投資の神様が転生したら財閥の三男だった

@Leeway

第1話投資の神様の最後

「またあの男だ! '投資の神様'が動いたぞ!」


日本の投資界において、「投資の神様」として君臨していた男がいた。

彼の本名を知る者は少ない。株式市場でその名を馳せたとき、彼はすでに「投資の神様」と呼ばれていた。実際、彼の投資センスは神域とも言えるものだった。株価の動きはもちろん、政治情勢や国際経済、企業の経営方針に至るまで、すべてを網羅した彼の分析は予測を超えて的中し、億単位の利益を何度も叩き出してきた。


東京・六本木のタワーマンションの一室。床から天井まで続くガラス窓から、夜の帳が下りた都心の光が見える。部屋の中は静寂に包まれているが、そこには圧倒的な緊張感が漂っていた。デスクに座る一人の男は、いくつものモニターに映し出された株価の動きを示すチャートが、脈打つように上下していた。


「よし、ここだ。」


主人公は、静かにだが確信に満ちた声でつぶやいた。そしてマウスの上に手を置きクリックする。取引額は驚異の500億円。瞬間的に動かされるその巨額の資金に、普通の投資家なら震え上がるだろう。だが、彼の顔には迷いも焦りも一切なかった。


その瞬間、彼の取引による株価の変動が市場全体に波紋を広げる。株価が急騰し、ネット上では興奮した投資家たちの声が溢れた。


「またあの男だ! '投資の神様'が動いたぞ!」


「どの銘柄だ? 俺たちも乗っかろうぜ!」


「ちょっと待て、これ以上動くと売り逃げされるかもしれん…!」


「くそ、これで俺の手元資金も倍になるかと思ったが、間に合わなかったか!」


「マジであいつは何者なんだよ…。AIでもここまでの精度は出せないぞ!」


掲示板で飛び交う彼への賞賛と畏怖の言葉。市場では、一度「神様」が動いたとなれば、それに乗じようとする個人投資家やファンドが群がる。しかし、彼はそんな市場の反応すら計算に入れて動いている。どのタイミングで売るべきか、どの企業がさらに価値を伸ばすのか、そのすべてが彼の手の中にあった。


「思った通り…。」


彼は微かに口元を緩め、次のターゲットへ視線を移した。すでに500億円の取引で50億円以上の利益が確定している。しかし、彼の表情に満足感はなかった。これはただの通過点に過ぎない。より大きなゲームを仕掛けるための準備でしかなかったのだ。


彼は取引を終えると、一息つくために窓際に立った。東京の街並みが、静かに目の前に広がっている。


「これでついに資産が5000億を超えたか」


彼はその実感を噛みしめるように呟く。


しかし彼の活躍の背後には、彼を警戒する影がいくつも常に潜んでいた。




夜。いつもなら一人で静かに過ごす彼の部屋に、訪問者があった。黒いスーツをまとった二人の男。帝国財閥の関連会社の名刺を持つ彼らが、主人公に取引の提案を持ち掛けてきた。


「ぜひ我々のファンドのトップになっていただけませんか?」


彼らは微笑みながら資料を差し出す。だが、主人公はそれを軽く一瞥しただけで、すぐに返した。


「悪いが、それには乗らない。君たちが何を狙っているのか、わかるからな。」


「そうですか…。残念です。」


男たちは一瞬だけ表情を曇らせたが、すぐに微笑みに戻る。その瞬間、主人公は胸の奥に冷たい感覚を覚えた。明らかに何かがおかしい。だが、男たちはとくに何もせずに静かにその場を後にした。


「あいつら何を企んでるんだ?」


深夜、再び静寂が戻った彼の部屋。窓の外では、都心の灯りがかすかに揺れている。彼が次の取引に向けて資料を確認していたその時。


「カチャ。」


小さな音がした。振り返る間もなく、暗闇の中から何者かが現れた。冷たい金属が触れる。反射的に立ち上がるが、すでに遅かった。


「バン!」


彼の視界がぼやけ、膝が崩れ落ちた。


最後の意識の中で、彼は自分を襲った者が帝国財閥の人間であることを確信した。そして、胸の奥底で湧き上がる怒りと悔しさ。それが闇に飲み込まれた瞬間、彼の身体は静かに床に横たわった。


外では東京の街が、何事もなかったかのように輝きを放っている。

しかし、世界はまだ知らない。この投資の神が、再びその力を発揮する日が来ることを――。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

投資の神様が転生したら財閥の三男だった @Leeway

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画