あなたへ1つ花をおくります。

桜の一夜

赤いゼラニウム編 第1話

「もう!私のバカ!」


私は悪く言えば統一感の無い自分の部屋でベッドに乗ってるふわふわで食べたらマカロンの食感とは少し違うマカロンのクッションを壁に向かって音が鳴る力で投げる。


私が怒った原因、それは、今日出会ったアイツ。……に対する私、氷雨 心音(ひさめ ここね)の態度。


昨日に少し高くてふわふわなウサギの新しい人形を手に入れて飾って満足して、今日はルンルンだった日。


「おはよう!」

「おはよう!」


ザワザワとしたいつも通りの教室に入ると皆挨拶してるが私に挨拶する人はいないし私もしない。浮いてると思うけど私の態度が問題だと言われた日から人と距離をおいてる。そんなことを言う人の方が問題じゃない?そう思っていた、今までは。


「はい!急遽転校生が来たから紹介するな。春井!」


友達が居なくて情報が一切来ない私が知らないだけかと思っていたら、クラスメイトもライブにサプライズ登場が来ると聞いたかのようにザワザワする。

私は興味がなく窓へ視線を移す。白紙のように白く、鶴のような見た目の鳥が飛んでいる。私は綺麗なものは大好きだから、眼福だ。ああ、あの鳥みたいに、…。


「キャー!」


せっかく綺麗な鳥を見て心が穏やかだったのに女子の悲鳴で意識が戻る。


「チッ。うるせえな。」


ふと口に出たがみんな騒いでいたため誰も気づいてない。うるさいから黙って欲しかったのに。


「みんな静かに!春井、自己紹介できるか?」


「はい。春井 陽太(はるい ようた)です。 」


先生の言葉では静かにならなかったけど、転校生が自己紹介すると一言一言こぼさず聞くように黙って、またキャーと黄色悲鳴をあげる。

私はその間も窓の外を見てボーッとする。


「じゃあ、春井は氷雨の隣な。」


いやー。あの花綺麗だな。誰が手入れしてるんだろう。私も手伝いたいけど…。私は視線を変えて遠くを眺める。


「氷雨、さんかな?よろしくね。」


花といえば「ハーデンベルギアのお姉さん」元気かな?なんてことをボーッと考えていると、


「トントン」


「!」


過去のことを思い出していたし、まさか私に関わろうとしてくる人が居るとは思わず、突然の肩の揺れに久々に驚いた。


「あ、ごめんね。氷雨さん。だよね?今日からよろしくね。」


想定外すぎて、思わず振り返るとブラックホールのような大きな黒い瞳に捕まる。ブラックホールなのにどこか光が見えて不思議な感覚。視線をずらすと人形のように整った顔によくテレビで見る芸能人のようなさらさらな髪。やばい。イケメンすぎる。可愛いもの好きな私にはたまらない…!って、ダメだ。見すぎると嫌だよね。


「……よろしく。 」


あー!もう。なんで私はこういう時もこう、素っ気ないの?まあ、理由は分かってるけど。私は瞬きをしてとりあえず挨拶したしずっと見てるのも……。と思い視線を窓にずらす。私の視界には入ってないけど突き刺さる視線を感じた。



「春井君ってどこから来たの?」

「かっこいいよね?!モデルとかしてるの?」


先生がホームルームを終え教室から出ると、授業まで10分の中転校生に興味を持ったクラスの女の子たちが転校生に群がっている。


「県外だよ。東京から来たんだ。」


東京という言葉に都会に憧れている女の子たちがさらに黄色い悲鳴をあげる。


「春井君!校内案内しようか?」


転校生が迷ってるのかシーンとなった。


「氷雨さんにお願いしてもいいかな?」


滅多に呼ばれない私の苗字を爽やかな見た目にあっているイケボで呼ばれて心臓がドクドクと鳴る。


「氷雨さん?だめ、かな?」


顔は見たいけど今は見れない。だって、痛い視線を浴びてるから。『なんであんたが』って。


「……。」


早く返事をしないと!でも、仲良くなれる自信がない。この口のせいで。いや、自分のせいだけど。


「氷、「春井君!その子は放っておいてあげて!その子は態度も冷たいし口も悪いから人付き合いが苦手みたい!」」


他の女の子の馬鹿にするようにクスクスと笑う声が聞こえる。転校生に注意した女の子も一見優しい言葉に聞こえて裏を読めば『態度も悪いし、口も悪いから構うといいことないよ。みんなから嫌われてるし!』という意味だろう。


『えー?あいつってきっとお前のこと好きだよ!』

『は?もしそうなら、』


「……。」

嫌なことを思い出しそうになったため、席を立って教室から抜け出した。



「あ!氷雨さん!」


女子たちの圧からトイレに逃げ込み、チャイムがなる直前に戻ると何があったのか、憧れのものを奪われたようなギスギスした空気だった。すると転校生に声をかけられる。


「……何?」


「さっきの話だけど、校内案内してほしいな!」


このたった数分で何があったのか。さっきまで私に声をかけても恐る恐るで、良くも悪くも波を立てない話し方だったのに。何故か、ものすごくキラキラした圧を背中から感じるけど、顔は見れないからさっきと何の変化も無い外を眺める。


「氷雨さん?聞いてる?」


転校生は私と窓の間に立って覗き込む。


「……聞いてる。」


目を見ないようにして答える。


「よかった!それなら、「でも嫌。」」

私は視線を逸らして断った。



そして今に至る。本当は仲良くしたい。でも無理だろう。私が人間関係で上手くいった人なんて「ハーデンベルギアのお姉さん」ぐらいだ。


「心音ー!ちょっと来て!」


「チッ。」


本当はめんどくさいが変に抵抗すると嫌な予感がするため1階に降りた。そしてリビングの扉を開けると。


「こんばんは!氷雨さん!」


まさかの転校生が居た。

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2024年12月1日 21:15

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