第16話 同じ回答
「二九問までに不正解の子は全員失格よ」
「いくらなんでも厳しすぎないか?」
「この程度の問題で間違える子と一緒に仕事なんて出来ないわ」
「……シーズンカードの問題としてはかなり基本的なものだったわね」
言い換えそうにも奈々子からも言われてしまった長谷川は一瞬言葉に詰まってしまう。
「スポンサーがシーズンカード公式だけとはいえ……それこそ紫音のようなおバカキャラクターで売り出せばいいじゃないか」
「そのキャラ売りをした結果、センターの本人が引退宣言したのを忘れたの?」
「…………そうだな」
その点に関しては京子の言ったとおりだった為、長谷川は何も言い返せなかった。
「二九問全問正解は八十人……ずいぶんと減ったわね」
「どこかのプロデューサーの見る目がなかっただけだ」
「ずいぶんな言われようだな……安心しろ、本命の子は全問正解している」
長谷川はオーディションを受けている子のプロフィールが記載されている名簿と先日の二次試験の解答用紙を京子に手渡した。
「あら、この子の最終問題の回答……京子ちゃんと一緒ね」
奈々子が京子の手にした用紙を眺めながら答えた。
「そうだな……採用理由も私とほとんど同じだ」
「ほらな、俺の見込んだその子ならきっと新しいシズドルの一員として文句ないだろ」
「…………」
「長谷川さん、京子ちゃんが気になっている子のプロフィールも見してもらえる?」
「あぁ……これだな」
「この子が私のおばあちゃんを助けてくれたのね……名前は天音舞花ちゃんね」
「おいおい、私的な理由で優先したりするなよ?」
「奈々子はプロデューサーじゃない」
「俺はお前たちのことを思って選んでいるんだ」
「舞花ちゃんも二次試験は全問正解なのね……最終問題は確か京子ちゃんがすでに聞いてたんだっけ?」
「そうだな、けれども採用理由までは聞いていなかった。 なんて書いたんだ?」
京子は奈々子の持っていた天野舞花の解答用紙を横見する。
「…………」
「時間がなかったのかもね」
「それにしてもその回答はどうなんだ? シーズンカードに二人ほど詳しくもない俺ですら疑問に思ったんだぜ?」
そこには京子の手にしている長谷川が見込んでいる子との理路整然と書かれていた採用理由とは異なり、シンプルな一言が記載されていた。
『信じているから』
「いったい何を信じているのか、その部分を説明してほしいんだがな」
「…………どうしたの京子ちゃん?」
「……同じなんだ」
「あ? 同じって何が……」
「村雨紫音がこのカードを作用した理由と全く同じなんだ」
「……え?」
「そんな偶然ありえるのか?」
「………………」
「天音舞花だったか……? 興味が出てきたな」
今までは彼女に対して見向きもしていなかった長谷川が初めて名前を口にした。
「卒業をする村雨紫音ほどのアイドルになれるのか、それもとそれ以上なのか……はたまた俺が見込んだ子以下なのか……いずれにせよ次の三次試験が楽しみだな」
「次が事実上の最終試験なのよね?」
「そうだ、京子の希望にも沿ってはいるが、次の試験内容はいよいよ実践……シーズンカードゲームによる選抜だ」
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