第34話 お風呂で母娘に面倒見て貰う!
「失礼致しますわ」
「し、ししし失礼致します……」
村の屋敷に戻って夕食が終わりお風呂タイム、
一昨日がカタリヌさんサエラスさん、
昨日がドリーちゃんタマラさんに洗って貰い今日は誰かと思いきや……
(まさかのブランカちゃんとその母、クライスさんだ)
「ええっと、ブランカちゃん、いいの?」
「は、はいっ、今日は母が一緒、ですからっ」
「いや体調」「あっ、その、頑張って慣れますっ!!」
ダクスヌールの街で無理だったら、
王都へだなんて夢のまた夢だと思う。
「クライスさん、今日は馬車の操縦、ありがとうございました」
「いえ、本当に便利ですねあの転移魔方陣というのは」
「こうしてすぐに戻ってこれますからね、逆にあっちへ行くのも」
という当たり障りの無い会話、
ブランカちゃんは僕の頭や背中といった無難な所を洗ってくれている、
その分、母親のクライスさんはその、なんというか、際どい部分を攻める攻める。
(時折めっちゃくすぐったい!)
実の母が僕の事をちゃんと面倒見てくれていたら、
こんな感じだったのだろうか、まあ母上は父上が全てだから。
「ほらブランカ、きちんと腋や顎も」
「はいお母様」「首筋は念入りにね」
「ブランカちゃん、遠慮しなくていいから」「は、はいっ!」
……今更だけれどブランカ『ちゃん』呼びで良いらしい。
僕よりひとつ年上とはいえ、なんとなく親しみを感じちゃうんだよなぁ。
ゴシゴシゴシ!!
「うわっ、それは強すぎる!」
「ブランカ?」「はわっ、ごめんなさい」
「まったく……ティムモンスターじゃなのよ?」
そういえばドラゴンの飼育係をやってるのか、それで朝の散歩を。
「その、毎朝ごめんねブランカちゃん、ドラゴンを」
「わっ、私もダークネスドラゴンと一緒に王都へ連れて行っては」
「いや、いくらティムモンスター可能でも、あれは連れていけないかな」「そうですか……」
あきらかにションボリした声だ。
「ブランカ、ちゃんと条件は忘れていませんよね?」
「はい、お母様」「えっ、条件って?!」
「きちんとダルマシオ様に『連れて行きたい』と思わせる事、そして……」
ちらっと見ると顔を紅くしているブランカちゃん。
「あ、あのその、よ、よよよよよ」
「夜伽をちゃんとすること、そうよね?」
「はいっ、私、そのっ、がっ、頑張りますうううぅぅぅ」
いやいやそんなの、
無理矢理やらせるみたいになるのは嫌だ!
「クライスさんはその、いいんですか」
「はい、娘にそれくらいの覚悟があるなら、もちろん身体が順応すればですが」
「いやそっちじゃなく」「???」「いえ、いっ、いいです……」「では失礼して」
ざばぁーーーっとお湯を被せられる、
うん、心地よい……後は顔を拭いて貰って、っと。
「それではダルマシオ様、後は何かございますか?」
「ええっとぉ……な、ないです」
「そうですか、娘のブランカにもですか」「はいっ」
もっと無いです、と言い掛けて、やめた。
「それでは」「失礼致します」
出て行ったふたり……
残ってくれって言ったら何をしてくれたんだろうか、
いや向こうも何をすればいいのか聞いてきそうだな。
(ふう、相変わらず熱いお湯だ……)
明日からは調整でもうちょっと温くしようかな、
外で、脱衣所で待ってるはずだから、のぼせたら気付いてくれるだろうか、
それよりお風呂上がりに飲む、キンキンに冷えたミルクが最高なんだよなぁ。
(今日も用意されていると良いけど!)
……お湯に浸かりながら考える。
凄いよなウチのメイドメンバーって、
と思いたいけど学院で会うトップ所はもっと凄いだろう。
(直系の長男とか、メイド百人居てもおかしくない)
特に王子とか教会の跡継ぎとか。
教会の場合はメイド名義でもシスターだったりするんだよな、
それを言えば王子付きメイドなんて、はっきり言えば完全な護衛か。
(メイドバトル、かぁ)
ユピアーナ様は戦う気満々だけど、
僕の実姉みたいに『戦うつもりは無いから安心して』って生徒も居る、
それを馬鹿にする連中も居るだろうが関係ない、こんな辺境貴族に構ってる暇は無いかもだけど。
(それよりも楽しみなのは、ワンディちゃんだ)
季節毎に王都のワンディちゃんに手紙を出してはすぐに返事が来た、
今年も新年の挨拶を出したらすぐ戻ってきて『再会を楽しみにしている』って……
我慢できず姉上の卒業直前に出した手紙は返事がまだ来てない、そろそろ届くはず。
(まあ、もうすぐ会えるからね、びっくりするかな僕のメイド軍団を見て)
ワンディちゃんも一応の戦闘メイドだけど基本は僧侶だ、
回復魔法役で戦うのはペアとか集団戦の時だけのはずだから、
二人しかメイドを連れて行かなかった姉上が戦わせる理由は多分ない。
(どんなに悪く言われても、のらりくらり躱す姉上だ、挑発されてとかは無いはず)
そのあたり、ウチのメイドは……
アンヌさんアンナさんは問題なさそうだけれど、
一度、僕の目で確かめないとね、あとサエラスさんの実力の位置も見ないと。
(そうだ、このあと今夜は、サエラスさんと……)
さて、頭の先まで熱くなりそうなのでもう出よう、
お風呂場から脱衣所へ出ると待ち構えていたふたりがバスタオルでスタンバイしていた。
「では失礼して」
「しっ、しっつれい、しまっす」
ブランカちゃん、ちょっと手が震えているな……
かといって奪って自分でっていうのも少し失礼な気がする、
とりあえず身を任せて……うん、もういいや、腰にタオルを巻こう。
「さて、ミルクを……」「はいどうぞ」
一気に飲み干して……!!
「ぷはぁ、ありがとう」
「サエラスさんがベッドでお待ちですよ」
「う、うん、じゃあ、行ってきます」「あ、あのっ」
どうしたんだろうブランカちゃん。
「何かな?」
「その、できればっ、夜伽の、け、けけけんが、く、を」
「えええぇぇ……」「だっ、駄目ですよねっ、失礼致しましたっ!!」
……僕が『良いよ!』って言ったら、
本当に見学するつもりだったのかな……うん、
それはさぞかし、気が散りそうだ。
(さあ、いざ寝室へ……行かねばっ!!)
脱衣所から廊下へ出ると、
なぜかアンヌさんが待っていた。
「御主人様、相談が」
「はい何でしょう」
「真面目な話なのだが……」
おっ何だろう、
冒険者関係かな、
それとも学院へ行く打ち合わせか。
「長い話なら、どこか暖かい所へ」
「いやすぐ済む、御主人様に選んでいただきたいのだが」
「何をでしょうか」「明日の風呂、アンヌとアンナ、どちらが良いか」
(そんなのどっちでも、良いいいいいい!!!)
でも真面目に聞いているなら、
真面目に答えないとね、うんっ!
「ちなみに二人一組ですよね、もう一人は」
「それは明日のお楽しみ、ということにさせていただこう」
「あっそうですか、じゃあアンヌさんでいいや」「かしこまった」
ここで『アンヌさんアンナさん両方で』とか言ったらどうなるんだろう?
いちいち出たり入ったりされるのは、やかましくて嫌だぞっていう。
(ていうかもう、誰だっていいや)
いっそ僕一人だけでも構わないし、
でもそれはさすがに『メイド』が許さないか、
興味あるのはここにワンディちゃんが混じったら……!!
「いけない、いけない」
ワンディちゃんは僕の中で大切な存在だ、
うかつに変な事を考えるのはやめようね!
(何せ今から、これから僕はサエラスさんと……!!)
胸のどきどきを抑え込みながら、
僕は今度こそ、寝室へと向かうのであった。
(転移魔方陣での移動すら、どきどきするよ……)
上の階へ行くだけなのにぃ!!
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