第20話 オーク王 前編
アキラは飛び起きると、頭の中で響く「ログイン音」を聞きながら、新たなスキルを取ることを決めた。
「鑑定魔法は、敵のHPやMPを確認できるスキルです。強敵との戦闘には必須ですよ。」
ラピスのアドバイスを受け、アキラは迷うことなく取得を決めた。
次に、アキラは倉庫で報酬を受け取った。新人冒険者応援報酬として、MPポーション6本とRPポーション9本を手に入れた。
「セレナたちと別行動することがあるだろうから、ポーションを渡しておけばよかったか…」アキラは少し後悔しながら考えた。
着替えを済ませ、アキラはマップ機能で2人の位置を確認する。赤く表示される2つの大魔物の反応と、その近くにある白い点――セレナの位置が同じ場所にあった。
「ラピさん、セレナはもう交戦しているのか?」
「はい、先ほど始まりました。」
アキラは急いで交戦地点に向かった。小屋から川沿いの森まで続く橋は落ちており、アキラは川を泳いで渡ることになった。
セレナたちは、森に足を踏み入れる前から近くに大きなオークが2匹いることに気づいていた。鋭敏な嗅覚と聴覚、そして第六感が、敵の存在を察知させた。
そのオークたちは通常の種よりも上位に属する個体で、その姿からも並外れた力を持っていることが伺えた。
しかし、セレナたちは慎重だった。匂いを撒いてオークたちを巧みに誘導し、先制攻撃を狙った。
「いざとなれば、すぐに撤退する」――アキラの言葉を思い出し、セレナは冷静に行動を進める。
目の前には2匹の巨大なオーク。特に1匹は異様に大きく、厚い皮膚と圧倒的な力を持っている。だが、その巨体ゆえに動きは鈍い。
セレナはその弱点を見抜き、一方的に攻撃できると判断した。
セレナとルナは、それぞれのオークに対峙し、死角から絶妙なタイミングで攻撃を加えていく。
「喰らえ!」セレナは大きなオークの背中に強力な一撃を叩き込んだ。オークが振り向く前に素早く位置を変え、再び背後から攻撃を仕掛ける。
「ワオーン!」ルナもまた、小さなオークに素早く飛び掛かり、棍棒を避けつつ足を削るように攻撃する。
二人の連携は見事で、オークたちは徐々に追い詰められていった。しかし、突然オークたちはセルフヒールを発動させた。
傷口が瞬く間に癒され、元の状態に戻っていく。それを目の当たりにしたセレナは、一瞬驚愕したが、すぐに気を引き締めた。
※
「オークが治癒を使うなんて…!」セレナは驚愕した。セルフヒールによって、これまでの攻撃の成果が無に帰す。しかし、彼女は決して諦めない。
セレナは必殺の「雷撃」を放ったが、2匹のオークは体を光らせて魔法防御を発動した。
「防御魔法まで使うなんて…なんて手強い…くそ!」セレナはもう一度「雷撃」を放とうとしたが、その瞬間、剣が耐えきれずに砕け、爆発的な勢いで吹き飛んだ。
「うぁぁぁ!」剣の暴発により、セレナは強烈な衝撃を受け、地面を転がり、大木に激しくぶつかって意識を失った。
ルナはすぐに小オークとの戦いを中断し、セレナのもとへ駆け寄った。その瞬間、オークたちは好機と見て突進を始める。巨体が地を揺るがしながら迫ってくる。
「キャイーン!」最初の小オークの一撃を、小狼ルナは咄嗟に盾となって受け止めた。お腹を激しく殴られ、ルナは宙を舞い、地面に落ちたが、何とか体勢を整えた。
しかし、足が地面に触れた途端、そのまま倒れ込んでしまう。
「ルナ、大丈夫!?」セレナはルナの苦痛の叫びに目を覚ます。その瞬間、大オークの棍棒が迫るのを感じ、彼女は間一髪で転がってかわした。
だが、すでに2匹のオークに囲まれていた。「逃げる…!」セレナは瞬時に判断し、素早く魔物たちの間をすり抜け、ルナを抱きかかえると森へと逃げ込む。
「おおおおおおおおおお!」オークキングの凶悪な咆哮が森中に響き渡り、その力で大地が震える。
棍棒が振り下ろされるたび、木々が無惨に倒れ、森が崩壊していく。
セレナは倒れる木々を避けたものの、服が枝に引っかかり、肌にかすり傷を負い、血が流れる。
彼女は動けなくなり、ナイフすら持たないまま、迫るオークたちにじりじりと追い詰められていく。
その時、アキラが戦場に現れ、すぐに状況を見極める。セレナが無言の合図で「手を出すな」と伝えたため、アキラはその場にとどまり、鑑定スキルでオークたちのステータスを確認した。
彼らのスキルは非常に強力で、隙がない。慎重に行動しなければならないと判断したアキラは、その場を見守った。
オークキング:HP↑260/320 MP 50/80 (魔法防壁、事前治癒、狂気の力)
オークナイト:HP↑152/192 MP 38/48 (魔法防壁、自然治癒)
セレナが窮地に陥るのを目にしたアキラは、隠れていた木陰から飛び出し、即座に呪文を唱えた。
「ファイヤーボール!」両手に炎を纏わせ、2匹のオークに向けて炎弾を放つ。巨体のため命中を確信していたが、その圧倒的な威圧感に、思わず恐怖がこみ上げた。
オークたちは瞬時に魔法防壁を展開し、炎の威力を弱める。その光景に、アキラは前回のキラービークイーンとの戦いを思い出した。
あの時、無駄なMP消費で追い込まれた経験から、リソース管理の重要性を痛感していた。今回は冷静に戦うべきだと、アキラは静かに決意した。
セレナの元に駆け寄ったアキラは、彼女がぐったりした小狼を不安げに見つめているのを確認する。
「大丈夫か?」と声をかけ、ナイフを差し出した。
「ありがとう。でも、ルナが……」セレナは震えながら、小狼を見つめて呟く。
アキラはリカバリーポーションを倉庫から取り出し、セレナに渡す。
「これを使え。」セレナは受け取ると、ポーションをルナに口移しで飲ませた。
その間、オークたちは距離を保ちながら、新参者の動きを慎重に探っている。そして突然、足元の倒木を掴み、アキラたちに向かって投げつけてきた。
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