9.「壁」

 ヴァラギスが言っていたゴーストが、まさかうちの店に来るなんて。

 しかも、ライム対策で忙しい、このタイミングとは。


 音も無く現れた虹幽霊レインボーゴーストは、噂通り、本体は無色透明で、視認することが出来ない(嘔吐物はあんなにカラフルなのに)。


 そして――


「いやああああ! ラルド! 助けて!」


 何故かレンの身体にレインボーを吐き続ける虹幽霊レインボーゴースト


 女の身体にゲロ――もとい、レインボーをぶっかけて興奮する性癖でも持ってんのか、コイツ?


 レンの眼鏡には防御眼鏡の機能を付与しているはずが、どういう訳か、レインボーは防げない。


 まぁ、確かに服が溶けている訳では無い。

 きっと、身体に掛かっても無害なんだろう。


 しかし、じゃあ実害が全く無いかって言われたら、洗濯が大変だし、そもそも不快だし、どう考えても無くはないと思うんだが。


「『防御プロテクト眼鏡グラッシーズ』」


 防御眼鏡の機能をレンの眼鏡に重ね掛けして強化すると、レンの身体にぶっ掛けられていたレインボーが全て弾け飛んだ。


 すると、虹幽霊レインボーゴーストは、レンの身体ではなく、店内のあらゆる場所にレインボーをぶちまけ始めた。


 床、テーブル、眼鏡が陳列してある棚、などなど。


「やりたい放題だな、おい……」


 そして、壁にも魔の手が迫り――

 南側、東側、西側と、次々と壁がレインボーに染められていく中――


「?」


 ――残った最後の一面――北側の壁に――


 ――レインボーを使って〝〟で書かれたのは――


『     』

「「!?」」


 ――だった。

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