第46話 今日は闇魔法の特訓です!

 朝食後、アンヌさんがしれっと食堂から出て行った。


「ええっとナンスィーさん、今日の僕はこの後」

「魔法の特訓ですね、特に使えるようになったはずの闇魔法を!」

「いいのかな使って」「王都では、人前では使わないで下さい!」


 特訓用に軽く着替えようとしたが、

 なかなか良いのが無いので一旦、転移で街の屋敷へ。


(着替えも、もっと持って来ないとな)


 とはいえ実質、繋がっているんだから着替えだけこっちでもいいか。


「おはよー」「今日も来たぜ」「ダル、お邪魔するぞー!」


 あれ、今日も来ちゃった、僕の友達三人組。


「今日はタマラさんお休みって……あっ」

「お待ちしておりました、さあ、こちらへ」


 アンナさんがご案内している、

 うん、こちらのお胸もアレだからね、

 タマラさんには一歩、いや半歩劣るがそれでも十分すぎるボリュームだ。


(三人とも大丈夫か? 相手は魔神だぞ)


 本当はナンスィーさんに着替えさせて貰う所なんだけど、

 とりあえず最初くらいは付き合うか、と居間へと行く。


「なあ、ひょっとして三人とも、毎日来るつもりか?」

「もちろん! 学院に行ったら会えないだろ?」

「呼ばれれば行くけどな」「ダル、その時は馬車の賃金よろしく」


 なんだかんだ言って、

 王都見学したいだけだろうという。


(でも嬉しいな、やっぱり友達だ)


「あっ、忙しいなら放っておいて良いぞ」

「そうそう、アンナさんとお話しているからさ」

「それでダル、アンナさんとは」「ノーコメントで!」


 余計な事を言わされそうだ。


「……それより今日は、御主人様の事を詳しくお聞かせ願えますか」

「いいよ、例の噴水事件とか」「あれはわざとじゃないから!!」

「でもすぐ止めなかったよな」「止め方がわからなかっただけだって」「ダル、素直になれよ」


 いや、決してわざと女子をビショ濡れにした訳じゃ!

 透けてたのもわざとじゃ、あれは事故なんだってばーー!!


「ダルマシオ様、そろそろ」

「あっナンスィーさん、そうだね、じゃ」

「私もお手伝い致しますね」


 遅れてサエラスさんもやってきた。


「じゃ、俺は所用あってこっそり出るけど、変な事は言わないで!」

「ああ、頑張ってきてくれ」「気を使わないで良いぞ!」「ダル、安心しろ、アンナさんは任せてくれ」


 ……まあいいや、後で言い訳しておこう。


(ひょっとして昨日、タマラさんにもあの事件を話しちゃったんじゃあ?!)


 という感じでさっさと着替え、

 談笑しているのを横目に二階の転移魔方陣へ、

 ってサエラスさんは残るのか、そしてナンスィーさんと村の屋敷へ。


「おかえりなさいませ」


 こっちはこっちでカタリヌさんが待っていた、

 いや家から家へ移動したのにおかえりって、

 まあ実情、こっちが本拠地というか棲家になってるからね。


(さて、魔法の特訓だ)


 行くとこっちの村長さん、

 グザヴィエさんが誰かと一緒に待っていた。


「お待ちしておりました、こちら闇魔法使いのテネブルです」

「……ほう、ダルマシオ様、なかなかの闇魔力を」

「ええっと、実はユピアーナ様にいただきました」「ほうほう」


 このお爺さんアレかな、

 四人の解呪できる闇魔法使いとかいうの、

 アイテム袋の方だっけ、両方って可能性もあるな。


「ダルマシオです、テネブルさんは生まれも育ちもこちらで?」

「いえ、かつてあった他所の村で、この地方ではありますが」

「あっ、まとめたんでしたっけ」「それもありますが婿入りを、悪い魔女に引っかかりまして」


 詳しく聞きたいけどまあいいや、

 今は僕の魔法訓練だ、闇魔法でいいんだよね?


「ええっと、一応は杖を持ってきました」

「それは光魔法用ですな、こちらをそうぞ」

「あっはい、ってこれ重い! 黒い水晶、ですか?!」


 うん、闇の魔力が凄そうだ。


「ブラッククリスタルスタッフ、あまり人前では見せないよう」

「だね、ていうか落としたら折れそう、いや割れそう」

「意外と丈夫ですが、気を付けるに超した事はありませぬ」


 持って構える、

 ターゲットは……あ、ダークネスドラゴンだ。


「ドラエーさん、受けてくれるの?」

「グエッ!」

「並の闇魔法なら吸収してくれるでしょう」


 ちょっと心が痛いな、まあいいか。


「ではぁ~、ごしどぉ~おねがいしますねぇ~~」

「あっ、ナンスィーちゃん行っちゃうんだ」


 眼鏡も外してるし!

 切れたのかな、燃料が。 真面目モードの。


「何かありましたら私が回復魔法を」

「うんカタリヌさん、お願い」

「ではよろしいですかな、まずは初歩闇魔法『ダーク』を」


 こうしてテネブルさんに指導を受けたのであった。


(王都で襲われた時、これで目眩ましにして逃げられるようにはしよう)


 闇魔法が使えるのをバレるのは不味いから、

 あくまで最終手段とか、命の危険を感じたらコレだな。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 一方、街の屋敷では……


「そんな訳でダル君のおかげで男子全員、良い物が見れたっていう訳なんだ」

「……なるほど、御主人様は『透け透け』が好きなのですね」

「嫌いではないと思う、というか嫌いな男の方が少ない、あっナンスィーさん!」


 ふらふらしながら少し離れたソファーに横になる。


「きゅ~~け~~~ですぅ~~」

「眼鏡は」「きゅ~~け~~なのでぇ~~」

「ふにゃふにゃしてる」「ダルはこういうのも好きなのか」


 と、そこへ入って来たのは……!!


「失礼、私も話を聞きに来た」

「あっ、アンヌさんだっけ?」

「さっきの話、聞かせたかったなー」「あとダルの話と言えば……」


 アンヌが会話している間に動きが止まるアンナ。

 気怠い表情で見ながら、こっそり闇魔法で協力するナンスィー。


(バレないよぉ~にぃ~~、ダルちゃまのご友人でぇ~、れんしゅ~~ですぅ~~~)


 そんな事も知らず話を続ける友人のカイル、ディラン、ロジャー。

 その目は張りの良い、全体が大きいためそこまでの突出は感じないものの、

 女性として十分過ぎる程に魅力のある胸へと向けられていたのであった。


「そうなのか、ご主人様がそんな技を」

「あれは技というよりダルのかくし芸だな!」

「なるほどなるほど、アンナはどう思う」「……ちょっと見たい」


 ユピアーナ様もユピアーナ様で、

 一人二役の特訓を進めているのであった。


(王都へ行くまでに、二人の会話を違和感の無いものにしないとな)


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「ふう、闇魔法は意外と魔力が切れませんね」

「やはりそれは、この土地のおかげかと」

「じゃあ王都へ行ったら」「すぐ切れるかも知れませぬ」


 魔力の消費量を何とかしないと、かぁ。


「わかりました、やっぱり回数をこなす事が大切ですか」

「そうえす、では続いて『ダークトルネード』の魔法を」

「またそんな魔力が多そうな」「まずはお手本をお見せ致しましょう」


 こうして僕は、

 着実に魔法を憶えて行くのであった。


(見たらびっくりするだろうなぁ、ワンディちゃん……)


 一度、姉上の所へ手紙出そうかな、

 まだ前の返事が来ていないけど……もうそろそろ、届く、はずっ!

 何せ、一応の婚約者メイドだからねっっ!!

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