第6話 装備を作る

 風呂上がり。キャミソールとショートパンツ姿のコマチ。ベッドに座り、タオルで髪の水気を拭き取る。

 かたわらに転がる赤い本。頭にタオルを巻き付け、ページをめくる。


 −−−−−


【装備を作る】

 材料

 鉛筆、色鉛筆、ペン、スケッチブックやノートなど


 霊の住む異界は広大で幾重もの界層に分かれており、霊的な存在や、怪物、魔物が数多くいる。

 魔物などに襲われた時に使う武器や防護服、その他、探索に必要な装備などを作る。

 広大な霊の世界で、生きている人間に会うことはまずない。その中でも知り合いに出会うのは稀である。もし出会ったのならば、よっぽど縁があるか、運命の人であろう。

 万が一、知り合いに気づかれたり見られたくないならばアバターを作ると良い。

 装備などを作らなければ基本的には就寝時間の姿で異界を探索することになる。

 ※装備などは挿絵を参考に。

 

●探索に必要な物を全て紙に自由に描き、色を塗り終わったら、眠りにつく前に枕の下へ描いたものを忍ばせる。

 ※探索後、必要な物を描き足して行く。


●眠る前に霊の世界へ行くボタンを押す

 ベットに横になってから頭の天辺を左手の中指と薬指で軽く20回叩く。

 眠る。


●一週間続けても霊の世界へ行くことかできなかった場合、昼間に良質なタンパク質と生の野菜をたくさん食べ、いつもより多めに水(何も混ざっていない)を飲む。

 白砂糖は控えめに。

 その他の対策などは後半の探求記録にも詳しく記してある。


★霊の世界へ行けたら、安全な場所で、まずは武器を使いこなすための鍛錬をしよう。


★霊の世界の存在に出会ったら、その世界のことを直接教えてもらおう。


 −−−−−


 

 コマチは学校で使うために買っておいた予備のノートと色鉛筆を勉強机のひきだしから取り出し、机の上に転がっていたシャープペンシルを握り、ベッドに寝転んだ。


「武器、かあ……。そんなに危険なのかな。寝てる時に霊体で霊の世界へ行くって、なんとなく体外離脱みたいな……?」


 赤い本の挿絵を見る。

 青い兜をかぶり、黒い鎧を着込み、小さな斧を持った男が描かれている。その横に矢印で細かな説明も記されている。

「斧……、はないかな」

 次のページ。

 全身プレートアーマー。剣を持った男。

 ペラペラとページをめくるがコマチが気に入るような装備はない。本を閉じる。


「RPGに出てくるヒロインみたいなのがいいなー……。

 えっと。

 剣は近接戦になるからなし。そうすると、飛び道具? 弓矢か銃、攻撃魔法の杖……。どれがいいだろ? 面倒だから、全部付きでいいか。変形型。基本の形は携帯しやすい銃かなー」


 コマチはスマホで『銃』と画像検索し、それを見ながらシャープペンシルで描き色を塗る。ノートに描いた銃に矢印を引き説明を加える。

「あ、一人だからヒーラーがいない。ヒーリングできる機能もつけて……。

 鎧は重そう……どうしよう。透明なシールド機能でいいかな」


 描き終わって眺める。 

「うーん……絵が下手すぎる……。なんか貧弱だな……。ま、いっか」


 ノートを閉じて、枕の下に差し込む。

「霊の世界……か……。

 お父さん、いるのかな……」

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