時代はそう【女狩人】
幾度となく失敗する縁談に、私は少々やり方を変える必要があるなと結論に行き着いた。
「そもそも私ってあまりナルシストが好きじゃないじゃないですか」
「いや、知らんけど」
「自分に自信があるのは良いんです。ですけど、それが行き過ぎてナルシストになっちゃ駄目なんですよ」
「恋愛は未経験なのに、男の好みはしっかりしているんだね」
確かに私は恋愛未経験者だが、だからこそ予習はしっかりしているのだ。
そう、私の部屋一杯にある恋愛小説により、私は恋愛未経験者にして既に恋のスペシャリストへと至っている。
「どこかに芯のある爽やかイケメンは居ないかしら。そう、小池〇平や藤木〇人の様な」
「誰だい、それは?」
「知りません。理想の爽やかイケメンを思い浮かべてみたらそんな名前がポンっと浮かんできました。もしかしたら此処とは違う世界には、そんな爽やかイケメンが居るのかもしれませんね」
「……何と言う事だ。婚活に失敗し続けた事で、理想と現実の境が分からなくなってしまったのか。婚活はそんなにもお前を追い詰めていたんだね……」
「マジトーンで嘆くのは止めて下さい。自分でもヤバいんじゃないかとちょっと不安になってしまいます」
「ちょっとなんだね……」
そう頭を抱えるお父様を無視して、私はこれからどうするかと打開策を考える。……そして聡明な頭は瞬時にその打開策を思い付いた。
「そうだわ! 桜子、ここへ!」
私は小間使いである桜子を呼び出した。
ちなみに桜子の賃金は私が払っており、実は私、自作の小説を売ったり偶に貴人を相手に寺子屋を開いたり、後は極偶に帝から呼ばれて国の政についてアドバイスを求められたりと結構高給取りなのだ。
「かぐや様、どうかされましたか?」
「桜子、私は気付いてしまったの」
「……何やら面倒そうなので私はこれで」
「待ちなさい! 雇われの身で、面倒だからと主人から逃げる者がいますか!」
私は逃げようとする桜子を引っ捕まえて話を続けた。
「女は清く正しく奥ゆかしく……そんな時代は、もう過去のものなのよ!」
「はあ、確かに昔かぐや様が書いた恋愛小説が流行り、男女意識に革命を起こして様々な物が様変わりしていきましたね」
「そう、私は生まれながらの革命児。そんな私が待ちの姿勢だったのがそもそもおかしかったの」
「えっと、それでかぐや様は何が言いたいんですか?」
「ふっふっふ。桜子、良い男を探しに相席茶屋へ行くわよ!」
そう、世は正に女狩人時代なのだ。
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