古代の魔術師の個人的な遺跡を荒らしてみた

XX

第1話 遺跡に挑戦しよう!

 突然、冒険者の酒場で。


「シン、明日遺跡を掘りに行こう」


 俺が彼女に……アキラにそう言われたのは、前のパーティーでメンバー間NTRが発生し、その結束が空中分解して3日後の事だった。


「えっと、今の状態で行くの?」


 たった2人しか居ないのに?

 無茶じゃない?


 そう思ったのだけれど。


 彼女は丸眼鏡の位置を直しながら


「大丈夫。多分大した遺跡じゃ無いし」


 そんなことを可愛い笑顔を浮かべて、嬉しそうに言った。

 その手に握った、黒い手帳を俺に示しながら。


 ……これは


 前のパーティーで遺跡掘りしたとき、戦利品で売りものにならないから捨てようかって言ってた品じゃん。




 遺跡。

 普通は昔の王朝のお墓を指す言葉なのだけど。

 俺たち遺跡掘りにとっては、意味合いが異なる。


 主に、超古代に存在した魔法王国時代。

 その時代に作られた、魔術師たちの自己顕示欲の塊だ。

 ダンジョン、とも呼ばれている。


 当時、現在の俺たちには理解し難いけど。

 様々な罠を張り巡らせ、魔物を配置し、その奥に莫大な財宝を眠らせて。

 そんな一生懸命作ったダンジョンを誰かに挑戦させ、これは攻略不能であると言わせることが一種のステータスになっていたらしい。


 魔法王国は遥か昔に滅んでしまったけど、未だにその自己顕示欲の産物は沢山世界に存在していて。


 俺とアキラは、そんな古代の魔術師の遺跡を専門に攻略する冒険者……遺跡掘りだった。




「これは魔術師サレオの手帳なんだよ」


 彼女はウキウキだった。

 ぴょんぴょん飛び回っている。


 ……この辺、彼女らしいとは思う。


 彼女は黒いお団子ヘアーの、小柄な女子なんだけど。

 その上コートやら何やらで厚着しているが、結構凹凸の激しいスタイルだ。


 そんな外見で……学者気質なんだよな。

 知りたがりというか。


 今、俺に見せて来た手帳も、なんなら自分の取り分を減らしていいから欲しいって言って手に入れた代物で。

 そんな彼女がここまで喜んでいるということは。


 相当面白いことが書かれていたんだろうな。


「サレオって言うと……」


「魔法王国時代に、生物混合魔法の神とまで呼ばれた魔術師だよ」


 目が輝いている。

 へぇ。


 それで、どうなんだ……?


 俺が目で促すと


「そのサレオの私物が入ってるかもしれない遺跡!」


 ……なるほど。


 古代魔術師の私物が収まってるかもしれない遺跡、か。


 金銀財宝は望めないかもしれないけど、確かに興味はあるかもしれない。

 それが彼女からの依頼である、ということが無かったとしても。


 だから俺は


「分かった……行くだけ行ってみようか」


 そう、答えたんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る