精神支配で切り抜けたい! 〜容姿完璧だけど性格がクソな美少女美女たちを手籠に————する気なんてなかったのにどうしてこうなった〜

葉月ナタココ

CASE1 クラスの金髪ギャル

第1話 なんか気づいたら事後だったそんな朝

「————はッ!!?」


 とある朝、思わず起き上がってしまうほどの劇的さで僕は目を覚ました。悪夢でも見た時のような、汗が張りつく嫌な感触を味わいつつ。

 恐ろしく甘美かつ非現実的な体験、体験している時ですら「これもう夢だろ」と思っていたらマジで夢だった。


 どうやらは夢で、僕……いや、俺はたった今、自室で目を覚ましたらしい。いつも通りの特徴のない普通の部屋、薄暗さからして時間帯は早朝らしい。


「夢、か……」


 とんでもない夢だった。そして自分にとってあまりに都合がよかった。つまり、あんなことが起こるなんてありえない。

 からして童貞だった。まさか転生したからといって卒業、なんてそんな虫のいい話はない。ないのだ……!


(まずは落ち着こう。思考が若干支離滅裂になってる。そうだな、シャワーでも浴びよう。汗でべたべただし……)


 そんなことを思い、手を動かした時だった。「むにゅう♡」というナニカとんでもなく柔らかい感触が手のひらをくすぐったのだ。


「んっ♡」


「えっ」

(今、なんかエッッッな声が……!)


 油が切れた機械がごとく緩慢な動きでベッドを見下ろすとそこには、絶世の美少女が眠っていた。しかも全裸で。さらには手のひらが味わう柔らかい感触は大きなおっぱいで……!

 日の光に照らされたそれはあまりに、美しくて艶めかしくて————。


「えっ? まさかアレ、夢じゃない?」


 半ば現実逃避しながらも、昨夜なにがあったのか、いやどうしてこうなったのかその記憶を探ることにした。だってまだこの現実を飲み込めていない。しばらく、夢の中説を現実と思っていたいから……。






 心臓発作という、某新世界の神に殺されてそうな死因で死んだ俺は超能力が当たり前にある世界に生まれ変わった。

 らしい、というのは死んだ人間が自分の死因を知ることなんてできないからであって、なにか特別な手段で知り得たわけではない。


 記憶は途中からではなく最初からあった。

 だからこそ気づいた。自分の持つ超能力がとんでもなくヤバい代物だと。その名は『精神支配』。数十年前、超能力を使ってとある国を支配した稀代の大犯罪者と同じ力だ。こんなのが世に知れ渡れば殺される。そうでなくても生きづらいのは確実だ。だって、調べるとその事件のせいで精神干渉系の超能力者は割を食ってるらしいし。

 そんなわけで僕は自らの超能力を、「他人の精神をリラックスさせられる」超能力だと偽装した。自分に精神支配で短時間の間、それしかできないようにしたり、聞き取りをする人の記憶や認識を書き換えたりした。


 本来なら、子ども特有の無邪気さで大事件を起こしていたかもしれなかったが、俺は転生者。前世の記憶と知識がそうならない手伝いをしてくれた。


 何事もなく平和な幼少期を過ごし、そして今年、高校生になった。通うのは超能力者を養成する学園だ。

 いや、俺は普通の高校にしようとしたよ。でも、親もお国もそれを許してくれなかった。親はともかく国の方は……まあ、あれだね。超能力者はそれ専用の学園でまとめて管理しよう的な話なのかな? あるいは過去になにか問題が起こったとか。

 そんなわけで一人称を僕から俺に変えて二度目の高校デビューを果たした。……のだが、やはり精神干渉系ってだけで風当たりが強いったらありゃしない。なんか普通のコミュニケーションをしようとしただけで煙たがられる。しかも俺が自身の超能力について言ったわけでもないのに、誰かが言いふらしたらしく既に知れ渡ったあとだった。詰みかよ、おい。

 公的にはリラックスさせる程度の超能力だぞ。危害加えるとして、なんの役に立つねん。


「おい人でなし、購買で昼食買ってこいよ」


「あっ、それいいねー。私もお願い」


「じゃあ俺も。もちろんお前のお金でな!」


「俺も俺も!」


(よってたかって集りとか、人の心とかないんか?)


 内心で悪態をつきつつ、荷物を持って俺は教室を出た。ちな購買には行かない。昼食を食いっぱぐれて腹ペコで午後の授業を受けるんだな、ガハハ!

 そもそも買うなんて一言も言っていない。これが前世で得た大人の知恵なのさ! そんな風に内心の溜飲を下げつつ屋上前の階段で自炊弁当をパクつく。


 彼らの発言を1つ訂正すると、今生の名前は「獅子院セイハ」。決して「海星ひとで なし」なんて名前ではない。特筆すべきポイントは家が名家。以上。

 俺個人の持ち得るモノなんて超能力が最強以外になにもない。頭脳運動どれもが常人の域を出ない。まあ、容姿は……まあ、ノーコメントで。可もなく不可もなく。そんなところ。人生にリセマラはないと思い知ったよ。

 しかも、一族でも傍流というかかなりの末端レベルなのに精神干渉系ってだけで勘当されてるから、家との繋がりも二重の意味で皆無。持ち得るモノなさすぎて困る。逆に貴様はなにを持ち得るのだ! とか言われそう。今の俺は手切れ金+アルバイトで食い繋いでいるのだ。


 これもう半分どころか全分いじめだろ、と内心ではなく行動に移したものの、担任は冷笑するばかりでなにもしてくれない。やっぱり相手が精神干渉系ってだけで露骨に対応に差を出してくる。

 こいつら全員の生殺与奪は普通に俺の手のひらにあるわけだが、ここで力を振るうほどガキじゃない。だって前世で大人だったからね。子ども相手にキレて武力行使なんて、大人気ないことはしないさ。

 つまり20才で忙しくなかったら逆襲開始だ。きっちり1ジンバブエドル単位で借りを返してやる……かもしれない。まあ、成人したら必要になる超能力者用の制度やらなんやらで忙しくなるのほぼ確定から夢物語だね。

 担任? 俺の卒業同時にハゲ上がらせてやるから覚悟の準備をしておいてください!!


 そんな感じになかなか酷い環境に対し、最強の精神支配でもって他人にではなく、自身へのストレス大幅軽減と心のリラックスとメンタルの回復を敢行し続ける日々にある変化が訪れる。


「おいこら、人でなし! 見つけたぞ」


「ゲッ!?」


 ある日のことだ。いつものようにバイトを終え、さて帰宅するかと店を出ていつものように帰路につき、アパートの玄関に鍵を差し込んだところで背後から声をかけ————いや、怒声を浴びせられた。

 そこにいたのはいつもカツアゲしてくるクラスの女子。容姿はめっちゃいいのだが、いかんせん存在が不愉快なのでその美しさを過度に語りたくはない。ゆえに特徴なんて金髪ギャルで十分だ。


「俺になんのよう————ですか?」


 日和った問い方をしてしまったのは相手が不良だからだ。前世込みでも怖いものは怖い。なんせ彼ら彼女らはすぐに暴力に訴えるし、話し合いも通じないし、しかもこの世界には超能力なんてものがあるのだ。精神支配ナシで自重している俺では勝ち目なんてない。


「お前さぁ、全然昼食買ってこないじゃん。なんなの? 舐めてんの?」


 性格がよかったら足でもなんでも舐めたいくらいの美少女だが、性格がクソなので全然だ。胸が大きいはずなのに視線が吸い寄せられないのがその証左。


「買うなんて、一言も言ってないですよ? そもそもそんな余裕なんてないんですが」


「は? お前の財布の話なんてどうでもいいんだけど? 財布は財布らしく金吐き出せよ。ほら」


 上から目線に手を出して金を要求する金髪ギャル。彼女は俺の青筋がピクピクいっているのが見えないらしい。いや、三下だと勘違いしてるから眼中にないのか。

 それにしてもイラつく。精神支配でメンタルを平常に保とうとしてもそれを貫通してくるほどの不愉快さ。美少女にやられてこのイラつき方なのだから、それ以外からされたらラリアットからのジャーマンスープレックスは確定だろ。


(びー、くーる。落ち着け、俺。年下相手にイライラするなんて、大人の対応じゃない。ここは、そうだな————)

「帰れや、このメスガキが。舐めてると潰すぞ」(ドスの効いた声)


 おっと本音が。


「は? はーーーーッ!? カスの分際で行ってくれるじゃねーか! 死ねぇ!」


「やっべ」


 ブチギレた金髪ギャルの前蹴りから逃れるため、自宅ドアを開けて即座にその中へ退避。


「開けろやオラァ! メスガキだとぉ!? いい度胸してるじゃねーかぁぁぁぁぁ!!」


 うおっ、声めちゃうるせぇ。近所迷惑じゃん。ご近所トラブルとか絶対嫌なんだが!?


「うるせぇぇぇぇ! “静かにしろ”よこのクソガキィィィィィ!!!」


 ……あっ。

 より大きな声出してどうすんだ俺は。


「————」


「ん?」


 ほーん。いきなり無言とは。なかなか殊勝な心構えジャマイカ。少し見直したぞ。


(……いや、ねーわ。あいつ、クソガキって言われて黙るタマじゃないじゃん絶対。えっ、どういうこと?)

「ちょっとー? 大丈夫ですかー?」


 恐る恐るドアを開けて外の様子を窺うと、そこには目を虚ろにして完全に静止する金髪ギャルの姿が。


「あっ」


 うっかり精神支配をなかなかの出力で使ってしまったらしい。これ、どうしよ……。




===あとがき===


 誤字脱字や変な言葉、分かりにくい表現があったら教えてくださると助かります

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 なのでなにとぞ! なにとぞ......!

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