第2話
(まさか!この人も
一緒に泊めてくれ!
なんて言わないよね~)
一平は6畳一部屋しかない
この狭いアパートに
三人も寝る事など出来ないと
その思いが顔に出てしまうが
「すまん一平!
俺の同級生なんだ!
今夜一晩でいいから
此処に泊めてやってくれ!」
寛史は初恋の女性が
自分を頼って来たと
言う事に感動していて
鼻息も荒く手を合わせ
一平を無視して頭を下げた。
「お願い!」
女性も
その細く白い手を合わせて
一平を見つめながら
今にも泣き出しそうだ。
「えっ!泊めるのは
この女性ですか!」
寛史を泊める話だと
思っていた一平は
思わず声を上げてしまった。
(困ったなぁ~どうしょう……
6畳と言っても色々と物が置いてあり
ベッドはシングルだしなぁ~……)
一平は困惑して立ちすくんでいる。
「まぁとにかく中に入れさせてくれ」
人目が気に成るのか寛史は
一平の返事を待たず女性の手を引くと
強引に中に入り入り口のドアーを閉め
玄関と続きになっている台所へ上がり
台所の椅子に女性を優しく座らせると
(俺は、嘘は言っていないぞ……)
寛史は一平の気持ちを察していて
女性の横に立ったまま
一平から泳ぐように目を逸らし
額に手を当てている。
(先輩!それは無いですよ!
泊めるのは女性だなんて
話の肝心な部分が
抜けているじゃないですか……)
一平は台所の上がり口で
二人を見つめながら
眉間にしわを寄せ明らかに
不機嫌そうな顔をしている。
「いや!アパートが
見つかるまでだ!頼む!」
寛史が再び手を合わせ
頭を下げると、女性も
椅子から降りて床に座り
今にも泣き出しそうに
言葉を挟む。
「ごめんなさい。
私が家を飛び出してきたの。
何処にも行く所が無くて
一平さんを頼るしか無いの……」
「そう言う訳だ!明日休みだろ。
明日二人でアパートを探しに行くから
今夜1晩泊めてやってくれ。頼む!」
寛史は再度手を合わせ
深く頭を下げている。
(愛人と言う訳では
無いみたいだな~……)
「今晩だけですよ……」
二人に頭を下げられ
女性に泣く様に言われた一平は
仕方なく了解してしまう。
「おお!済まん一平!」
「ありがとう!一平さん!」
二人はホッとして顔を上げ
大喜びをすると
「それじゃー俺はもう帰らないと
親父や嫁に怒られる。
明日の朝10時には迎えに来るから」
寛史は一平と女性に手を振り
そうと決まれば用事は無いと
言う様に、一平をしり目に
玄関のドアーを開け外に出た。
「それじゃ~明日の朝ね」
女性は玄関口で寛史を明るく見送り
戸惑っている一平の横に
寄り添うように立つと
「御免なさいね。
突然押しかけて来て……
私、中森優子。よろしくねっ」
先程の深刻そうな顔は
芝居ではなかったのかと思うほど
うって変わって笑顔で明るい。
(な、なんなんだ!この変わり様は!
それに、先輩と同級生だなんて
とてもそうは見えないぞ!?
どう見ても僕と同じ位にしか
見えないじゃ~ないか?……)
一平は横目で優子を見ながら
小柄で若作りな優子の歳を疑いながらも
奥の部屋に優子を案内する。
そして部屋の一番奥に置いてある
テレビの前の自分の座布団を取り
自分の横に優子を座らせると
自分はテレビの前で畳の上に座り
あぐらをかいてテレビに向かうが
(弱ったなぁ~……
これからどうすればいいんだろう)
女性と二人きりに
なった事の無い一平は
これからどうすればいいのか分からず
ゲームは上の空でテレビ画面を見ながら
思案していると
「一平さん……
夕ご飯はもう済まされました?」
「あっ!
まだ食べていませんけれど……」
(あ!どうしよう……
カップ麺とラーメンしかないぞ!)
「あ!まだでしたら、
そこのコンビニで
何か買って来ますね……
一平さんは何がいいかしら?」
優子は一平の横で明るい。
「えっ!僕の分も
買って来てくれるのですか!」
思わぬ言葉に一平は
大きく口を開け笑顔になっている。
「ええ。何がいいですか?」
「僕は何でもいいです!」
お金の無い一平は大喜びだ。
「それじゃ~
チョット行って買ってきますね」
そう言うと優子は笑顔で
部屋を出て行った。
(やった!夕食代、助かっちゃった!)
一平は大喜びでゲームを始める。
暫くすると優子は
大きな袋を手にして帰って来た。
「ただいまぁ~」
「お帰りなさい!」
一平は優子が
何を買って来たのか気になり
急いで玄関へ行き出迎えた。
「お弁当を買ってきましたけど、
これで良かったかしら?」
「はい!ありがとうございます!」
一平はタダで貰える物は何でもいい。
その後、二人で食事を終えた一平は
(弱ったなぁ~……
これからどうすればいいんだろう)
一つ屋根の下で
女性と二人きりになった事の無い一平は
これからどうすればいいのか分からない。
続く
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