崔なら、なんとかしてくれる!
崔 梨遙(再)
1話完結:1300字
30代の前半、僕は求人広告屋(採用コンサルティング会社)に勤めていた。
或る日、僕の携帯が鳴った。尋常ではない人間力で応募者を増やす、某企業のスペシャル採用担当者(採用責任者)の村上さんからだった。村上さんは僕のお客様で、某企業の人事課長だった。噂では、部長になる日も近いとか。
「はい、○○○○(社名)の崔です」
「おー! 崔さん。ちょっと頼みがあるんやけど」
「はい! なんでしょう?」
「急な人員補充が必要で、困ってるねん。崔さんなら、なんとかしてくれると思ったから電話したんだけど(← この一言は嬉しかった。今でも忘れない)」
「はい、どような人材をお探しですか?」
「今、1月だけど、4月入社で1名採用したいねん」
「4月ということは、新卒をイメージしてらっしゃいますか?」
「うん、今回は新卒のイメージ」
「今回の職種は?」
「ポスターやチラシを作ってくれる人が欲しいんやけど」
「グラフィックデザイナーですね? それなら力になれると思います。間に合いますよ。多分、何人か応募が来るでしょう。選べる採用になると思います。それで、このお仕事で、私どもはお幾らいただけるのでしょうか?」
「崔さんは幾らだと思ってるの?」
「一緒に言いましょうか? 1,2,3」
「40万!(僕)」
「20万!(村上さん)」
「村上さん、お互いに10万円ずつ泣いて、30万ではいかがですか?」
「わかった、それでええよ」
「それでは、お申込み書を送りますね」
「こちらは、何をしたらいい? 何を渡せばいい?」
「私が専門学校向けの求人票を作りますので、それをチェックしていただき、完成させてもらえたら、それだけでいいです。それから、貴社のパンフレットを弊社に送ってください。後は、応募者からの連絡を待っていただくだけで結構です」
「了解。ついでに店舗スタッフも募集できないかな? 1名でも嬉しいんだけど」
「そっちは、今からでしたら自信は無いです。応募が来ればラッキーくらいのお気持ちならお手伝いしても構いませんが」
「応募が来たらラッキーでもええよ。応募が来なくても文句は言わない。厳しいのはわかっているから。じゃあ、崔さん、頼むわ。追加料金は払うから」
「お幾らでしょう?」
「店舗スタッフなら、今回は40万でもええよ」
「わかりました。そちらの分もお申込書に書き足しておきます」
結果、勿論、グラフィックデザイナーの方は応募が数名来て(僕の読み通りだ)、女性が1人、春に入社した。そして、ラッキーにも同じ専門学校から店舗スタッフとして男性が1名入社した。これはラッキーだった。村上さんはとても喜んでくれた。
「崔さんなら、なんとかしてくれると思ってたんや!」(← 嬉しい言葉だったので、今もおぼえている)
最高の褒め言葉をもらった。
ちなみに、グラフィックデザイナーの女性と店舗スタッフの男性、写真とメッセージ付のチラシを母校の専門学校に送ったが、その専門学校を訪問した時、デザイナーの女性のチラシは貼り出されていたが、店舗スタッフの男性の写真は貼り出されていなかった。“わかりやすいな!”と思った。
崔なら、なんとかしてくれる! 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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