かぐや姫、真の相席茶屋マスターに弟子入りする
「え、今日も行くんですか?」
「当然でしょ。こういうのは場数が大切なのよ? 大丈夫。数をこなせば桜子もきっと男性と普通に話せるようになれるわ」
「……昨日の体たらくで、何でそこまで上から目線になれるのですか?」
そう言いつつ、ちゃんと出かける準備を始める桜子。
桜子は本当によくできた子だ。私はそんな彼女を責任を持って幸せにせねばと心に決めている。
そして今日も山を下り、相席茶屋へと向かう。
「あれ? かぐや様、あそこに居るのはユリネさんではないでしょうか?」
「あら、そうね。昨日、相席茶屋で一緒になったユリネさんだわ」
相席茶屋へと向かう途中、橋の上でぼーっと川を眺めるユリネさんが居た。
「ユリネさん、ごきげんよう。昨日ぶりですね」
「ああ、かぐや様。普段滅多に会えないかぐや様に2日連続で会えるのは何だか不思議な感じがしますね。もしかして、今日も相席茶屋ですか?」
ユリネさんもすぐに私に気付き、返事をしてくれた。
だが、昨日の印象と比べるとかなり落ち着いた雰囲気だ。もしかしたら、こちらが素なのかもしれない。
「そうですね。ユリネさんは今日は行かないのですか?」
「う~ん、正直今日は止めておいた方が良いですよ」
それから聞いた話は、まさに目からウロコのような話だった。
相席茶屋は日や時間帯によって集まる男性の質が違うらしく、そして今日はよくない日らしい。
ユリネさんは職業毎の勤務形態や懐事情などの情報を会話の中から収集し、茶屋に通いながら実データの統計を作り上げ、相席茶屋の効率的な活用法を編み出したそうだ。
正にユリネさんこそが相席茶屋マスターだった。
「……ユリネさん!」
「な、なんですか?」
「私を弟子にして下さい!」
「ふぇっ⁉ ちょっと待ってください。何でそんな話になるんですか⁉」
ユリネさんは突然の事に慌てふためいている様子だったが、それをチャンスだと思った私は更に畳みかける。
「ユリネさんは昨日の私をどう思われましたか?」
「……まぁ、正直、かなり酷かったですね」
「でしょう? 私は殿方と話すといつもああなってしまうのです」
「いつもあれって……それは相手の男性にも同情しますね」
何を想像したのか、ユリネさんは何やら渋い顔をした。
「だからお願い致します! 私、本当に切羽詰まっているのです!」
「……分かりました。ですが、条件が1つあります」
「条件?」
ユリネさんはそれまでの慌てぶりが嘘のように、真剣な顔つきで私を見つめる。
「良い男を紹介してください」
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