06
翌日。冗談抜きで一睡もできなかったわたしは、目をこすりながら朝食を取る仲間の元へと合流した。わたしとリリリュビさん以外は全員いる。……当然、マグトラルド様も。
彼がいる現実にくらくらするのは、寝不足が原因なだけじゃないだろう。
朝方になって、少しでも寝ないとやばい、さすがに少し眠くなってきたかも、と思っていたはずなのに、結局寝ることができなくて、わたしはそのまま支度をしてきたのだ。
今更、すぐにでも寝られるのではと思うほどの眠気がやってきた。
よっぽど酷い顔だったのか、ザフィールが心配そうに声をかけてくる。
「……生きてっか?」
「生きてる……」
眠いだけなんだけど、そんなに生死を問われるような顔してる?
「リリリュビさんは?」
わたしは聞きながら、皆が座っている食堂のテーブルに着く。てっきり、わたしだけが出遅れたとばかり思っていたのだけど。
わたしが席に座ると、すぐに食堂のウエイトレスが注文を聞きに来てくれた。
朝食付きの宿で、朝食はよっぽどの量を頼まなければ、宿泊費用に含まれているから、ある程度は金額を気にせず頼んでも問題ないのだが、食欲がなくて、適当にパンと牛乳だけを頼む。
頼んだものがものだから、あっという間に運ばれてくる。
「リリちゃんなら、『普段とは違うタイプの依頼受けてくる!』ってウキウキしながら冒険者ギルドに行ったよ。マグくんが入ったのがうれしくて、私たちの食事が終わるのが、待ちきれなかったんでしょうねえ」
わたしの質問に答えたのは、正面に座るザフィールではなく、隣に座ったマルコラさんだった。
普段とは違うタイプの依頼、かあ……。
罠の解除や発見物の価値を見極める鑑定士、守護魔法での回復役と攻撃魔法メインの魔法攻(まほうこう)という後方支援が二人。それから、弓をメインに遠隔攻撃をする投擲(とうてき)者。
うちのパーティーはいかにも支援タイプの寄せ集めみたいな冒険者パーティーだ。
リリリュビさん、さすがにもう少しバランスを考えた方が――いや、考えた結果が、マグラルド様なのか。
いつもなら、敵に見つかる前にいかに目的のものを手に入れるか、みたいなスタイルだけど、マグラルド様が入ったのなら、冒険者パーティーの花形とも言えるような討伐系の依頼も受けられるように――……。
ここまで思考を巡らせて、ようやくふと、眠気に支配された脳がマルコラさんの『マグくん』という呼び名を認識した。
今、この人、マグラルド様のこと、マグくん、とか言った……?
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