●REC『異世界ラブホテル探訪シリーズ』 ――我々はラブホテルを撮影すべく、異世界の奥地へ向かった――

七渕ハチ

【#000】『驚愕! 魔導書完備の巨大風呂! ルリドリア王国の貴族街に丸見えのラブホテルは実在した!』出演者:フェスナ・ユースディアル【女騎士】

――名前を聞かせてください。


「フェスナ・ユースディアルだ」


 男女の裸像が人目を引く噴水前のベンチに鎧を着込んだ女、フェスナが一人で座る。装飾にスカート風の布が用いられ瑠璃色の獅子が刺繍されていた。


 色味が薄い金髪を後ろで簡単にまとめている。ほどけば腰に届く長さなのが想像できた。


――お仕事は?


「ルリドリア王国の第三騎士団で団長を任されている。これでいいのか?」


――では行きましょう。


「先ほど言われた場所に向かうのだな」


 フェスナが立ち上がり広い道を歩いて行く。地面は石畳で整備され、馬車が走る中央と端の歩道とで意匠に違いがある。レンガ造りの建物は落ち着いた色合いで品を感じられた。


 街なかのひと気はまばらで馬車の方がまだ多い。坂に差しかかると鮮やかな赤茶色の屋根が目に入った。計画性が窺える整然さは権力の強さを印象付ける。


――人が少ないですね。


「王都の中でも、貴族街では特に喧噪が嫌われる。移動も馬車で歩いているのは使用人がほとんどだ」


 建物は何かしら店の機能を持つが看板を掲げておらず、一般人を相手に商売をする気がないのは明らかだった。


 しばらくして建物同士の間隔が空くと、色合いの洒落た小さな城の前でフェスナは立ち止まった。白と深い赤銅色が組み合わさる壁には円柱型の小塔が張り出し、尖塔もコンパクトにまとまる。高さは四階建て程度で贅を凝らすことに注力したのが伝わってきた。


「ここが王都のラブホテルだ」


 中に入るとエントランスホールが広がる。天井は高く青でライトアップされた小さな滝が出迎えた。黒い石材がシックな高級感を演出し、一階部分はロビーやフロントが占める。


――利用客が顔を合わせやすいのは気になりませんか?


「関係性のアピールが主な目的なのだから気にする者はいない」


 執事服の女スタッフが近くに来て頭を下げる。部屋までの案内を受けて階段を上がった。


 廊下に飾られた額縁へ、表紙に宝石が目立つ本が収まる。天井にはこぶし大の球体が支えなしに浮いており、控えめに周囲を照らす。部屋に着くと二人だけで室内に通された。


「紹介をするんだったな。まったく、妙なことをさせる」


 軽く三十畳を越える空間はシャンデリアで廊下と同様の明るさに保たれるが、撮影のために光量を上げる。


「まずは……このテーブルセットも必要なのか?」


 ソファーとテーブルはシンプルがゆえに質の高さが光った。


――テーブルに置かれた小さなベルはなんですか?


「使用人を呼ぶ以外にないと思うが」


――ベルの音が聞こえるのなら、行為中の声も聞こえますよね?


「大多数の貴族は喜んで聞かせるだろうな」


――あなたも貴族ですよ。


「私は古い仕来たりや慣習に縛られたくないと考えている。こっちに来てみろ」


 フェスナは掃き出し窓を開けてバルコニーに出る。隙間の多い手すりからは外の様子を見下ろせた。


「こういう場所でも平気で始める連中でな。喧噪が嫌われるとは言ったものの、こと行為に関しては寛容だ。もちろん、ラブホテルに限った話だが」


 部屋に戻り、ベッドを後回しに内装を見ていく。


「キャビネットに並ぶ酒類は自由に飲んで構わない。他にも、使用人に頼めば大抵のものは用意してもらえる」


 横のチェストにはバスローブやラフなルームウェア、タオル類が揃う。棚にも小さな瓶が色々と置かれていた。


 バルコニーの反対側には透明度が高いガラス張りの壁がある。部屋の半分ほどの大きさでも、異世界では非常に珍しい。


「部屋から丸見えの悪趣味な風呂場だ。大きな石をくりぬいた湯船は、そこらの貴族が持つには贅が過ぎる。二階に運ぶのは魔法でできても、正確な加工を行う場合は相当のスキルを要する。そんな魔法を使える者は引く手あまたで湯船を作る余裕はない。だからこそ石工師の領分で手間と時間がひたすらにかかってしまう」


 なるほどと声に出るのを我慢する。自分の主張は最小限にフェスナと風呂場をカメラに捉え続ける。


「これも貴族街特有の魔導書だ。高価ではあるが魔術師の人員さえ確保できれば作れる」


 廊下に飾っていた本と似たものが入口に置かれていた。


「お湯を満たす、泡の生成、七色に輝かせる、魔力で花を形作るといった効果を生じる。上下水道が広まって今なお使うのは得意な点だ」


 壁の隅に上手く嵌まる浴槽は黒い巨石で円形に穴が開く。魔導書を操作すると一瞬でお湯が満たされた。五人以上が快適に入れる広さでインパクトは大きい。


 最後は部屋のベッドでフェスナに座ってもらう。天蓋付きのキングサイズでカーテンが幾重にも重なる。ここには特殊な仕掛けなどもなくオーソドックスに近いため、撮れ高に若干の不安が残った。


――ラブホテルについて詳しいですね。


「人に聞いてきただけだ。恥ずかしい真似をさせるな」


――では身長とスリーサイズを教えてください。


「……身長は171だ。バストは94、ウェストが63、ヒップは89」


――鎧を着ていてよく分かりません。脱いでもらえますか?


「……」


 あくまで健全の範囲内を目指すがこれも闘いだ。鎧を着てベッドに座るのはおかしいですよね、と完璧な理論を盾に促した。


 フェスナは手慣れた様子で鎧を外していく。顔に浮かぶ羞恥を逃さずしっかり映像に収めた。


 鎧の下には腕を部分的に覆うインナーを着ている。首元の結び目をほどくと引き締まった生腕が露出する。脚部のインナーは簡単に外せるもので、鍛えられた生足がお目見えした。


 残ったのは上下一体の服で縫い目がニットのように入る。衝撃に対し吸収性があるのは生地と鎧下の役割で分かった。そして、脚の付け根に目を奪われる。明らかに角度が100度以下の鋭さで尊敬する攻めの姿勢だ。


――腕を上げて、その場で回ってください。


 安定感抜群の腰つきから上に視線が移る。肩が大胆に出ているのは腕のインナーとの兼ね合いか、肩甲骨までもが晒された。ラブホテルの紹介動画に活路を見出したが、やはり出演者は重要だった。


「それで、まだ何かやるのか?」


 少し挑戦的な言い方と表情に負けそうになるけど耐える。投稿チャンネルを死守すべくギリギリのラインに迫った。




●456件のコメント

@NonameUser

 ムチィ……


@NonameUser

 ムチチ…!


@NonameUser

 ムチィ! ムチチチ!


@NonameUser

 ムチ会話講座助かる


@byubyuZ◆

 ビュビュ!


@NonameUser

 女騎士ですか

 どことは言いませんが弱そうですね


@NonameUser

 尻○探検隊出動します!


@NonameUser

 尻○探検隊! 尻○探検隊!


@NonameUser

 アカン! 西川君が気絶してもうた!

 >1件の返信

  @NonameUser

   興奮しすぎや


@NonameUser

 好き


@KuruEnd◆

 相変わらず民度が終わってますね

 皆さん通報と低評価お願いします

 >2件の返信

  @NonameUser

   あんたに低評価だよ

  @NonameUser

   見にきた同類が何か言うとりますけども


@NonameUser

 これまた美人さん


@NonameUser

 結婚したい


@NonameUser

 いつ見ても独特な世界観ですよね


@NonameUser

 需要と供給の勝利


@NonameUser

 すまし顔がいい


@Pan2Daisuke◆

 パ○ツ見せて


@NonameUser

 挟みたい


@NonameUser

 いったいどこで撮ってるんだか


@NonameUser

 フェスナたん! おっきいね!


@PerorinChou◆

 ペロペロ!


@NonameUser

 やっぱ検索かけても出てこないんだよな

 どうやって見つけてるんだ

 >1件の返信

  @NonameUser

   S・AOYAの人脈にあやかりたいね


@NonameUser

 日本語堪能ってのがまた

 出会いたい

 切実に


@NonameUser

 デビューまだ?


@NonameUser

 オープンなラブホテルも意外とよさそう


@NonameUser

 魔導書とか設定凝ってる


@NonameUser

 貴族街のツアーを組んでほしい

 >1件の返信

  @NonameUser

   ラブホテルの下が観光スポットですね


@SoreDeath◆

 こういうのでいいんだよ


@NonameUser

 捗ります


@NonameUser

 エチチチチチ!


@NonameUser

 やれやれ

 僕はそう言ってズボンを脱いだ

 >1件の返信

  @NonameUser

   風邪引くぞ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る