第24話 夜伽って結局なんなんですかー!
夜の大きな寝室、
魔神サイズなので仕方ないのだが、
そこへアンヌさんの姿となったメイド、ユピアーナ様と乗っかる。
「うん、すんごいクッションですね、弾む弾む」
「どれだけ肉弾戦をしても大丈夫そうだな」
「アンヌさん、言い方、その言い方!」「おかしいか?」
まるでこれからそんなことを……するのかな。 かなっ?!
後頭部の、ピンクのリボンに手をかけるユピアーナ様。
「髪はどうする、縛ったままで良いか」
「ええっと、そ、そうですね、とりあえずは」
薄い紫のポニーテールを揺らしている、
彼女の場合は本当に髪を自力で動かせられるからね、
色々と便利そう、そんなことよりもだ、とにかくこれから……
「ええっと、情報を整理しましょう、『夜伽』と聞いて、イメージは」
「添い寝だ」「ですよねー」「今日、改めてそう勉強したぞ」
「あっはい聞いていました、ナイトメイドの仕事」私は何でもやるメイドになりたい」
とはいえアンヌさんとアンナさんで使い分けるんじゃ、
あっそうか、だから何でもやるのか、武闘派なアンヌさんと魔法系のアンナさん。
「ようはその、添い寝の内容なんですよね」
「ふむ、御主人様は、添い寝された経験は」
「ほんっとうに幼い頃、姉上や一応の婚約者メイドに」
こっちに来てからはほとんどないな、
逆に枕元にお婆ちゃんメイドが座っていたら、怖い。
体調崩して治癒魔法があまり効かなかった時は、居てくれて心強かったけれども……
(ここは踏み込んだ情報を、仕入れよう)
ちょっと待ってて下さいね
ベッドを降りて廊下に出る、
ええっと……あれ、誰も居ないな、
さっき約一名、メイド姿の物体を転がしたはず……あっ、居た、トイレから出て来た!
「ナンスィーさん、ナンスィーさん」
「は~~ひぃ~~~、おやすみなさぁ~~」
「ええっと、ちょっとこっちへ」「なんでしょぉ~~」
色々とダルダルだ、
メイド服も脱げかかっているし。
(とりあえず部屋へ入れて、っと)
「ええっとナンスィーさん、二十六歳でしたっけ~」
「そ~~なりますねぇ~~」
「じゃあ大丈夫かな、『夜伽』って、なんですか?!」
メイド講習会に居なかったからね、
ナンスィーさん独自の考え、知識が聞けるはずっ!
と思ったら眼鏡を装着し、キリッとした表情になった!!
「それは、どの意味のでしょうかっ!」
「はい、それを全て、言ってしまって下さい」
「まず幼い子供に対しては寝かしつけ作業ですね、絵本や子守唄で……」
うん、講習会で聞いた内容だ。
すると今度はアンヌさんが聞く。
「では普通の子供に対しては」
「眠くなるまでの話相手、甘えたがるようであれば一緒にベッドへ」
「ベッドで何をするんだ」「横になるだけで落ち着いて眠る子が多いようですね!」
……僕は寂しいのには慣れっこだからなぁ、両親があんなだったから。
こっちへ(ダクスヌールの街ね)来たばかりの頃は確かに姉上や婚約者メイドが少し恋しかったけれども、
僕にしかできない使命、そして将来の僕の領地だって思うと我慢ができた。
「それでは成人に近い男性、もしくは領主への『夜伽』はどうだ」
「くふふ、それはそれはもう、領主様の希望されるがままに」
「つまりそれはどういうことだ」「領主様、御主人様がして欲しい事をするのです!!」
僕を見るナンスィーさんとアンヌさん!
「ええっとつまり、『夜伽』って何をするのっていう問いの答えは、
成人の場合、される主人が何をして欲しいかで決まる、主人が決められる、と」
「そういうことですね、はっ、ピンクのリボンはベッドで何されても良い証です!!」
あっ、アンヌさんが顔を紅(あか)らめた!!
「じゃあ僕って、アンヌさんにそういう事を、しないといけないと」
「してもしなくても良いですよ、お好きな『夜伽』を選んで下さい!」
「いやその」「そんな訳で私はユピアーナ様と詰めた魔法研究があるので、お二人で朝まで、ごゆっくりー!!」
そう言って出て行ったナンスィーさん、
メイドが主人の許可なく勝手に出て行っちゃったけどいいのか?
まあ、気を利かせてふたりっきりにしてくれたんだろうけれども。
「……だそうだ、御主人様」
「あっはい、そうですね、僕が何をして欲しいか、らしいです」
「それに応えるのがメイドの仕事らしい、今夜の私はナイトメイドだ、心配するな」
ベッドの上に戻り、きゅっ、と抱きしめてくれるアンヌさん……
うん、心地よい、僕よりかなり身体が大きいからね、ユピアーナ様の姿の時ほどではないものの。
「その、落ち着きます」
「そうか、ではしばらくこのままにしておくか」
「い、いえ、とりあえず、横になりましょう」
うん、さすがに心臓がどきどきしてきた。
(この時点でもう、添い寝の域は超えている気がする)
見つめ合う僕とアンヌさん……
「その、アンヌさんは良いんですか」
「何がだ、確かに経験は無いが、尽くすと決めた御主人様が相手だ、むしろ嬉しい」
「はい、そう言っていただけると、その、本当に、嫌じゃないなら」「嫌なものか」
そう言って、おでこにキスしてくれる。
「はっ、恥ずかしい……」
「なんだ、生娘(きむすめ)じゃあるまいし」
「その、正直、なんと言って良いか、どうしたらいいのか」
うん、結局のところ、僕の疑問に思っていた『夜伽』って、
何をどうするのか僕が決めて良いらしい、でも、だからって……
(決められないよう!!)
「……ひょっとして、アンヌではなくアンナの姿になった方が、良いのか?」
「い、いえそこは、特に……だからといってユピアーナ様の姿は、大きすぎますが」
「そうか……何にせよ、どうするにせよ、メイド服のままでは動きにくいな、よし……」
ベッドで横になったまま脱ぎ始めたアンヌさん、
下に着ていたのは、あの宝箱にあった高級な下着類だ、
み、見ちゃいけない! ていうか部屋が明るすぎるんだよなぁ……
(少し暗くするか)
ベッドから降りようとすると腕を掴まれた!
「逃げないで欲しい、私が泣く」
「あっ、いえ、明るすぎて落ち着かないなって」
「なんだそんなことか、これで良いか」
天井の証明に手をかざすアンヌさん、
すると一気に暗くなって落ち着いた薄明りになる。
「あっ、魔法ですか、しかも無詠唱の」
「御主人様はメイドを使え、なぜなら御主人様なのだから」
「そ、そうですね、脱いでいる最中を邪魔しちゃいけないと思って……」
薄明かりの中、
メイド服を抜いたアンヌさん、
うん、明るくないのが逆にセクシーさを演出している。
「さあどうする、このまま本当に、ただ一緒に眠るだけでも構わないが」
「そ、それも『夜伽』なんですよね」
「もちろん、一緒に眠るだけで無いのも『夜伽』だが、ご主人様の選択はどうする」
……なんだろう、
僕は今、とても大きな選択を迫られている気がする。
(ここで『健全な男性』が妄想するようなことをしたら、僕は、僕は……!!)
ここで頭をよぎったのが一応の婚約者メイド、
彼女は僕がどうしても相手が見つからない時の最低保証の相手だ、
だからそこまで義理を立てる必要は無い、相手がメイドなら尚更、だけれども……
(アンヌさんは、ただのメイドじゃないからなぁ)
魔神ユピアーナ様のワガママに仕方なく、という言い訳は利く、
あの婚約者メイドのことだ、笑顔で許してくれるだろう、だけど……
(それに心が、痛むかどうか)
それは僕はもちろん、あのメイドも胸の内では……
「御主人様、どうした、もっとアピールした方が良いか?」
「い、いえ、まだちょっと、心の準備中です」
「そうか、いっそ他のメイドも呼ぶか」「やめて下さい」
……僕はこれからの学院生活三年間について考える、
これからする事、メイドを連れて行ってやる事、そして、楽しむ事……
それら全てを考え、僕の出した結論は……決まった。
「……アンヌさん」
「どうした、御主人様」
「初めてですが、上手くできるかどうかわかりませんが」「私もだ」
僕の決意を読み取ってか、
唇を重ねてきたアンヌさん、
後はもう、実を委ねるしか、ない……。
(うん、結婚相手を見つけるには、必要な事でもあるよね)
頭の中で高速で言い訳を溢れさせながら、
僕は本や聞いた知識でしか無い事を駆使しつつも、
アンナさんと今後忘れらぬであろう夜を溶け合ったのだった……。
「その、御主人様」「はい」
「……ひとこと、言ってくれないか」
「あっ! わかりました……愛しています、アンヌさん」「ありがとう……ダルマシオ」
その瞬間、一瞬だけ、メイド婚約者の笑顔が浮かんだ。
(ごめんね、学院へ行く途中、必ず迎えに行くからね……ワンディちゃん)
こうして僕は、
メイドから初めて受ける『夜伽』を、堪能したのだった……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。