夏物語
不良神 神耶
第1話
『お願いします、どうか……どうか妹を……』
頭の中に流れ込んで来る声に目を覚ます。
気持ちよく眠っていた所を起こされて、少々不機嫌ながらもいつもの事だと、俺はまた眠りに就こうとした。
『お願いします……神様……お願いします……』
だが、いつもはすぐに止むその声が、今に限って止みそうにない。
――“ピキッ”
「だぁぁぁぁ~~~! っっうるせぇぇぇ~~~~~~~~!!」
遂に絶えきれなくなった俺は、大声をあげて立ち上がる。
足音荒く、声の主へと大股で近づいて行った。
「誰だ?!こんな朝早くから、いつまでも俺に願掛けしてくる奴はっ!!」
そう怒鳴りながら、俺は“そいつ”と俺の間を遮っていた扉を勢いよく開け放つ。
その瞬間、永遠と俺の頭に流れ込んで来た声も同時にピタリと止んだ。
声の主であろう人間――学ランに身を包み、まだ幼さの残る少年はその場に尻餅をつき、怯えた瞳を空に泳がせながら「でたーーー!!!」と大声で叫ぶと一目散に逃げ出して行く。
その姿はまさに滑稽。
俺は、そんな愚かな人間を嘲笑う。
「へん、バーカ! んなに怖がるんだったら願掛けになんか来てんじゃねぇよ! 来たって、てめぇ等人間の願いなんざ誰が叶えてやるもんか!」
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