かぐや姫、スペック高すぎて婚活苦戦中!?
七瀬 莉々子
かぐや姫は婚活に苦戦中
これはとある日の出来事。
山奥に佇む一軒家にはそれは仲睦まじい夫婦が住んでいました。
その日、夫は竹を取りに竹藪へと入ると、金色に輝く一本の竹を見付けたのです。
(中略)
光り輝く竹より現れた女の子【かぐや】は、それはもう美しく聡明に育ち、巷ではそのあまりの美しさから【かぐや姫】と呼ばれるようになりました。
そして(かぐや視点では)平穏な日々を過ごしている中、とある満月の夜に空より天女が現れ、かぐや姫が実は月の国の姫であり、そして月の国への帰還を待ち望まれているという真実を知ったのです。
それを知ったかぐや姫は……。
「え、月の国って男が居ないの? じゃあ月に行く気は無いわ。だって私はお父様とお母様のように大恋愛の末、幸せな結婚をするつもりですもの」
天女の誘いを一切迷うことなく切り捨てました。
実はかぐや姫を拾った夫婦は身分違いの恋をし、駆け落ちの末この山奥で幸せな夫婦生活を営む者達だったのです。
日頃そんな夫婦の惚気話を聞いたり、仲の良い2人を見続け影響を受けて来たかぐや姫は、自分もそんな幸せな恋愛結婚をしたいと望んでいました。
そして地球に残る事を決めたかぐや姫は今……。
◆
「私は身の程知らずでした! 1から自分を鍛え直して来ます!」
そう言って男は部屋から飛び出していった。
「はぁ~、またですか。少しは根性のある男は居ないのかしら」
今しがた半泣きで出て行った男。彼は私に縁談を申し込んできた者達の内の1人だった。
自分で言うのも何なのだが、私は巷で国一番の美女と噂される程度には容姿に優れており、容姿だけでなくその中身も中々にハイスペックだ。
その為、噂を聞きつけた者達から縁談話が持ち込まれる事も多かった。
正直に言えば一人一人対応していくのは骨が折れるし、先ほどの男の様に情けない姿を晒して逃げ帰る者も多い。
だが、それでも私は縁談を無下に断る事はしない。何故ならば……私は幸せな恋と結婚がしたいのだ!
「かぐや、また相手を泣かせて追い払ったのかい?」
「お父様、それは心外です。私は一度たりとも追い払った事などありません」
「そうだね。殆どの者はお前との実力の差に慄き、自信を無くして逃げ帰っているだけだ。……けれど、お前のやり方に何の問題も無かったとも思っては無いんだろう?」
「ま、まぁ、確かにちょっとやり過ぎた事もありましたけど……」
私に縁談を持ちかけて来る者は、誰も彼も過剰な自信に満ち溢れる者達ばかりで、そしてそれと同時に他者を見下すような発言も多く、私はそういう部分を遠回しに改めさせようとしたことが……偶によくあった。
「以前、結婚したくば幻獣の皮衣や龍の玉を取って来いと言った挙句、そんなのは無理だと言う者達を尻目に『じゃあ、私が行ってくる』と言って幻獣や龍を捕まえて来た事があったね」
「あ、ありましたね、そんな事も。で、でもあれは彼らも悪かったのですよ! 自分なら私のどんな願いも叶えてみせると豪語し、縁談を申し込んで来た者同士が裏で何やら足の引っ張り合いまで始めていたんですから!」
「そうだね。確かに彼らにも悪い所はあった。だが、もっとやり方はあったんじゃないかい? ……それと、今でも偶に遊びに来る龍や幻獣をどうにか出来ないかな。突然の雷雲や眩い光で少々面倒なのだが」
「……何か一度のしたら懐かれちゃって。今度来たら、来る頻度を下げるように言っておきますね」
そんなこんなで高すぎる理想と自身のスペックによって婚活が難航中のかぐや姫。
この物語はそんな婚活に邁進するかぐや姫の物語である。
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