第5話 崩壊した世界
2080年
【ケリュンネル帝国】の侵攻から10年が立ち、北米を皮切りに世界各国は次々に侵略されていった…
GATEの設置で世界各地が自由に行き来できる様になってしまったこともあり、防衛線を構築するのも難しく、そこから【ケリュンネル帝国】の兵士だけでなく、おとぎ話出てくるような怪物、ゴブリン、オーガ、それだけではなく、日本で妖怪とされるヌエ、世界各地の神話上の怪物と呼ばれる生物を各地に侵攻させてきたのだ。
GATE開発者の孫にあたる【海斗】は世間の非難の的になったことは言うまでもない。
家族を失い、今まで当然のようにあったものの全て失った【海斗】は【ケリュンネル帝国】への復讐を誓い、日本軍へと入隊していた・・
タンッ タタタンッ
両手で構えられた拳銃から放たれた銃弾は軽快に的の中心を射抜いていく
夜の訓練場には海斗がただ一人残り、射撃訓練を続けていた。
家族を奪った【ケリュンネル帝国】への復讐だけが、彼の生きる目標となっており、ただ強くなりたいという思いが彼を訓練へと駆り立てていた。
「お〜い、まだやってんのか?」
入り口のドアが開き、同僚である【テツヤ】が海斗に声をかける
「飯も食って、自由時間だってのに訓練しかすることないのかよ?相変わらず真面目だことで」
一瞬、視線をテツヤの方に向け、また訓練の続きをしようとしたが
「ストップ、ストップ!隊長から招集がかかっておりますよ!遅れたら怒られるのは俺なんだから、10分後にブリーフィングルームに集合な」
了解したと合図をし、訓練に戻ろうとするが
「10分しか時間ないのよ!シャワーは無理でも、その汗まみれのシャツ暗いは着替えてこいって」
確かに汗にまみれていた。テツヤに軽く合図をして自室に戻ることにした
日本軍も帝国からの侵攻を受けており、東京、名古屋、大阪といった大都市は既に陥落していた。
海斗が所属する第7師団は金沢県に位置しており、もっか東京の奪還作戦を進行している最中であった。
しかし、その戦果は芳しくなく、数度にわたる戦闘で防衛線は後退し続けていた。
その理由として、帝国の兵士に対して、銃撃戦のほとんどが効果がなく、兵士1人に対し、こちらは数十人でなんとか対応しているというのが現状だ。
彼らは【魔法】を使い、障壁を展開し、こちらからの銃撃をほとんど防いでしまうため、物量で押し切るしか倒すことができないでいる。
日本軍でもこれに対応すべく、新兵器を開発中とのことだが、今のところは成果が出ていないのであった。
海斗はシャツを着替え、ブリーフィングルームに向かうと既に部隊の仲間が着席していた。
海斗は右手をこめかみに添え
「第13小隊所属、【真田 海斗】ただいま到着しました」
隊長である【新庄 明日香】はこちらを向き
「珍しくちゃんと着替えてきたじゃないか、まあいい。座れ」
海斗が着席すると、明日香はモニターのスイッチを入れ、作戦について話し始めた
「今回我々が行う作戦は救出作戦である。先日、軍部が東京都内から救難信号をキャッチした。」
テツヤがそれに対して声を上げた
「東京って、壊滅したのはもう数ヶ月も前じゃないですか?未だにあの状況で生存している人間がいたってことですか?」
明日香はそれに対し
「そうだ。機械の誤作動の可能性もある。それを確かめるためにも我々が向かわなければいけない」
テツヤは恐怖した顔で声を上げた
「あの東京ですよ!?今や怪物どもが歩き回り、下手したら帝国の兵士だっているんじゃ・・」
明日香はこれを遮るように
「だとしてもだ!テツヤが言うことも気持ちはわかる。ただ、それでも民間人が助けを求めている可能性がある以上は我々はいかなければいけない」
そういう明日香の表情も辛そうであった
部隊の他の仲間達も冴えない表情をしていた。
「また、今回の作戦は偵察、可能であれば民間人の救出となっており、13小隊のみで行う。帝国の兵士との戦闘となれば切望的であるため、万が一遭遇してしまった場合については全力で撤退するように」
13小隊のみ・・
この5人だけでのミッションとなると絶望的と言わざるを得ない、おそらく軍部としても【救出】に向かったという体裁を保つために実行したのであろう。
小隊として1番経験が浅く、仮に失ったとしても痛手はない。
万が一民間人を救出して、帰還できるようであれば一夜にして【英雄】の出来上がりだ。
「作戦は明朝0500からとなる。皆、後悔のないようにしっかりと準備をしておくように!」
「以上、解散!」
そう言い放ち、明日香は部屋を出て行った
準備・・要は遺書でも書けってことなんだろうな・・
100年以上前の世界大戦の時の特攻隊ってこんな気持ちだったんだろうなとふと思ってしまった。
明日香が部屋を出て行った後、部屋には重い沈黙が漂い、部隊の仲間達は下を向いたままであった。
海斗は明日への準備をしようと部屋を後にし、自室へと向かっていった。
海斗は部隊の面々とは異なり、高揚していた。
「やっと、実戦することができる。」
自身が銃を手に取り、どれだけ強くなれたのか、例えそれが絶望的な作戦であったとしても、【戦場にでる】
そのことに対して胸の高鳴りを抑えられないでいたのだ。
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