21.「第二の魔王を止めるために」
「改めて、どうやって、ポイカーゴンを止めるかだが」
「恐怖に身を震わせる可哀想なスライムを放っておかないで欲しいスラ!」
二百年間ずっとストーカーされていたという事実にガクガクブルブルと恐れ戦き、「お兄ちゃん、よしよしイム」と、ライムに慰められているスライは、放っておくとして。
「勇――サイコパス。お前の力を借りたいんだが――」
「もうそこまで言ったら、〝勇者〟で良いんじゃないかな!」
ならず者が何やらほざいているが、無視。
「っていうか、さっきも見たよね? 僕の〝大規模浄化魔法〟じゃ、あの〝猛毒の呪い〟は止められないんだ」
「いや、それは全く期待していない」
「少しは期待して!」
また目を潤ませた勇者は、今度は頬を膨らませる。
あざとさ百パーセントだが、残念ながら俺には効かない。
「俺がお前に期待しているのは、〝結界〟だ」
「結界? もうこれ以上強力なのは張れないよ?」
「いや、そうじゃなくて、結界を動かす事は出来るか?」
「結界を動かす……あ!」
俺の言わんとする事が分かったらしく、勇者は声を上げた。
※―※―※
ポイカーゴンを止める上で、〝幼馴染であるアスドとの対話〟は必須だ。
が、汚染地域の地上に出れば、全滅は免れない。
じゃあ、地中からなら、とも考えたが、そもそも会話が出来ないから、これも不可。
空中から、とも思ったが、もっと楽に近付ける良い方法を思い付いたのだ。
それが――
「わぁ! 本当に出来ちゃうなんて!」
「本当に結界が動いてるスラ!」
「不思議な光景イム!」
――〝結界を動かして、〝猛毒の呪い〟を防ぎつつ、そのままポイカーゴンのいる場所まで近付く〟という策だった。
思った通り、結界の効力はそのままで、問題なく歩を進める事が出来ている。
暫くすると、ポイカーゴンの姿が見えて来た。
漆黒の巨躯から、〝猛毒の呪い〟を吐き続けている。
そのまま、俺たちは着実に近付いて行く。
「御手柄ね、ラルド!」
「眼鏡屋、すごいスラ!」
「やっぱり、困った時の眼鏡屋イム!」
「誰か、一人くらいは僕の事を褒めてくれても良いんじゃないかな! 結界張ったのも僕だし、頑張って結界動かしてるのも僕なんだけどな! あれ、何だか、液体が垂れて来てしょっぱいなぁ。汗でも掻いたかな~? ハハハ」
何が悲しいのか、涙を流す勇者とは対照的に、俺は、
「そうだろう、そうだろう、はっはっは~」
と、鼻高々だった。
――のだが――
――かなり近付いた後――
――不意に、ポイカーゴンが――
「うわああああああ! たくさんモンスターがいるゴン! それに、人間も! 更に、ア、アスドまで!? な、なんでゴン……!? うわああああああ!」
――叫んだかと思うと――
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
――ポイカーゴンが吐き出す〝猛毒の呪い〟が、一気に勢いを増して――
「「「「「あ」」」」」
――俺たちの眼前――結界に穴が開き、〝猛毒の呪い〟が吹き出して来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます