祠壊師は呪われたい ☆異世界に飛ばされたら、人喰い王子と出会いました★

おしゃかしゃまま

第1話 『祠壊師』シュク

 呪われたい。


 背筋が凍るような恐怖を、脳が焼けるような緊張を味わいたい。


 そのような感性を17歳の少女、斎翁 祝(さいおう しゅく)は持っていた。


 ゆえに、彼女はある仕事を己の天職とした。


『祠壊師』


 全国にある『あ、この祠を壊したら呪われそうだな』という祠を壊す仕事だ。


「はーい。今日も元気にー『あの祠壊したんか』というわけで、因習村の皆ーおはよー」


 高性能のドローンから映像を撮っているシュクの挨拶に、シュクのファンたち、通称『因習村』の面々が反応する。


コメント


狐っ子:もうダメじゃ


雪姫:もうダメじゃ


背後ちゃん:もうダメじゃん


便所神:もうダメかん


有精髭:もうダメだ。君、多分死ぬ


あたろう:それが死なないんだよなぁ


狐っ子:シュクちゃんの生命力はガチだから・・・・・・




 いつも通りのコメントを読みながら、シュクは満足そうに笑みを浮かべる。


「うんうん。皆、元気だね。さて、今日は以前にも話したと思うけど、近⚫︎地方のどこかに来ています」




コメント


あたろう:知っている


トマトとフォーク:水が溜まっている場所だよね


狐っ子:なんとなく、大丈夫なのかと思うのじゃが


有精髭:どこか、だから大丈夫じゃない?


トラガラス:カキ食べたい


まっしろすけ:かわいいですね


背後ちゃん:ギリギリセーフな名前


筋肉無敵:合体しないか?


背後ちゃん:こ と わ る !



「なんで皆がここまで心配しているのかわからないけど、とりあえず、今日はここ、近⚫︎地方のどこかで『祠』を壊していきますよぅ!」




コメント


撮美庵:いろんな意味で畏れ知らずだな


お皿屋さん:シュクちゃんマジ怖い


お岩屋さん:岩ありますか?


あたろう:あると思うけど、シュクちゃんの目的は祠だから


まっしろすけ:こわさないでください


「だが、壊す。というわけで、これが今回壊す祠でーす。うん、なんかヤバそう。ピリピリ来るね」




 シュクは、目の前にある祠をドローンのカメラで映す。


 一見、ただのボロボロの祠にしか見えないが、不思議なのはその周囲だろう。


「見てよ、この祠の周り。他の場所は雑草が生い茂っているのに、ここだけ何も生えていない。草どころか、苔さえも。地面がドロドロにぬかるむ程に水は豊富なのにねぇ」



コメント


狐っ子:吸われておるのう、どう見ても


バー湯:祠も傷んでいるのに苔もカビも生えていないのかぁ


みてみた:除草剤とか塩を撒かれているだけじゃないの?


まっしろすけ:はずかしいです


走り惰走:やらせ乙


あたろう:初見か? シュクちゃんがヤバいって祠はマジでガチ




「うん、これはマジでヤバそう・・・・・・はぁーワクワクするねぇ」





コメント


筋肉無敵:エロい顔するなって


あたろう:シュクちゃん定期


まっしろすけ:およめさんになってください


みてみた:可愛い子がグロくてエ⚪︎い事になるって聞いてきたけどこれは・・・・・・


狐っ子:エ⚪︎いというよりエライ事じゃけどな


有精髭:グロいのは否定しないよねぇ


走り惰性:なんなのこの変態 キモいwww




「・・・・・・はっ!? またヨダレが。さて、じゃあ早速壊していきますか。へへへ、さて、今回はどんな呪いがあるかなぁ」


 シュクはカバンから大きなハンマーを取り出した。


 そのハンマーをブンブンと振り回す。



コメント


走り惰性:てか、普通に犯罪じゃない? 私有地の物壊すとか


あたろう:シュクちゃんはちゃんと上の許可をとっているよ。


有精髭:じゃないと、こんな祠は壊せないしねぇ。配信もできないよ。


まっしろすけ:およめさんになったらゆるしてあげます





「よいしょ!!」


 シュクがハンマーを振り下ろすと、祠が粉々に破壊された。


「・・・・・・うわぁ、みんな、どう思う?」



コメント


狐っこ:控えめに言って地獄


背後:なんか黒くて白い人の手が蠢いているんだけど


トラガラス:どうしてこうなった?定期


まっしろすけ:なにこれ?


虜巻:あーあー・・・・・・


有精髭:もうダメだ。君はもう死ぬ。というか、人類は滅ぶ。


トラガラス:諦めないでっ!




 シュクの眼前では、粉々に壊れた『祠』の残骸と、その『祠』を中心に、まさしく『呪詛』という言葉がふさわしい闇が広がろうとしていた。


「そうそう、諦めないで。というか、皆は知っていると思うけど、基本的にこういった呪いは、祠を壊した人に影響があるから、私が呪われるだけだよ」



コメント


狐っ子:世界が壊れそうな呪いじゃけどな


あたろう:シュクちゃんが死んだら、世界が滅ぶかぁ


背後ちゃん:さて、今回はどんなことが起こるかな?


走り惰走:何コレ?


みてみた:は? なんでこんなことになっているの?


有精髭:本当の素人さんがいるねぇ


筋肉無敵:シュクちゃん頑張って!




「ま、『祠壊師』に任せないっと。おや、早速来たね」


シュクの体に、闇から這い出たような黒と白の手が絡みついていく。



コメント


ドラゴンの球は7つ:あらH♡


有精髭:ここまで肉体に影響を与える呪いも珍しいね


あたろう:ほら、エ⚪︎いよ。シュクちゃんのおっぱい掴まれているよ?


みてみた:何これ? マジで? ただのHな配信じゃないの?


走り惰性:いや、これAIとか加工でしょ


まっしろすけ:あ ああ


筋肉無敵:というか、本当にヤバくない?




「んっ! くぅ・・・・・・あ、本当だ。ヤバいかも」


 シュクは、自分の体を見てみる。


 空から見下ろすように、俯瞰して。


 自分の頭が力無く下がっている様子が、はっきりとわかった。


『・・・・・・魂、とられた? あ、ちょっと!』


 そのまま、『祠壊師』シュクの魂は闇に引きづられ、飲み込まれた。







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