貴方が探している聖女はボク(わたし)ですけど!
ゴルゴンゾーラ三国
01
さらさらの金髪に宝石のような緑の瞳。顔立ちは鋭さを感じ、どことなく厳しい印象を与えるものの恐ろしいほどまでに整っていて、体つきも鍛えられたのが服の上からでもよく分かるほど。
嫌というほど見覚えのあるその一人の男を、わたしが所属している冒険者パーティーのリーダー、リリリュビさんが連れてきたとき、わたしの頭は真っ白になった。
「はい、今日からうちのパーティーに入ってくれる子です。仲良くしてね」
まるで編入生を紹介する勉学院教員のような口調のリリリュビさん。彼女の言葉を聞くと、その男は、律義に頭を下げた。
「紹介にあずかったマグラルドだ。剣の腕には覚えがある。よろしく頼む」
「いやー、貴重な戦力だよぉ。うちのパーティー、物理的な接近戦できる子、いないから。頑張って!」
うきうきと楽しそうに話すリリリュビさんに、わたしは、この男は嫌だ、と声を上げることができなかった。実際、わたしたちのパーティーには物理攻撃を得意とする人はおらず、近接戦が弱点で、受ける依頼に偏りがあったのは事実。それをどうにかしたい、と以前からリリリュビさんが思っているのをわたしは知っている。
いや、わたしだけではなく、パーティーメンバーの全員が知っているし、同じようにパーティーの欠点を補いたいと思っていたはずだ。
だから、ここでわたしが、この男の加入に反対してしまったら非常に不自然で――わたしの隠している過去も、多少なりともバレてしまう。
それに、この男――マグラルド『様』がここにいて冒険者パーティーに加入するなんて、本当はあり得ない。彼も彼で、その身分を隠したいに違いない。
――隣国・シュダネラル王国の第三王子という身分を。
「――……初め、まして。『ボク』はディアン。守護魔法が得意で、後方で回復する役。よろしくね」
わたしはマグラルド様に握手のために手を差し出した。彼にわたしのことがバレないか緊張して、じっとりと手汗が滲んでいる気がする。
少年を装い、他人を騙すことをもう二年もやっているが、流石に知り合い相手では騙しとおせるか緊張してしまう。変声の魔法をかけているし、見た目もがらっと変えたから、そう簡単に気が付かれるわけがない、と分かっていても、ドキドキする。
けれど、マグラルド様は何も気が付かない様子で、ためらいなくわたしの手を取った。
「ああ、よろしく頼む」
マグラルド様の手のひらの皮は硬く、ずっと剣を振るために努力してきた人の手だった。
その手から伝わる体温を感じながら、そういえば、かつてのわたしはこの人の婚約者だったにも関わらず、今、初めて手を繋いだな、と、思った。
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