MOON GATE 二つの地球と二人の英雄
パチンカス一平
第1話 全ての始まりと世界の終わり
2050年
日本人の物理学者である【大空 陸土】博士は、設定された座標軸に物質を転送する技術の発明に成功した。
この発明は人類の物流、移動手段として革命を起こすことになった。
例えば、北海道で朝に吊り上げた魚が数十分後には食卓に上がっていたり。
夜にアメリカに野球を見に行き、その数時間後には帰宅する。
人類から時間という概念を軽減させることになったのだった。
この技術は門の形をした装置を利用されたため
【GATE ゲート】
と呼ばれ、世界各地にゲートが設置されていったのである。
裕福な家庭では自宅にゲートを設置するものなどもおり、自宅からゲートを利用して、世界各地で働くということも可能であった。
日本に住みながら、アメリカの研究所で働く大空博士もその一人であった。
時代は進み、2070年。
人類は地上だけでなく、月にもこのゲートを設置した。
開発当初は平面、2次元での移動しかできなかった技術を、開発チームのリーダーであり、現在は娘の婿である【大空 士郎】とともに空へと続く3次元の移動を可能にしたのだった。
2070年3月30日
アメリカのロサンゼルスでは、月面ゲートへの開通式が開かれようとしていた。
会場には世界各国からのメディア、VIPが集まり、式の開始までの時間を過ごしていた。
ゲート開発者である【大空博士】も、息子の【士郎】、先日7歳の誕生日を迎えた【大空 海斗】とともに式の開始をまっていたのである。
「じいちゃん!あのおっきいドアをじいちゃんが作ったって本当なの?!」
陸土は頬を緩めながら
「そうだぞ。あれはじいちゃんとパパが一緒に作ったんだ。」
「あれがあれば、お空の上にだって、その更に上の宇宙にだっていけちゃうんだぞ」
海斗は来賓室の窓に顔をくっつけながら
「うおー!すっげぇ!」
「でも…そんなに高いところに行っちゃって、落ちたりなんかしないかな…」
陸土はゲートを指差しながら言った
「大丈夫じゃよ。確かにじいちゃんだけで作ったゲートなら、お空の上から落っこちたかもしれない」
陸土はその大きな身体で自慢気に
「あれは海斗のパパと一緒に作ったゲートだから。パパが一緒に作ってくれたから、宇宙にだっていけるようになったんじゃぞ」
「えぇ〜!じゃあ余計危ないよ〜!」
「だって…パパはプラモデルだってろくに作れないんだよ。」
海斗は不安そうな顔をしながら
「パパが作ったんじゃ、スイッチを入れたらバラバラになっちゃうよ…」
士郎は困った顔したが、陸土を含め一同は笑っていた。
「もう・・海斗ったら。あれが壊れたら、すっごい爆発が起きて、ここら辺ぜ〜んぶなくなっちゃうんだよ」
陸土の娘であり、士郎の妻である【梨湖】は海斗をからかうように優しく答えたが
「ええ〜!じゃあ今すぐ帰ろうよ!!爆発したら大変だよ!」
と言いながら、母親である梨湖と士郎の腕を掴んで、自宅へのゲートへ行こうとした。
そんな慌てる海斗を抱き抱え、陸土は肩に乗せた。
「そんなに心配せんでも大丈夫じゃよ。あれはパパだけじゃなくて、じいちゃんやママ、たくさんの人たちが長い時間をかけて作ったものだから。」
陸土は来賓室の窓の方を向き
「あれが動き出したら・・あのお月様にだって、簡単に行けるようになるんじゃ・・いや・・その先にだって行けるようになる。」
海斗の曇った表情は晴れ、目を輝かせながら
「じゃあ!お月様にいるサンタさんにも会えるの!?」
陸土は少し困った顔をしながら
「そうじゃな・・まあ、サンタさんがいるかはわからないが、お月様には行けるようになるぞ」
「そうじゃ、あれが無事動いたら、じいちゃんと一緒にお月様まで行くのはどうだ?」
海斗ははちきれんんばかりの笑顔で
「うん!いく!じいちゃんとママとパパも一緒にいく!」
「そうか!じゃあ約束じゃ!」
陸土はその大きな指を海斗に差し出し、海斗もまた小さな指で指きりをした
「約束だよじいちゃん!一緒にお月様に行って、サンタさんにプレゼンントをもらうんだ!」
陸土はちらりと視線を士郎と梨湖に向けながら
「そうじゃな・・良い子にしてたらサンタさんからプレゼントをもらえるはずじゃぞ・・・」
来賓室にいた一同は、この先の未来に広がる無限の可能性を信じてやまなかった。
海斗が成長し、このGATEを更に発展させてくれるんじゃないか?
3次元の次は4次元。
親子4代に渡って、最後は別の世界への旅行をも可能にさせてくれるかもしれない。
そんな想いを皆が抱いていたのだ。
月へのGATE起動するまでは・・・・
2080年?月?日
海斗は暗い地下の中で、傷ついた身体を庇いながら、昔の記憶を思い出していた。
「思えば、あれが最後の幸せだった時かもしれない・・」
地上からは一つ、また一つと人々の叫び、建物が破壊される爆撃音が鳴り響いていた。
「早く・・みんなと合流しないと・・」
海斗は全身が傷だらけになりながらも、出口に向けて歩き出した。
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