離婚の奥義
天川裕司
離婚の奥義
タイトル:(仮)離婚の奥義
▼登場人物
●輪横時夫(わよこ ときお):男性。40歳。サラリーマン。実はかなりの浮気性。
●輪横(わよこ)ルリ子:女性。39歳。時夫の妻(のちに離婚)。結婚してから変わる。でも根は真面目。
●水木(みずき)レナ:女性。38歳。美女。佳奈恵が時夫に紹介する。時夫の新しい彼女。
●奥世佳奈恵(おくよ かなえ):女性。30~40代。時夫の理性と欲望から生まれた生霊。
▼場所設定
●時夫の自宅:都内にある一般的なアパートのイメージで。
●カクテルバー:都内にあるお洒落なカクテルバー。時夫と佳奈恵の行きつけ。
●ルリ子のアパート:離婚後に住む。こちらも一般的なアパートのイメージで。
●レナのアパート:初めから住んでいる都内にあるアパート。
▼アイテム
●Law of Alter Ego:これを飲むと特定の人との愛は結ばれるが、その特定の人を裏切った場合、悲惨な目に遭う事になる。
NAは輪横時夫でよろしくお願い致します。
イントロ〜
あなたはこれまでに、浮気した事がありますか?
もし結婚して浮気すればそれは不倫。
不倫は離婚を呼び、その人の中に分裂を呼ぶものです。
この意味がどういう意味なのか?
それを或る男性が披露してくれました。
メインシナリオ〜
ト書き〈家庭不和〉
時夫「わ、わかった!わかったからもうやめろ!」
ルリ子「冗談じゃないわ!アンタ浮気してたのね!私がこんなにアンタに尽くしてあげてんのに!!」
俺の名前は輪横時夫(わよこ ときお)。
今年で40歳になる妻帯者。
普通に都内で働くサラリーマン。
妻のルリ子とは数年前に結婚したのだが、
早くも離婚の危機が訪れていた。
理由は俺の浮気。
でも、俺が浮気心を湧かせたのには理由がある。
それは余りにもこいつが図々しくワンマンだからだ。
家に居ても1つも落ち着けるところがなく、
こいつはカカァ殿下を地(じ)で行く性格で、
そのくせ「尽くしてきた」なんて言ってるが全然そんな事はなく、
自分のしたい放題、家の中ではいつも俺が被害者だった。
何かにつけて俺に八つ当たり。
心の拠り所なんて1つもない。
だから俺から一方的に言わせれば妻のほうが悪いのだ!
それにこいつは俺が浮気者だなんて言うが、最後までは行ってない!
途中で引き返したんだ!
俺が稼いできた金はほとんど使い果たすし、
家計のやりくりはへたくそだし、
いやその前に主婦で居る自覚がこいつには全く無い。
ずっとガミガミ言われ続けてついに堪忍袋の緒が切れた。
でも、それでもやっぱり何も言えない。
俺はもともと腰が弱かったから。
ト書き〈カクテルバー〉
そんなある日。
俺はカクテルバーへ行った。いつもの行きつけの店。
そこで散々愚痴りながら飲んでいた時…
佳奈恵「フフ、こんばんは。お1人ですか?もしよければご一緒しません?」
と1人の女性が声をかけてきた。
彼女の名前は奥世佳奈恵(おくよ かなえ)さんと言い、
都内でメンタルコーチやライフヒーラーの仕事をしていたようで、
とても落ち着いていて俺を和ませた。
でも、かなり綺麗な人だったのだが恋愛感情は全く湧かなかった。
なんか不思議だったが、幼馴染のような感じがしてきて、
昔どこかで会った事のあるような気にさせられる。
そんなこんなで座談し、話はいつの間にか俺の悩み事に。
佳奈恵「まぁ、奥様と?」
時夫「ええ。もう離婚の危機ですよ」
俺は今の妻との関係を洗いざらい話していた。
確かに俺も浮気じみた事をして悪かったのだが、
でも彼女のほうが数倍悪い。
アイツがあんなだから俺は家に帰りたくなくなり、
つい別の女と飲みに行ってしまった。
それをアイツは浮気と勘違いし、
またガミガミガミガミ言ってきて、
挙句は家の物を俺に投げまくってくる始末。
ついその女に俺は心を寄せかけたが、
それでも本当に最後までは行ってない。
そんな事もこの時話したら…
佳奈恵「なるほどねぇ、あなたも大変ですね。それは世間一般では浮気とは言われないでしょう?たかが飲みに行っただけで」
時夫「そうでしょう??でも、あいつには通用しないんですよ。でもあんなに言われたら、つい僕も浮気したようなそんな気になっちゃって…」
それから暫く喋り、俺はついに決意してしまった。
時夫「…あの、僕、もう決めました。あいつとは別れます」
そうはっきり彼女に言ったのだ。
でも自信がない。
この状況で別れ話なんて切り出そうものなら、
あいつはきっと逆上して又なんやかんや言ってくる。
1度は包丁を持ち出して俺に突っかかろうとした事もあった。
確かに何をするかわからん怖さもあったが、
それでもあんな女とはもう一緒にやっていけない。
その事も話してみると…
佳奈恵「そうですか。あなたはお優しいんですね。分かりました。ここでこうしてお会いできたのも何かのご縁です。あなたが無事に離婚するのをお助けしましょう」
時夫「え?」
そう言って彼女は持っていたバッグの中から
1本の液体薬のような物を取り出し、
それを俺に勧めてこう言ってきた。
佳奈恵「これは『Law of Alter Ego』と言う特製の栄養ドリンクのようなもので、これを飲めばきっとあなたの心は強くなり、奥さんと無事に離婚する事ができるでしょう」
時夫「…は?」
佳奈恵「フフ、信じてみて下さい。必ずそうなりますから」
やっぱり彼女はどこか不思議な人だ。
他の人に言われたって信じない事でも、
彼女に言われると信じてしまう。
俺はその場でそのドリンクを一気に飲み干していた。
ト書き〈離婚する〉
時夫「お前とはもう離婚だ!2度と俺の前に姿を現すなぁ!!」
佳奈恵さんの言った事は本当だった。
自分でも驚く程の勇気が出てきて、
俺は本当にルリ子とスムーズに別れたのだ。
それどころかルリ子はいざ別れるとなると寂しくなったのか、
「離婚なんてしないでよぉ、考え直してよぉ」
と俺に訴えてくる始末。
でも、俺の心はもう変わらない。
これまでみたいな繰り返し、してたまるものか!
ト書き〈数日後〉
それから数日後。
俺はまた佳奈恵さんに会ったあのバーに来ていた。
実はその夜、別の女性を紹介してくれる事になっていたのだ。
実は俺の心にまだ少しルリ子への未練があったのを
佳奈恵さんは見透かしていた様子で、
その未練を断つ為に別の女性を紹介し、
その効果をもって力強く別れ話を切り出す。
これは彼女が提案してくれたもので、
俺も自分の事ながら「ぜひに!」と頼み込んでいた。
でも、もちろんその時は本気で付き合おうとは思わなかった。
ただ調子を合わせていただけのところもあったが、
いざ本当に紹介されると俺の心は一変してしまった。
レナ「これからもよろしくお願いします」
時夫「あ、よ、よろしく!」
紹介された女性の名前は水木レナ。
俺より2歳年下ながらまるで20代に見えるかのような若さで、
俺の心はもう万々歳!
しかも彼女はとても清楚で可憐で、あんなルリ子とは全く違う、
未来に幸せを運んできてくれるようなそんな人に見えていた。
ト書き〈更に数日後〉
それから更に数日後。
別れてからもルリ子からちょくちょくメールが入っていた。
まぁそれなりに寂しかったからだろうがあとの祭りだ。
そのあいだ俺はレナさんと仲睦まじい時間を過ごし、
結婚の約束までしていた。
(カクテルバー)
そうして婚約しながら過ごしていた時。
俺はまた1人であのバーへ来る事があった。
その時ちょうど佳奈恵さんも来ていたようで、
そこでばったり会った俺はレナさんを紹介してくれたお礼を兼ねて、
また彼女と暫く談笑していた。
そのとき佳奈恵さんは1つだけ、
俺に忠告めいた事をしてきた。
時夫「え?浮気?」
佳奈恵「ええ」
なんと彼女は幸せの絶頂にある俺に、
「浮気をするな」なんて言ってくる。
時夫「やだなぁ佳奈恵さんwこんな今の僕の状態で、浮気なんかする男いませんよ?そんな自分で自分の幸せを壊すような事なんて」
佳奈恵「いいえ。こんな時こそ心に油断ができて、男でも女でも変わらず、浮気心に花を咲かせようとしたりするものです。勝って兜の緒を締めよ…と言うあの言葉はこんな場合にも生きてくるんですよ」
時夫「えぇ?w」
佳奈恵「レナさんは私が紹介して差し上げました。ですから私にも、レナさんが幸せになる事への責任があります。ですからどうか今言った事を軽く受け止めないで、いつでも心の教訓にするように努めて下さい。良いですね?」
なんだかやたら真面目に言ってくるので又つい調子を合わせ…
時夫「はい分かりましたよ♪絶対、浮気なんかしないようにします♪ほんと、あんなレナさんのような素敵な人を紹介して頂いて有難うございます!」
と明るく笑顔で返しておいた。
ト書き〈トラブルからオチ〉
でもちょうどそんな時だった。
佳奈恵さんが言った通りの事が起きたのだ。
あれからルリ子はまだ相変わらず
ちょくちょく俺にメールしてくるようになっており、
俺も着信拒否やブロックはせずまま、
ルリ子の言葉をそのまま受け止めていた。
受け止めていたと言うより見ていたのだ。
そのメールの言葉からルリ子の今の生活背景が見え、
「あいつが今どんなに苦しんでいるか?」
「どんなに孤独の中であえいでいるか?」
それを見て楽しむ為に。
俺をあんな形で馬鹿にしたヤツ、邪険にしたヤツ。
そいつの末路がどんなものか…それを見る為に
あいつからのメールを受け取っていた。
でも、確かに初めはそうだったのだが、
それが段々変わって行ってしまったのだ。
あいつの「寄りを戻して欲しい」という言葉を何度も見る内に、
またアイツの事が何となく愛おしくなってきてしまい、
「1度ぐらい会ってやってもいいかな…」
みたいな邪(よこしま)な感情が湧いてしまった。
邪と言うのは、1度会ってあいつの体をまた味わいたい…
そんな背徳的な思いが沸いたから。
人間の屑なんて言う奴も確かに居るだろうが、
男なら大概似たようなモンだ。
こんな状況になれば、10人居れば7人がそうする。
そんな事を心の中で呟きながら俺は自分で自分の肩を押し、
ついにルリ子とまた会ってしまった。
(ホテル)
ルリ子「あたし寂しかったのよぉ!ごめんなさい!あたし、ほんと出来損ないの奥さんだったわ!ねぇ、できれば又やり直させて欲しいんだけど…ダメかな…」
まるで結婚前に戻ったようだ。
当然こいつにはまだレナの事は話していない。
話す必要もないと思っていたから。
俺はその姿勢を貫き、自分が全く1人身で居るように演じ、
「どうしよっかな」
と言った姿勢で、こいつが俺に尽くしてくるのを
また束の間の楽しみに変えていた。
それから数日間。
俺は本当に浮気をしたワケだ。
ルリ子とはホテルで会い、レナとは俺のアパートで会い、
お互いの愛を確かめ合った。
(オチ)
そしてある日の夜。
ルリ子といつものようにホテルで会い、
そのあと自宅でレナとまったり過ごそうとしていた俺の前に…
佳奈恵「こんばんは」
と佳奈恵がいきなり現れた。
時夫「うおわっ?!か…佳奈恵…さん!?」
本当に心底驚いた。
と言うより恐怖に近かった。
その通りは裏通りで、普段から人通りが少なく、
その夜は全く人の気配がしていなかったのだ。
なのにいきなり背後から彼女が現れ、
それから人の気配がしてきたので…
一瞬、彼女が幽霊のように見えてしまった。
佳奈恵「時夫さん。あなた、私との約束を破って、レナさんを不幸のどん底に落としてしまいましたね?元奥さんのルリ子さんと、今の彼女のレナさんと、2人交互に会っているんでしょ?」
時夫「え…え?」
「どうしてそれを?」と本気で思ったが、
不思議とその時の俺は言葉が出なかった。
佳奈恵「フフ、確か言っておいた筈ですね?『浮気だけはするな』と。やっぱり心に油断ができて、あなたも浮気の虜になってしまいましたか。全く馬鹿な男」
佳奈恵「あなたには、責任を取って頂きます」
そう言って彼女が右手を上げて指をパチンと鳴らした瞬間、
俺の意識は飛んでしまった。
ト書き〈その後〉
(ルリ子のアパート)
ルリ子「ふんふ〜ん♪フフ、またあの人と寄りを戻せるのかな?そうなれたら嬉しいな♪私もバカだったわ。結婚って女を変えるって言うけど、あんなふうに変わっちゃいけないわよね。もし彼がまた結婚してくれるって言ったら、今度はもっとちゃんとした良い奥さんにならなきゃ」
そう言いながらいつものように
ルリ子が自宅アパートに戻ってきた時、
ルリ子「ギ…ギャアアァアァ!!!」
思いきり叫んで部屋を飛び出した。
(レナのアパート)
そしてレナも同じようにアパートに戻ってきた時…
レナ「き、きゃあぁぁあぁ!!!」
とやっぱり叫んで部屋を出て行った。
ト書き〈ルリ子とレナのアパートを同時に眺めながら〉
佳奈恵「フフ、私は時夫の理性と欲望から生まれた生霊。理性からなる純粋な願いを叶えようとして現れたけど、やっぱり無理だったわね。時夫の欲望は凄まじかった。彼は自分を殊勝に語る癖があるけど、その本性は根っからの悪党だったのよ」
佳奈恵「あのままルリ子さんと別れて、レナさんと真っ当な生活を送ってれば、こんな事にはならなかったのにね…」
俺の体は右半身と左半身とに切り離されて、
右半身がルリ子の自宅、そして左半身がレナの自宅に
投げ捨てられるように置かれていたのだ。
2人が絶叫して部屋を飛び出すのも無理はない。
佳奈恵「…離婚って言うのはね、結婚を誓い合った時の自分をあとの自分から切り離す事でもあるのよ。あなたはそれを見事に表現したわけ。誰かの教訓になれば良いけどね…」
動画はこちら(^^♪
https://www.youtube.com/watch?v=UZyi-ToyDC8
離婚の奥義 天川裕司 @tenkawayuji
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