10日間の恋人

みこ

プロローグ

 私は、月に二人、恋人を採用する。


 月初の月曜日から十日間、つまり翌週の水曜日までに一人。

 第三週目の月曜日から十日間で、また一人。

 十日で一サイクル、水曜日の午後七時でもって、恋人関係は解消する。


 最大で一年に二十四人の計算だが、長期休暇等に関してはその時の気分に身を委ねた為、正確には数えていないが、そこまでの数はこなしていない事と思う。

 高校二年生の四月から始めた。全員の名前を憶えているかと言われると、自信はない。校内で擦れ違って、付き合った男かどうか分からない程酷い記憶力はしていないが、名前は、と問われると正直怪しい。大概が似たような名前だ。


 結城郁は現在、高校三年生になって一人目の恋人を募集している。

 春休みを挟んだ関係もあって、今回は月初からの関係開始は諦め、イレギュラーだが第四月曜日からの恋人を探している。

 

 恋人の決め方は、至って単純だ。

 郁の恋人になっても良いという相手を募集し、学年クラスと名前、一言メッセージを添えて、郁の下駄箱への投函を求めた。

 今のところ、相手に困った事はない。

 恋人との関係を解消した水曜日の翌日が、投函日と決まっている。郁のこの恋人の探し方は一年をかけて校内に周知されきった為、わざわざ広告を打たなくとも、自然とメッセージが集まるようになって久しい。


 郁は、下駄箱を開ける。

 下駄箱には、手のひら程の小さな箱を入れてある。そこに入っているメッセージを回収し、箱自体を回収する事で締め切った事を暗に伝える。

(一、二、三……)

 全部で、八通。毎回チャレンジしてくれる者もいれば、新しい名前もある。ちなみに、しつこく投函してくる者もあるにはあるが、一度付き合った者には二度目のチャンスを与えた事は今のところない。

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