(全11話)転生悪役令嬢はケツ末まで尻穴がもたない(かもしれない)
雲ノ須ないない(くものすないない)
第1話尻穴令嬢は便秘と下痢を繰り返す
あなたは毎日、健やかなバナナうんちをお出しになっていて?
失礼しましたわ。いきなり無粋な質問をして申し訳ないですわ。ですがわたくし、エリザベータ・アナールにとっては、とても大切な質問でしてよ。
わたくしには前世というものがある。令和という時代に日本という国で20数年生きた記憶だ。「私」はストレスを抱えやすい人間で、特にお腹の症状に出やすいタイプだった。学生時代、OL時代共にストレスで便秘と下痢を繰り返していた。1週間ぶりの硬いうんちを捻り出し、最終的には下痢になるルーティーン。当然尻穴は常にセンシティブな状態であった。
そんな私の尻穴が無事でいられたのは、ひとえにウォシュレットのおかげである。ウォシュレットがあったから私の尻穴は硬いうんちと下痢を繰り返しても、「ヒリヒリするなぁ」程度で済み、大事には至らなかったのだ。
そんな尻穴危機一髪を繰り返していた私だが、ある日の仕事の帰り道、突然の腹痛に襲われ、耐え切れず倒れたら車道に出てしまい、そのまま事故に遭ってしまったらしい。気づいた時にはこの世界で伯爵令嬢エリザベータ・アナールとして生まれ変わっていた。
意識がはっきりしてきたのは3歳頃だったが、両親曰く新生児の頃から便秘気味で医者のお世話になっていたらしい。そして6歳になった現在、すでにストレスで便秘と下痢を繰り返すようになってしまっていた。
わたくし、エリザベータがストレスを抱え込んだのには理由がある。この世界は私が前世でやっていた乙女ゲーム「その指先に甘い蜜」の世界に酷似しており、エリザベータ・アナールはヒロインのライバルとして立ちはだかる悪役令嬢であった。
この世界には魔法があり、魔法陣に魔力を注いで行使する。魔法陣がなければ魔力があっても何もできない。魔法陣があっても魔力が足りなければ発動しない。豊富な魔力は大抵遺伝であり、潤沢な魔力を持つ人間を保つためにこの世界には貴族制度が導入されていた。
前世に当てはまるなら、身の回りにある電子機器が魔法陣で、電力が魔力、というところだろうか。
伯爵令嬢として生を受けたエリザベータは、とても潤沢な魔力を持っていた。王太子妃にとも願われるような魔力を持っていたエリザベータは、それを上回る魔力のヒロインに嫉妬し、どのルートであろうと邪魔をする。というストーリーであった。
だがわたしが憤っているのは悪役令嬢の立ち位置ではない。この世界の文明の発達具合だ。具体的に言うと昭和初期くらいなのでは?と思っている。
お風呂はあるが、お湯が温まるまでには、発熱の魔法陣にしばらく魔力をこめなければならないし、40度ぴったりにする魔法陣がないので冷水と混ぜて使わなければならない。ここまでは使用人が用意するのだが、人によって温度がまちまちで、熱すぎる日もあれば、ぬるすぎる日もある。
もちろんスマホやパソコンなんてものはないから、世界のことを知るには書物を漁るしかなく、人とランチをする約束のやりとりだけでいちいち遣いをださなければならない。
もちのろんでウォシュレットなんてものは存在しない。
令和のスピード感、便利さを知っているエリザベータにとっては、あまりにストレスだった。母親がランチの約束のために人員を割いているだけで、イライラとしてお腹が痛くなってくる。チャットでやれ。
そんな訳でストレスがお腹に出やすいエリザベータは、6歳にして便秘と下痢を繰り返し、桃尻をヒリヒリさせることになったのである。
もし仮にヒロインが「毎日健やかにバナナうんち出してます」なんて言った暁には、平手打ちしていじめ抜くかもしれない程度にはストレスを抱えている。
以上がわたくし、エリザベータ・アナールの話だ。
次の更新予定
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