第34話 決勝戦!

 試合開始の宣言とともに両者互いに前衛に設置していたカードを表にする。相手のスタートは『沼地の死者』カードの効果は倒された時に相手の手札を一枚山札に戻す効果を持つキャラクターだ。対してこちらの前衛は『赤の騎士』これまでの試合で何度も序盤に相手のキャラクターを倒してきた舞花のデッキの理想的初手キャラクターだ。


「私の先攻、ドロー。 コモンカード『オータムゲイン』を使います。 効果によって自分の山上から五枚カードを見て、その中にある秋属性のカード一枚を手札に加える」


 この決勝に来るまでにすでに相手のデッキ情報は自然と耳に入っていた。夢咲有栖が使っているデッキは二週間前に青野京子が使用していた秋属性のカードを中心に相手のリソースを破壊していくミドルレンジタイプのデッキだった。


「私は『死の門番』を選ぶ。 そのまま後衛に出してこれで番終了よ」

「私のターン、ドロー!」


 相手のフィールドにはキャラクターカードが二枚。流石にこの前の俺のように一ターンで決着というわけにはいかないようだ。


「後衛に『火の精霊』を出してTRカード『スロー&ドロー』を発動。 効果によって私は手札のカードをすべて捨てて山上から五枚ドローする」


 舞花は一ターンに一度しか使えないTRカードを使い、手札を新しくする。先程の手札では次の番に有効なカードを持っていなかった。俺でも今の選択をしただろう。


「……このまま『赤の騎士』で『沼地の死者』に攻撃、ライフを削る!」

「『沼地の死者』の効果で手札を一枚捨ててもらうわ」

「……手札から『赤の騎士』を捨てるわ」

「私の番ね、ドロー!」


 最初のターンからライフ削りに成功したのは速攻型の舞花のデッキにとっては大きい。けれども相手のキャラクター効果によって手札は一枚減ってしまった。シーズンカードでは中盤以降でも低コストキャラクターをアペンドとしてカードに付与し、強力な能力を使えるようになるのでリソースが削られるのはあまりよくはなかった。一ターン目だけ見ると互いにデッキのコンセプトに沿って試合が進んでいた。


「私はTRカード『ティーブレイク』を発動。 前の番に私のキャラクターが倒されていたなら山上から三枚カードを引き、相手はランダムに手札を一枚捨てる」

「……く」


 舞花の手札から『スロー&ドロー』のカードが捨てられる。これは今の彼女の手札の中では一番選ばれたくないカードだったので舞花は焦り、有栖は一瞬不敵に笑った。


「『嵐の開拓者』を後衛に出して前衛と入れ替える。 そしてアペンドターンに移るわ。 手札のキャラクター一枚を『嵐の開拓者』にアペンドして効果発動。 カードを一枚ドローする」


 これで有栖の手札は十一枚、対する舞花は三枚と三倍以上の差がついていた。


「このまま『嵐の開拓者』で『赤の騎士』を攻撃、ライフを削って終了よ」

「私のターン、ドロー! 前衛に出した『炎の妖精』の効果発動。 山上からカードを三枚見て夏属性のカードがあれば一枚手札に加える……私は『烈火の獅子』を選ぶわ」

(よし……!)


 烈火の獅子は手札補充効果を持つカード。このタイミングで引き当てるのはついている。


「『烈火の獅子』を後衛に出して前衛の『炎の妖精』と交代。 後衛にもう一匹の『炎の妖精』を出してアペンドターンに移るわ。 手札のキャラクターカードを『烈火の獅子』に一枚つけてこのまま攻撃よ!」


 烈火の獅子の攻撃力は相手の嵐の開拓者の攻撃力を上回っている。よって相手の嵐の開拓者は倒されてライフを一削る……そして更に


「『烈火の獅子』の効果発動! このカードがアペンドされた状態で相手のキャラクターを倒した時、相手の残りライフの枚数分カードをドローする!」


 有栖の残りライフは三、舞花は山上から三枚ドローをして番を終了した。


「……やるわね」

「さぁ、あなたの番よ」

「私の番、ドロー!」


 有栖は勢いよく山上から一枚カードを引く。その動作に合わせてまるでスポーツ競技をしているかの如く彼女の長い髪が美しく揺れた。


「前衛にいる『死の門番』の効果を使う。 このカードをトラッシュする事で手札から前衛にこのターンよりもコストが一多いカードを出すわ!」

「…………!」

「私は手札からコスト四の『災厄の魔人』を選ぶ。 そして後衛にコスト三の『天狐』を出すわ」


 災厄の魔人は付与したアペンドカードの枚数以下のコストを持つキャラをトラッシュに送る効果を持ち、もう一枚の天狐はカードの効果によって相手のキャラをトラッシュした時、カードを三枚引く効果がある。二枚を同時に並べることによって強力なコンボになる組み合わせだった。


「そしてTRカード『ティーブレイク』を発動。 私は三枚ドロー、あなたは一枚捨ててもらうわよ」

「くぅ……」


 せっかく補充した手札もすぐに減らされてしまう。有栖は着実に勝利に向けて盤面を整えようとしていた。


「アペンドターンよ、手札のキャラクターカード三枚を『災厄の魔人』に付与してこのまま攻撃! 『烈火の獅子』を倒すわ」


 攻撃によって舞花のライフは削られる。しかし、それだけでは終わらない。


「災厄の魔人のアペンド効果発動! 付与したキャラクターカード枚数以下のコストキャラをトラッシュに送る。 あなたの後衛にいる『炎の妖精』を一枚選ぶわ。 そして天狐の効果が発動! 山上から三枚カードを引いて番終了よ」


 舞花のフィールドには炎の妖精が一匹のみ。前の番にこのカードを出していなければキャラクターが0枚で敗北していたが、そうならないように対応していた。相手のデッキ的に一度に二枚のキャラクターカードが除去されるのをしっかりと対策していたのは褒めるべき点である。


「私のターン、ドロー!」


 手札とフィールドの状況だけでは舞花が圧倒的不利に見える。けれどもシーズンカードでは一枚のカードからでも十分活路を見いだせる、その証拠に……


「私は後衛に『火炎蛇』と『夏の乙女』を出してTRカード『ファイブドロー』を使うわ! 効果によって手札が五枚になるようにドローする!」


 舞花は即座にフィールドにキャラクターを展開し、手札を補充した。


「『炎の妖精』の効果で山上三枚を確認……『赤の騎士』を手札に加える」


 手順を一つでも間違えればドローできるカードの枚数は減ってしまい、戦略の幅は狭まってしまう。舞花はここまでしっかりと最大値になるようなプレイを継続していた。


「アペンドターンに入るわ! 後衛の『火炎蛇』に二枚のキャラクターカードを付与してアペンド効果発動! このカードに二枚アペンドされた時、相手は前衛と後衛を入れ替える」

「……『天狐』を前衛に出すわ」

「私は前衛の『炎の妖精』を後衛に下げて後衛から『火炎蛇』を出す。 このまま攻撃で『天狐』を倒すわ!」

(うまい!)


 前衛にいた災厄の魔人はコスト四の強力なキャラクター。このターンで舞花は倒すのは厳しいと判断した舞花は火炎蛇の効果を使うことによって倒せる天狐を前衛に引きずり出し、ライフを削った。


「私のターン、ドロー!」


 舞花の残りライフは三、対する有栖のライフは二。ここまではお互い順調にライフを削りあっている。勝負は後半へと切り替わろうとしていた。

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