうせ、友達居ないんだろ?やっぱり、」
同級生は私に向かって手を伸ばす。嫌だ!触らないで!でも、怖くて動けない。
「あなた誰ですか?」
パシッと陽太が同級生の手を弾いて、私をグイッと引き寄せる。
「へえー!イケメンを手に入れるなんてやるじゃん!でも、嫌われるのは分かってるんだろ?俺みたいにさ。」
私は両手でワンピースの裾を握って目に水を貯める。いやだ。陽太に嫌われたくない。これ以上こいつの話を聞かせたくないのに体が動かないし、陽太の顔も見れない。
「あなたは心音の何を見てたんですか?心音は人と付き合うのが苦手なだけできちんと話してくれるし、純粋で可愛いものが好きで、もし態度が冷たくても変わろうとしてるんです。貴方と違って。」
「は、はあ?やっぱり心音の友達も変わってんな?!もういい。」
同級生はドスドスと音を立てて去っていった。私は最初から酷い対応をしていたのに、めげずに相手をしてくれて、それどころか、今も庇ってくれていい所、ダメな所を変えてる事を言ってくれた。こんなの恋に落ちないなんて無理でしょ。でも、陽太は私だからした訳では無い。学校で見ていたら私以外にも優しいから分かる。
同級生の言葉では泣かなかったのに今、陽太への気持ちを考えただけで目に溜まってた水がボトボトと大粒で落ちてくる。
「心音?辛かったよね。大丈夫。今日は帰ろう?」
確かにこんな泣いてたら帰ろうとなるけど申し訳ない。それにもう帰ったら陽太と一緒にいれないのか。それも嫌だな。
「帰ったら一緒にのんびりしよ!あ!今日の埋め合わせにまた出かける予定を立てよう!」
本当に陽太はどこまで行ってもパーフェクトだ。どういう返事が相手が気持ちいいかよく考えてる。嬉しい反面、この対応は私以外もしてるのかな?と思うと胸にナイフが刺さったように痛い。
「……うん。ごめんね。」
「大丈夫!観覧車も乗れたしね!もう午後だから早めに帰ったと思えばいいよね!」
「ありがとう。」
「……何か飲む?お茶とりんごジュースならあるけど。」
私の家に帰るとリビングに通す。陽太は、私の部屋に入ったことがない。ちなみに私も陽太の部屋に入ったとこがない。理由は言われたことがないけど何となく避けているみたい。私も緊張しちゃうから少し安心してるけど。
「うん、お茶貰おうかな!ありがとう。」
陽太と自分の飲み物をついで陽太の元へ向かうと陽太はポンポンとソファの座っている隣を叩く。
「どうぞ。」
「ありがとう!」
そして陽太はテレビを付ける。最近距離が近いのには慣れてきたけど、今は少し心臓がうるさい。
「何見る?恋愛ものかー、ファンタジーかー。」
「……さっきの男の子、誰なのか。とか聞かないの?」
陽太があまりにも何も無いようにするから逆に私に興味が無いのかと思って思わず聞いてしまった。
「気になるよ。でも、心音が言うまで待ってようかと思って。だいぶ辛そうな過去があるみたいだし。」
陽太はテレビを操作していたが、電源を消して私を正面で見る。
「話、してくれる?」
「……うん。あれは、中学生の頃。」
〜回想〜
私は昔は反応が少し遅いタイプだった。それが成長と共にバカにされたりして、対応が冷たくなってしまった。それでも、中学生の頃はクラスメイトと仲良くなろうと頑張っていた。そして、密かに恋もしていた。それが今日、遊園地で再開した同級生の男の子。対応が冷たいのもあるけど、ドキドキして上手く話せなかった。そんなある日、
『なあ、そういえば、心音って相手するの大変だよな!』
『えー?あいつってきっとお前のこと好きだよ!』
『は?もしそうなら、めんどくさいわー。心音は反応悪いし、無口だからなー。本当は離れられるなら離れたいけど、1人だけ避けるとダメだろ?』
放課後、忘れ物をして取りに帰るとそんな話を恋していた同級生の男の子がしてるのを聞いてしまった。そして、
『ガタン』
『誰だ?』
傷ついて涙を流す暇もなく、物音を立てた私は聞き耳を立ててた私に気づいてしまった。そして、その後は態度が一変して私が好きだった優しい彼は居なくなり馬鹿にするようになり、ショックを受けた私はクラスメイトと、いや、人と距離をおき、自分を守るために口が悪くなり態度も更に冷たくなった。
〜現在〜
「そんな感じかな。」
こんな話をするなんて初めてだし辛かったから何度かつっかえながらも何とか説明できた。不思議と涙は出なかった。
「話してくれてありがとう。辛かったよね。と言いたいところだけど、俺には全ては分からないから知ったような口も利きたくない。でも、これからは一緒に悩み事を解決していくよ。だから、話せることは話してほしいな!」
どこまでも優しくて、傷ついても心を守ってくれる。本当に好き。
「ありがとう……。これからも私の傍に居てくれるの?」
「うん!もちろん!……心音?」
こんな私の傍に居てくれるなんて。と安心して思わず抱きしめてしまった。そんな私を何も言わずに撫でてくれる。
「!……あ、ごめん。」
ハッとなって離れる。でも、何も言わないから悪かったかと思って顔を見ると、
「心音。」
空気がまるで、恋人を見つめるような雰囲気になるのを感じる。私の名前を呼ぶ声も大切なことを話す声に聞こえる。
「な、なに?」
ゆっくり瞬きする陽太を見る。心臓がうるさく鳴り響くのを感じる。
「心音、
俺と付き合ってくれない?」
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