無気力
私には変化があった。最近は頭の中で施術音が鳴り響いても、動じることが無くなってきたのだ。もっと厳密に言えば「感情の起伏が無くなってきた」という方が、しっくりくるのかもしれない。
「大丈夫?」
先生の優しい問いかけにも、少し前なら「はっ!」としていたはずだが、ゆっくりと目線を向けるに留まる私を見た彼女は、こう続けた。
「病院の方には私から連絡をいれてあるから、このまま病室に戻りましょう」
「…わかりました」
私は反抗する気力も無く、先生の提案をなすがまま受け入れる事に決めた。
最後の晩餐は大袈裟かもしれないが、もはやそんな気持ちだった。ここからは長い病院生活が始まる事を、私は悟っていたからである。
だからこそ、ハンバーグディナーセットとマッシュポテトをお腹いっぱいに満喫した。昔から美味しいものは大好きだ。そこに対する思いと、食事から得られるエネルギーは、いつだって私を支えてくれる。落ち込んでいる今でも、食事をしているときは割と「無」に、没頭することが可能だ。
鉄板に数粒残ったコーンとオニオンソースの破片すらも丁寧にこそげ取り、目をつむり噛み締めて食した。
さっきまで楽しそうに見えていた目の前の光景が、なんだか物悲く思えてくる。例えば、和気あいあいと食事をしていたカップルは、何か些細な喧嘩でもしたのだろうか。勘定を払った後、互いに目線を合わせず、無言で店を後にしていた。
周りの色が青白く思えた。
⬜️⬛️次章へ続く⬜️⬛️
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