第3話

 何も思いつかない一平は

取り合えず、お風呂を

勧めてみる事にする。


「お風呂入れましょうか?」


「あ!ありがとう。

私が溜めましょうか?」


「あ!大丈夫です

僕が溜めますから……」


 一平は慌ててそう言いながら

お風呂場に行き、お湯の蛇口を開け


「10分位で入れると思いますから、

お先にどうぞ」


 一平はそう言うと

再びテレビゲームを始めた。


 暫く一平の後でテレビゲームを

眺めていた優子は、もうそろそろ

お湯も溜まっているだろうと立ち上がり


「では、お先に頂きますね。

でも、覗かないでね」


 ゲームの邪魔にならないようにと

体をくの字に曲げ斜め後ろから

一平の耳元でいたずらっぽく言うと


 今まで気付かなかった

優子の甘い匂いが一平を包み込むが

一平は、その甘い匂いに

心動かされつつも冷静さを保っている。


「はい。ごゆっくりとされて下さいね」


(僕が覗くような人間に見える)


 一平は覗かれるような

人間に見られたことに腹を立てているが

顔には出さないでいる。


(ウフフ……あんなこと言ったって

男は皆スケベだから

湯加減はどうですか?なんて言って

覗きに来るのよね……)


 しかし、優子が身体を洗う頃になっても

一平は来ない。


(変ねぇ~……来ないわねぇ~……)


 優子は覗きに来ないのは自分に

魅力が無いのだからなのかと気になり

風呂場から、そっと抜け出し一平を見るが

一平はゲームに夢中だ。


(まあ!こんなに魅力的な

女が居ると言うのに私よりも

ゲームに夢中だなんて!)


 そして優子がお風呂から上がっても

一平は、まだロープレに夢中で

テレビに向かって楽しそうに

話しかけていた。


 優子は寛史に一平はまだ女より

テレビゲームに夢中な子供だから

安心しろと聞いてはいたが

それは嘘だと思っていた。


 優子はタオルで胸を隠し

一平の横に立ち両手で

髪を梳かせながら


「ああ~いいお湯だったわ。

どうぞ入ってくださいな」


「うわっ!」


 それを観た一平は

慌てて優子の体に目線を

合わせない様にしながら


転がるように風呂場へと

逃げて行った。


(まともに裸を見てしまった!)


 実際に女性のタオル姿など

見た事も無い一平は

自分の方が恥ずかしい。


(あらあら!あんなに慌てちゃって

まだ童貞ね。

頂いちゃおうかなぁ~……)


 そして、お風呂から出た一平は

寝床をどうするのか思案している。


(どうしよう……

優子さんにベッドで寝てもらって

僕はテレビの前の

座布団に座って寝ようか……)


 一平が優子にその事を告げると


「あら!そんな事しなくても

ベッドで一緒に寝ましょうよ!」

優子は当然の様に言う。


「えっ!一緒にですか!」


「そうよ!座ったままだなんて

それじゃ~眠れないでしょ!」


「だ、大丈夫です……

ゲームをしていて、座ったまま寝てた。

なんてことは、よくあるんです……」


 一平は本当にゲームをしたまま

寝落ちした事があるので

心配しないようにと言うが


「それでも私は、一平さんが

私の為に座ったままで寝ると言う事に

賛成はできないわ」


「そ、そうですか……

それでは失礼いします……」


 そして一平は優子の獲物を

狙うような視線に気付かず

小さくなってベッドに入る。


 しかし優子に背後から襲われ

一平は一瞬驚くが

その気になって合体を試みるものの

上手く行かない。


(あら!やはり初めてなのね……)


 優子が優しく導くと一平は

初めて合体する事に成功した。


 そして朝

一平はベッドの上で優子を求める。


「おっ!朝から元気だわ!

若い子って素敵ね!ウフフ」


 そして合体のまま

一平が優子の胸の上で休んでいると

優子のスマホが鳴り一平は慌てて

身体を離そうとするが


「いいのよ、メールだから……」


 優子は一平を抱き締め

仰向きのまま、バッグから

スマホを取り出し一平の肩越しに

メールを読んだ。


「えっ!……」


「えっ!どうしたんですか!?」


「うん。寛史君、

今日来れなくなったって……

家庭持ちだもの仕方が無いわね」


 優子は諦めた様に言うと

スマホをバッグに仕舞う。


「えっ!それじゃ~

アパート探しはどうするのですか?」


「そう、アパートを探さなければ

いけないのよねぇ~……

一平君、私と一緒に

アパート探しを手伝ってくれない?」


「えっ!僕はアパートをどうやって

探せばいいのか判らないです……」


 一平は慌てて首を横に振る。


「そうよねぇ~……」


 優子は両手を頭の下に置き

思考え込んでしまうが


「そうだ!一平君!

此処の家賃や電気代と

水道代など半分見るから

此処に一緒に住まわせてくれない!


でも、今月分は

私の身体を抱いたのだから

チャラよ……」


 優子はいいアイデアだと

身体をくねらせ

リスのような瞳を輝かせながら

一平を見つめている。


 一平は金欠病だ、したがって

お金が無いので家賃など

半分見てくれるのは嬉しい。


「い、いいですよ……」


 一平は、そのゾクッとする瞳と

甘い仕草に思考回路も

シヨートしてしまい

何も考える事もなく優子の言いなりだ。


「やった~!」


 優子は両手を挙げ

大喜びで万歳をしている。


「お金は直接あげてもいいのだけど

払った、貰わなかったで

もめるのはイヤだから

一平君の通帳に振り込むわね。


口座番号を教えてくれる?」


「うん」


     続く



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