第32話 準備万端!
「それではサエラス様がリーダーとなるパーティー名は、
『ダルちゃんのメイドお姉ちゃんズ』でよろしいですね?」
「はい、それで登録をお願い致します」
結局、僕の名前を頭に付ける事で被りは解消された。
「冒険者パーティーは結成されるとF級冒険者からの開始となります、
依頼達成やアイテム、魔物の素材をギルドへ持ってきていただければ、
基準に応じてランクが上がって行きます、早速の依頼を受けていただけますか?」
アンヌさんと顔を見合わせるサエラスさん。
「とりあえずは登録だけですので、あと魔物の従魔登録をしたいのですが、
あの、『例の村』の方で済ませてもよろしいでしょうか」
「……はい、魔物の種類によりますが、こちらへ連れて来られないようなのでしたら」
おっ、多分ダークネスドラゴンのことだろう、
ちゃんと登録しておくに越した事はないからね。
「ついでにパーティーのオーナー登録もお願いしますわ」
「わかりました、オーナーと言うのは当然」「はい、当然」
みんなして僕を見る、
あっ、ナンスィーさんが居ないや、
と思ったらソファーでとろけてるや。
(僕がオーナーか、まあいいや」
パーティー名がこれだからね。
「ええっと、僕の身分証名証でいいのかな」
「はい、お預かりしますね……これでオーナー登録完了です」
「何かメリットでも」「オーナーの許可なしに引き抜きは出来なくなります」
これメイドバトルで負けて取られたらどうなるんだろう、
おそらくその時はバトルに参加した時点で許可出した事になるんだろうな。
「では冒険者パーティーとしての活躍も、期待しております」
「だそうですよ、ダルマシオ坊ちゃま」
「う、うん、僕は直接は関係ないけれどもね」
別に僕が冒険者としてどうこう活躍するつもりは無い、
それは魔法を使えるようになったとしてもだ、
なにせ領主としての仕事が将来、控えているからね。
(冒険者ライフより、のんびり領主ライフの方が僕には合っている)
そういうのはメイド達に、一手に任せよう。
「坊ちゃま、一応の確認を」
「あっはい、何か紙を貰いましたね」
どうやらオーナー証明書らしい。
パーティー名:ダルちゃんのメイドお姉ちゃんズ
オーナー:ダルマシオ=ダクリュセック
リーダー:サエラス(魔法剣士)
サブリーダー:アンヌ(拳闘士)
メンバー:サンドリーヌ(戦士)、タマラ(アサシン)、ナンスィー(魔法使い)
仮メンバー:カタリヌ(僧侶)、アンナ(賢者)
覗きこんできたアンヌさんに僕は話し掛ける。
「バランスが良いですね」
「もうひとり入れるなら前衛だな、剣士といった所か」
「一応の僕の婚約者メイド、ワンディちゃんは僧侶なんですが」
でもまあ八人も居れば、被りはしょうがないか。
「私が三人目を作る方法もあるぞ」
「アンヌさんとアンナさんで、お腹もういっぱいです」
これ以上に人格を増やされると、僕がしんどい。
「よし、では回収して戻るぞ」
「えっ回収って、ああ、ああ!!」
ナンスィーさんがソファーでだら~んとしている、
今にも落ちそう、いやヨダレはもう床に落ちているや。
(アンヌさんがよいしょ、と肩に担いじゃった)
「それでは、失礼しまーす」
「はい、次期領主様!!」
受付嬢のアガットさんに別れを告げて、
また馬車に乗って僕の屋敷へ、と思ったら……!!
「あわわわわ、しょ~ぎょ~ぎるどへいってきまぁ~~」
アンヌさんの方から猫型モンスターのように逃げたナンスィーさん、
そのまま商業ギルドの方へ、うん、彼女の本来の仕事があるのだろう。
馬車は走り出し、アンヌさんが僕に話しかける。
「今後、休みの者以外を誘ってダンジョンでメンバーを鍛えさせて貰う、
学院とやらへの出発までには冒険者パーティーとして形になっているだろう」
「任せても良いのですか?」「もちろんだ、その間に御主人様は勉強を頼む」
いや、頼むと言われても頼まれなくてもやりますよそれは、ええ。
「私の、坊ちゃまを鍛える剣術の時間も確保させて貰うわ」
「それはもちろん、クラス分けテストの実技はメイドと一緒らしいですし」
このあたり毎年、多少は変わるらしいが、
基本的にはメイドも参加できるので生徒によっては本当に何もしなくて良かったりする、
それでも力にはなりたいし、授業でさせられる可能性も十分あるので、僕も鍛錬はしないといけない。
「アンナが魔法を教える時間も必要だぞ」
「はい、アンナさんには何から何まで全てを教えていただきたいです!」
「そうかそうか、場合によってはベッドの中でも教えるように伝えておこう」
(いや、何をーーー?!)
あと、アンヌさんがアンナさんに伝えるって、もう伝わってるじゃん!!
「とにかく、準備万端! と言えるくらいには出発までに整えましょう」
「はい坊ちゃま」「お姉さんにお任せあれ!」「頑張ります!」
サエラスさんドリーちゃんタマラさんが続けて応えてくれた、そして……
「楽しみで仕方が無い、このアンヌが御主人様に来る難関を、全てこの拳で破壊してみせよう」
それは良いんだけど、
テスト用紙に穴を空けたりはしなでねっと。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
僕の屋敷に到着、いや街の家の方ね、
闇の村の方が『村の屋敷』こっちが『街の屋敷』でいいか、
とにかく街の屋敷に戻ると、しばらく留守にしていたせいか来客が。
「ダル! メイド増やしたんだって?」
「噂を聞いて見に来たよ!」「どんなお姉さんだ?!」
「あっ、カイル、ディラン、ロジャー、上がって上がって」
ここダクスヌールの街での友人、
学園でもクラスメイドだった三人だ、
居間に招き入れるとまずサエラスさんが紅茶を出す。
「サエラスさんは知ってるよね?」
「うん、たまに居る若いメイドだよな」
「若い……?!」「ディラン、そこは若いで合ってるよ、なあダル」
大きく頷いておこう。
「ええっとじゃあまず最初、アンヌさん、入ってきて」
身長の高いアンヌさんを見上げる三人。
「うっわ、綺麗」
「あれだ、王都の劇場で見た男役の女優さんみたいだ」
「まーたディランの王都自慢かよ! でも本当に美人、なあダル」
ロジャーに振られるまでもなく、
美人でかっこよくて綺麗で強そうだ。
「彼女は自慢のバトルメイドになる予定なんだ」
「アンヌです、ご主人様の御学友ですか」
「ほら貴族の坊ちゃんって取り巻きいるだろ」「それです」「最も友人だけどな、なあダル」
まあ、言う程には取り巻きっぽくないけど!
単に仲の良い四人が集まって、そのうちひとりが貴族ってだけだ。
「では私は仕事中ですので」
「あっお姉さん!」「はい」「おいくつ?」
あえて聞くんだカイル。
「26です、独身ですよ」
「ひゅ~♪」「なるほど」「11も上か~、ダルはいけるか?!」
どこへだ、どこへ。
「メイドさんだからね、アンヌ、下がって」「はい旦那様」
「えー、もう?」「仕事中ごめんなさい」「で、まだまだ居るんだよなダル?」
「じゃあ次はサンドリーヌさん、ドリーちゃん入ってきて」
入って来た低身長にみんな驚く。
「子供じゃないか!」「いや待って、よく見ると」「ダル、これこそ何歳なんだよ」
「みんな初めまして、サンドリーヌお姉さんよ、22歳のセクシーお姉さん、お姉さんって呼んでね!」
「……身分証名証は?」「同い年にすら見えないよ」「でもダルがいま『ドリーちゃん』って」
あっ、わざわざメイドカードを三人に見せている!
そんなことしてもお姉さん扱いはして貰えないと思うぞ。
「ドリーちゃんは何メイドになるの」
「料理! それとお掃除洗濯お風呂あとはセクシー担当ね!」
あっ、友人三人の目が可哀想なものを見る目に!
「ひょっとして熱にうなされてこうなったとか?」
「おかしいな、幼く見える可愛い系を『セクシー』と呼ぶんだっけ」
「なあダル、ひょっとして彼女と僕らでは、見えている物が違うのか?!」
凄い言い様だな、まあわかるけど。
「自称セクシー病以外は良いメイドさんですよ」
「ダルちゃんと一緒に王都へ行っちゃうけど、それまではよろしくね」
「うんわかったドリーちゃん」「ドリーちゃんよろしく」「ドリーかわいいよドリー」「んもう!!」
誰一人お姉さんと呼ばないのはさすが僕の友人だ。
「じゃ、次のメイドだけど、その、びっくりしないでね」
「今ので十分びっくりだけど」「何が飛び出すんだ?」「ダル、もったいぶるなよ」
「それじゃあ、タマラさん、入ってきて!!」
その言葉にやってきたタマラさん、
僕の友人三人は、その目線を全員が一か所に集めていた。
うん、でかい、説明不要だ。
(そうなるよねえええええ!!!!!)
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