第28話 情報求む
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「ハンドリー、あとでギルドの担当者を連れて行くようないい店を教えてくれ。あんたなら良く知っているだろう? 軍資金ならある」
「任せとけ」
「まさかうちのヘレンを連れ出そうっていうのかい?」
ニヤニヤとケイトリンが絡んできた。
「ヘレンが新しい担当者ができたって喜んでたぞ。ここ何日か機嫌がいい。まさかお前みたいな問題児だとは思わなかったが」
俺はケイトリンを睨みつけた。
「あんたには言っときたいことがあったんだ」
俺は少し怒った声を出した。
俺の怒りが伝わったのかケイトリンは居住まいを正した。
「何だ?」
「ヘレンのことだよ。あんたがヘレンを呼んだんだってな。あんな真面目っ子に仕事も与えず一年余りも窓口に座ったままにさせておくなんて拷問だろう。どういう了見だ?」
ケイトリンは泣きださんばかりに顏を歪めた。
「それについてはヘレンには本当に申し訳ないことをしたと思っている。もともとヘレンには二人目のサブギルドマスターを頼んだんだ。うちのサブマスは職人気質で解体所に入り浸りだからな。けれども、まじめなヘレンは基本的なことを知りたいからまず窓口をやらせてくれといって窓口に座った。若い探索者は皆弱く見えるのだろうな。報酬よりも安全側に偏った依頼ばかり紹介して探索者から敬遠されてしまった。探索者に敬遠された職員にサブマスターを任せるわけにもいかず、かといって計算も書類仕事もからっきしでな。窓口から素行の悪い探索者に睨みを利かせてもらうしかなくなっていた」
「体格から見てわかるが現役時代のヘレンは恐らく脳筋系の前衛職だったんだろう? 最初から窓口も書類も計算も向いていないんじゃないか。サブマスみたいな政治的な判断が必要な役職はなおさら無理だろう。初めて話をした時、不甲斐なさに悩んでたよ。自分以外の他の担当者を紹介するとまで言っていた。そろそろクビになると思っていたようだ」
ケイトリンは頭を大きく左右に振った。
「馬鹿だね。放り出すわけがないじゃないか」と小さく呟く。
「ヘレンは引退の理由が良くなかったからね。どこかで燻ぶられて身を持ち崩されてはいけないと思ったんだ。サブマスは難しくても手元に置いておき折を見て現役に復帰させられないかと思っていた」
「現役復帰は難しいだろう。足を引き摺ってるぜ」
「心理的なものだ。実際、後遺症は何もないはずだ。ヘレンから現役時代の話は聞いていないのかい?」
俺は首を横に振った。
「人の過去を詮索する趣味はない。自分の過去を吹聴する趣味もない」
ケイトリンとハンドリーは一瞬、目と目を交わし合った。こいつら、俺の過去を詮索しようとでもしていたか?
「探索者としては当然の気構えだね。あんたが異例のCランク昇格を果たしたことで恐らくあんたに近づこうとする探索者が増えるだろう。ギルドの担当者も同じで自分に担当を任せないかと誘って来る職員が恐らく出るだろう。できればあんたにはギルドの担当者を変えるなんて言い出さないでもらえるとありがたい」
俺は鼻で笑った。
「もともとそのつもりだ。騎士団長には俺の窓口はヘレンだと伝えてある」
「なら良かったよ。あの娘の担当する探索者のランクが上がったのは、あんたが初めてのはずだ」
「そりゃ光栄だ」
ケイトリンは突然真面目な顔になった。
「騎士団から連絡が来る予定があるのかい?」
「ない。だが自分たちで何とかできなかったら『石化』の『解除』を頼んでくるだろう。その時は俺宛に個人依頼しろと言っておいた」
「なるほど」
ヘレンが帰って来た。
「ご確認ください」
ヘレンは俺に探索者タグを手渡した。
Fランクと刻字されていた部分がCランクに変わっている。
「間違いない」
俺はタグを首にかけた。
ケイトリンが一転してニヤニヤとしながらヘレンに訊いた。
「どうだ? 初めての担当探索者のランクアップは? うまくできたか?」
「はい。大丈夫だと思います」
「これでギンはヘレンの初めての男だな」
親父か!
俺より、おっさんなケイトリンの言葉に、いい歳をしてヘレンは真っ赤になった。
「お祝いにギンがヘレンに何かうまいものを食わせたいそうだ。ギルドを通さない稼ぎの世話などいくらしたところでヘレンには実入りがないからな。ギルド職員らしく担当探索者の接待を受けてこい。食いたいものがあるならリクエストするといい。金には困ってないようだからな」
駄目だろう。ギルドマスターからそんな話をされたらヘレンが断れなくなってしまう。セクハラの上にパワハラだ。馬鹿上司め。
「いや、べつに食事に限る必要はないんだが」
「食事がいいです」
ヘレンは力強く断言した。
あ、そう。
ハンドリー、情報求む。
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「クビになった万年Fランク探索者。愛剣が『-3』呪剣でした。折れた途端無双です。」
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でも参加しております。
よろしかったらそちらも読んでいただけるとありがたいです。
よろしくお願いします。
仁渓拝
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