マーカーを重ね塗れ、同じ席同じ教室で

海咲雪

プロローグ

 小学生の頃、ランドセルは赤だった。クラスでピンクのランドセルの子が一人だけいて、ずっと羨ましかった。

 幼い頃は、「一人だけ」ってとても特別に感じたの。

 そんな気持ちすら薄れ、多数派で当たり前に生きるようになった高校生はあまりに「普通」だった。それでも、そんな生活に慣れていた。当たり前だと思っていた。



 高校二年生の秋前までは。



 高校の帰り道、交通事故にあった。後遺症も残らず、命も、意識もあった。



 足りなかったのは、出席日数だけ。



 リハビリを終えてクラスに戻った時には三月で、私はもう一度、高校二年生になった。



 今までの同級生を先輩に変えて。そして、今までの後輩は同級生に変えて。あまりに突然の「一人だけ」。

 もう「一人だけ」を羨ましいとすら、思っていなかったのに。


 神様、何故ですか?


 何故、私なのですか?


 何故、私が「一人だけ」なのですか?

 


 残酷なことに、出席番号順では一年前と同じ席。



 同じ席、同じ教室で、今日も私はすでにマーカーのひかれた教科書に線を重ねる。

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