見上げてる

天川裕司

見上げてる

タイトル:見上げてる


私は何か、ずっと見上げてる。

うっすら空気の向こうに空があり、

黄色いような透き通るような、

そんな黄色白いの空気が

私の上を霞んでいる。


そして、忙しそうに歩く人の足。

私はこの人の足に憎しみを覚えた。


世界が終わっても、決して消えないほどの憎しみ。


その足の持ち主を、

ことごとく全部八つ裂きにしたいと思ったほど。


でも、私はただ見上げてる。

とにかく人の足がせわしなく、ずっと動き続ける。

私の横で動き続ける。私の上で動き続ける。


何をそんなに急いでいるの?

何かそんな急がなきゃならない用事でもあるの。

明日なくなる命でもないのでしょうに、

そんなに忙しく歩き回るなんて…


横にある自分の手を、体の上に置いてみた。

するとぬるっとした感じがする。

やられたんだね。


小さく、宇宙ほどの大きなため息を吐き、

私はだんだんうつろになっていった。


周りをせわしなく歩き回る

その足の上の方を見ると、

やっぱりみんな銃を構えてる。


これから生きてく人、大変だね。

いずれはどこかで、どんな形かで

私みたいに成るこの人たちだと言うのに。


感覚でわかったこと。

私の顔から少し向こうに、金色と黒が混ざった

銃弾が落ちている。


まるで幽体離脱か何かして、

それを見たのだろうか。

でも私はここに居る。この体の中にまだ居る。

それを知ってる人も、もう居ないのか。

少なくともこの周りには。


そしてその忙しそうな人たちは

もう私に用がなくなったのか、

私の近くに来る人は誰も居ない。


ハイエナだって死肉に群がると言うのに、

それ以下なのか。

いや、知的生命体だからこそ、

こうなるんだろうか。利用価値を求めて。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=tHMJq9VPEE4

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

見上げてる 天川裕司 @tenkawayuji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ